はれ、27度、71%、シグナル1
香港セントラル、世界の名だたるビッグブランドの店が、路面店として軒を連ねています。中国からの観光客目当てです。ところが、このセントラルから、二階建てのトラムに乗って、西に15分ほどいきます。すると、うっと鼻を突く匂いの町が現れます。香港人にとって大切な乾物を売っている町です。干し魚もありますから、その匂いは大変なものです。その商店の並びを過ぎると、急に町が穏やかな表情を見せてくれます。化粧で塗られた顔でなく、素の顔とでも言いたい、からっとした街の表情。このあたりに来ると、人通りも少なく、おそらく地価も安いのではないかしら?
私が香港にやって来た25年前から、ずっとやっているお店がなん軒かあります。その中のひとつが、蒸篭を売っている店です。
大小の蒸篭が山積みです。香港の飲茶の多くは、ご存知のように蒸篭に乗ってテーブルに運ばれます。以前のようにスチーム付きの台車に蒸篭を乗せて、テーブルの間を行き来する飲茶は少なくなりました。それでも、飲茶、もちろん家庭にだって蒸篭は大事な調理器具です。
このお店、 このおじさんともう一人のおじさんが、蒸篭を造っています。いつもこうして笑顔で迎えてくれます。25年前はおじさん、もっと若かったな、と自分のことを棚上げにして思います。年に何度かこの店をのぞきに、我が家から歩きます。
蒸篭は、既に大小2組持っています。蓮のちまきのために葉っぱを買いに行くのです。
時には、菓子の抜き型のようなものも、飾りとして買います。竹で作られる色んなものが一杯、ふと見ると、最近日本でも見かけた、鬼おろしが売っていました。
大根おろしは、おろしが変わると味が変わることを経験しています。プラスチックのおろし金から、有次のおろし金に替えたときの、あのショックが忘れられません。品がいい大根おろし。鬼おろしは、なんだか大根が、がりっと歯にあたりそうです。$20、日本円で200円もしません。ちょっと試しに買ってみましょう。お店では、ショウがおろしとして売られています。
歯は、まるで子供の工作のようです。
細かくなりすぎずに、なかなか歯ごたえのある大根おろしです。有次とこの鬼おろし、料理によって使い分けてみましょう。サバの卸し煮なんかは、鬼おろしで大根を下ろした方が好いような気がします。
いつ行っても、同じ笑顔が迎えてくれるこんな店が、 残っていて欲しいと思います。