知念実希人さんによる天久鷹央シリーズの最新巻。東久留米天医会総合病院の副院長兼統括診断部部長という肩書の女医・天久鷹央が統括診断部の医師小鳥遊優と研修医の鴻ノ池舞の3人で一見不思議な事件に挑むという医療ミステリーである。ちなみに小鳥遊は空手、舞は合気道をやっており、かなり強い。仲でも舞の合気道は達人級で、小鳥遊はいつも関節技でやられているというイメージである。鷹央は天才的な診断技術を持っているが、戦闘力はさっぱりであり、他人とのコミュニケーションは苦手である。
今回の事件は、吸血鬼による殺人。被害者は、ほぼすべての血液が抜き取られており、首筋には2つの痕跡。まるで、吸血鬼に血を吸われたように。このシリーズ、大体は珍しい病気だったというオチであり、今回の吸血鬼についても一応こういう病気だと診断がついているが、あれまだ全部の伏線を回収してないんじゃないと思ったら、もう一つ奥があった。それも鷹央が見事に解決している。
もうひとつ、本書のテーマは外国人技能実習生制度に関する闇といったものか。本来、日本に技能を学びに来ているはずが、単なる安価な労働力とみなして違法にこき使っているのだ。こういうのは、加害者に対しては罰則を強化し、被害者には救済制度を充実させることが解決に結びつくのではないだろうか。
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