毎度おなじみの「銭形平次捕物控」である。盗まれたのは平次の十手だが、直接盗まれたという訳ではない。ガラッパチ」が平次から借りたものを盗まれたのである。
この話の迷探偵役は、いつものように三輪の万七ではなく、ガラッ八が勤めている。万七も出てくるが、敵役としてである。ガラッ八が迷探偵というのは、思い込みで、無実の人間を犯人扱いしたというところだ。そして万七が敵役というのは、平次の十手を本人に返さずに、わざわざ奉行に届けているところである。おかげで万七は面目を失うようなものを盗られたのだが、平次は易しいので、それをこっそり返すことになった。
さて話の方だが、平次とガラッ八は兩國橋で身投げしようとしていた一人の男を救う。水右衛門というその男は、領主の大久保加賀守の屋敷に年貢筋100両を届けに行く途中で掏られたというのだ。ここからが迷探偵ガラッ八の出番。水右衛門から聞いた話によると、掏ったのは一枚絵のお時に違いないと言って、彼女の貯めていた100両を水右衛門に渡してしまった。一枚絵のお時は元掏りで、その二つ名は某の描いた一枚絵の美女に似ているという噂からだ。今は足を洗ってささやかな小間物屋を開いている美女だ。
もちろんこの事件には裏があった。それにまんまとだまされたのが平次と八五郎という訳だ。そう平次も珍しいことにまんまと騙されたのだ。お時は意趣返しに八五郎の十手を盗んだのだが、実はそれが平次から貸してもらっていた十手だったというわけである。
ところで、平次の十手だが、房が付いているという設定だが、実際には岡っ引きの十手には房はついていない。平次も岡っ引気には変わりはないので、十手に房はついていないはずだ。それにしても平次は何のお咎めもなかったのだろうか。一応事件は解決したが、十手を盗まれたということに何のお咎めもないとは思われない。でもその辺りがこの作品には書かれていないのでよく分からない。
この話にも平次お得意の投げ銭は出てこない。平次=投げ銭と思っている人は、認識を新たにして欲しい。投げ銭の出てくる話もあるが、むしろ少数派である、テレビドラマの旅に事件ごとに銭を投げているわけではない。貧乏暮らしの場面が良く出てくるので、あまり銭を投げると、お静さんに怒られるんだろうな。
☆☆☆☆