この話にも八五郎の容姿が出てくるが他の作品と矛盾している。「銭形平次捕物控 015 怪伝白い鼠には、思いもよらぬ大男――しかも、あまり人相のよくないと書かれている。でもこの作品には、少し柄は小さいが、三十前後の面長な良い男で――ウフ、その邊は八五郎にそつくりだな―と書かれている。いったい八五郎は大柄なのか、小柄なのかはっきりして欲しい。まあ、良い男ではないというのは平次が笑っていることから推察できるのだが。
さて、今回の事件は、江戸の下町を騒がす、良家の綺麗な女の子を狙った誘拐事件。大抵は、身分に応じた金をとって親元に戻すのだが、中には戻らない子もいた。そして、女の子を裸にして骨組みや身體を念入りに見たり、高いところから突き落したり、梁へぶら下げたりするらしい。
その誘拐犯は、誘拐した女の子の身代金を受け取るとき平次の子分の神田の八五郎」と名乗っていたらしい。もちろん騙りだが、ヘボ探偵三輪の万七は、八五郎を疑っていたようだ。平次も八五郎をからかうネタにするくらいで、もちろん、そんなことを信じちゃいない。与力の笹野も笑って聞き流しているという。
そのうち殺人事件が起きる。両国で人気の「足藝のお紋」の小屋の軽業師の磯五郎が柳橋の下に舫った船の中で船頭の金助とともに死体で発見されたのだ。二人は、いかにも相打ちという風であった。
平次は、この事件を見事に解き明かすのだが、明らかになったのは驚くような真実。もちろん八五郎は犯人なんかじゃなかった。
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