謎好き乙女と奪われた青春 (新潮文庫nex) | |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
・瀬川コウ
何よりも赤坂アカさんによる表紙イラストの感じが秀逸な本書。思わずジャケ買いしたくなる作品だ。シリーズものとなっており、これはその1作目。
本作は、藤ヶ崎高校に通う矢斗春一と早伊原樹里の物語。春一は、ミステリーを巻き起こす人物として有名だった。そこに目を付けたのが、新入生の美少女・早伊原樹里。恋愛などには全く興味がなくミステリー大好きという彼女が、いっしょに「青春」する(つまり、ミステリーを解く)仲間として目を付けたのである。この樹里、かなりの変わり者で曲者だ。春一はなし崩し的に樹里の彼氏ということにされ、いっしょに「青春」させられることになってしまう。
実は、春一の回りでミステリーが起きるのにはある秘密があったのだ。本作は、それをストーリーの中骨にして、これにカンニング事件や春一の浮気告発メール事件などのエピソードを織り込み、青春ミステリーとしてうまく仕上げている。春一のミステリー体質に関しては、ラストにちょっとした叙述トリックが仕掛けられているのだが、これの必要性はよくわからなかった。却って作品を分かりにくくしているのではないかと思う。
もうひとつ、春一がミステリー体質になった原因である中学時代のいじめ事件。これが原因で、春一は高校で普通の青春を送れなくなってしまったのだが、中学生のやることにしてはどうかなという感じがつきまとう。
☆☆☆☆
※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。