この作品も、銭形平次シリーズのひとつだ。ただし、テレビドラマのように銭は投げない。いや銭を投げるときもあるのだが、圧倒的に投げない作品の方が多いのである。この作品でも銭は投げていない。ドラマでは銭を投げる方に注意が行っているが。むしろ前面に出ているのは平次の推理力。そうこの作品は江戸時代を舞台とした、名探偵の物語なのだ。それに、平次は貧乏なので、銭を投げることに抵抗があるんだろう(笑)
さて、事件の方だが、本所御船蔵前で老舗の煙草問屋を営んでいる常陸屋久左衛門が、自分の部屋で不思議な殺され方をする。この辺りは平次の縄張りではないが、石原の利助親分の娘であるお品に要請されて乗り出したという訳だ。平次と利助の間にはいろいろあったようだが、結構お品に頼まれて乗り出すことも多い。平次は女性に甘いのか? ちなみに、常陸屋はその名の通り、水戸藩御用達の煙草問屋である。
夜は、常陸屋では厳重な戸締りをしているので、怪しいのは内部の人間である。お登世というのは、二十歳前後の常陸屋の可愛らしい一人娘だ。果たしてそのお登世の恋人が、同事件に絡んでくるのか。その人物とはいったい誰か。そして、事件の真相はいかに。
平次は、これらの謎を見事に解き明かすのだが、驚くのは八五郎の強さ。テレビドラマの林家珍平さん(初めの頃は佐々十郎さんがやっていたようだが)のイメージからは、とても強そうには見えないのだが、この作品にこういう記述がある。犯人に攫われたお登世と、それを助けようとしたお登世の恋人が犯人と戦っている場面だ。
幸ひ驅け付けた八五郎が間に合つて、その猛烈な戰鬪力を役立たせ
。
要するにテレビドラマのイメージから、原作を判断してはいけないということだろう。銭をあまり投げないこととか、八五郎は実は強かったといったような、ドラマと原作の違いを楽しむのも面白いと思う。
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