舞台はある中学校。2年生の佐伯さんは、才色兼備のクラス委員長。しかし、隣の席に座っている時宮君は、佐伯さんの秘密を知っている。佐伯さんは眠るのが大好きで、特に5時間目は居眠りすると決めているのだ。そんな佐伯さんの凛とした惰眠ぶりに魅かれた時宮君、佐伯さんの惰眠を守ろうとやきもきするのだが・・・。この作品はそんな二人の物語。
佐伯さんの惰眠にかける情熱はものすごく、居眠りのあの手、この手を考えてくる。例えば、胸に定規を差し込んで、頭を支えたり、よく眠れるようにアロマを使ったり。そして5時間目に眠るために、自分が当てられたときに困らないように、5時間目だけ予習したり。佐伯さんは5時間目ずっと寝ているわけではない。教師の特性に応じて、居眠りの仕方を変えているのだ。そして自分が当てられたときに分かるようにしている。そもそも、委員長になったのも、居眠りしている間だったので、本人には委員長を引き受けた記憶はないらしい。
私も中高時代はよく居眠りしていた。なぜか当てられても答えられるため、みんな不思議がっていたが、おそらく熟睡していなかったので、少しは教師の言うことが聞こえていたのではないだろうかと思う。別に授業を聞いていたからといって理解力が上がるというようなこともないので、佐伯さんのようにあの手・この手を考えれば良かったと思う。
佐伯さんの家はレストランをやっているが、本人の料理の腕はかなり怪しいようだ。6年前にお母さんが法事で実家に帰ったときのこと、今日は私が晩ごはんを作るとはりきったのはいいのだが、その時のお父さんの感想が「すべてのマズいが融合し私をマズいの森へ誘う」というからすごい。もっとも7歳の時のことだから、あれから料理の腕は上がっているかもしれないのだが。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。