エネルギー施設工学 (土木系 大学講義シリーズ―20) | |
クリエーター情報なし | |
コロナ社 |
・狩野鍄一、石井清
本書のタイトルは、「エネルギー施設工学」であるが、著者が二人とも東電の関係者ということもあり、内容は電力施設に関するものとなっている。しかしどちらも土木技術者であり、シリーズ名も「土木系 大学講義シリーズ」となっているように、電気工学の視点からではなく、土木的な視点から電力設備について解説したものだ。
電気工学というと、初心者には難しい数式が並びがちなものだが、本書は電力に関連した土木設備に関する概説であるため、数式を辿るのは苦手だという人でもそれほど苦労無く読むことができるだろう。
本書は、水力、火力・原子力、送配電設備について、必要な土木設備にはどのようなものがあり、それをどう計画して造っていくのかを分かりやすく示している。ただし、電力関係の土木技術は水力設備において占める割合が大きいため、水力に関する解説が全体の半分くらいを占めている。
電力設備を知ろうと思ったら、電気関係の知識だけあっても不十分だ。機械や土木などの関連知識をある程度は知っておいた方が良い。電気技術者にとって土木設備に関する常識を身につけるために一読しておいて損はないだろう。ただし、初版が昭和62年なので、例えば「”もんじゅ”を建設中」(p87)といった古い記述もあるのでそこは気をつけないといけないのだが、電力土木自体は、かなり枯れた技術分野なので、それほど気にすることもないだろう。
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※初出は「風竜胆の書評」です。