曇り、26度、92%
おせんべいといっても沢山の種類があります。甘いの辛いの柔らかいの硬いの、お米の粉で作ったもの小麦粉で作ったもの。子供の頃近くにおせんべい屋さんがありました。おじさんが店の奥でおせんべいを焼いています。きれいなおばさんがお店番をしていました。自分の家用に少しだけ買うこともあります。お遣い物に箱に入れてもらうこともありました。確か、「花見煎餅」という屋号の店でした。母について買い物に行くと、きれいなおばさんがザラメの付いたおせんべいを私にくれます。時には白いアイシングが付いたおせんべいのこともありました。実はそのどちらも苦手な食べ物でした。砂糖の甘さの後にお醤油の味が口に来た途端、かじるのを止めます。おばさんは子供だから甘いおせんべいが好きだと思ってくれたのでしょう。手に握ったまま店を出ました。
この歳になっても、甘いおせんべいよりは塩味のおせんべいの方が好きです。塩味のおせんべいならご飯の代わりにバリバリと食べることもあります。止まりません。日本からのお土産によく頂くのは坂角の海老のおせんべい、軽くて見栄えのいい海老煎です。折角の頂戴物なのに心の中で思います。カルビーのかっぱ海老煎の方が美味しいかもしれない。そういえば最近はおせんべいをお土産に頂くことが少なくなりました。
時折空港で主人が買って来るおせんべいがあります。 大きな袋入り、味も形もお楽しみ袋のようにあれこれ入っています。この中に大きな黒いおせんべいが必ず1枚あります。大きいので目立ちます。この写真、もう食べてしまった後です。黒いおせんべい、黒胡麻のおせんべいではありません。初めて口に入れた時には海老煎の香りです。後ろ書きを辿って行くと、イカスミ。そういえば磯の香です。
黒いおせんべいの話をしていると、最近は炭の粉を入れた黒いおせんべい、黒胡椒で作った黒いおせんべいもあると聞きました。炭の粉は私もクッキーを黒く色付ける時に使います。無味無臭の炭の粉です。黒胡椒のおせんべい、辛みが強くなければ頂けそうです。
大きな袋に大小2枚のみのイカスミのおせんべい、黒い色が目を引きます。イカスミと思って食べると海老のかけらとともに口の中に海が拡がります。2枚しかないから私にとっては貴重品です。
「花見煎餅」のきれいなおばさんに手渡して欲しかったのは黒胡麻一杯の丸いおせんべいでした。おじさんが病気で亡くなって、お店はまだ私が子供のうちになくなりました。子供心におばさんがきれいな人だったことが記憶に残っています。