雨、22度、97%
昨日の朝から細かい雨が降り続いています。夏の雨とは違います。気温が高くはありません。湿度を避けるため、家中の窓は締め切っています。そんなにムッとしていないのに家の隅の方から、この家の持つ匂いが滲み出てくるように思います。古い家です。子供の頃嫌いだったこの家の匂いです。
暑い真夏ならこんな雨の日、空調をつけて除湿もしてこの家の匂いに気がつきませんでした。天井も高い一番広い部屋ですら家の匂いを感じます。この広い部屋は以前は座敷でした。他の部屋ならアロマでも焚くところですが、私のこの部屋の持つ印象は未だに畳の部屋です。夏には焚くこともなかったお香を出して来ました。
線香でもコーン型のお香でもありません。小さな「姫の香」です。長くゆっくりと香おり続けます。小さな炭、「炭団」をおこしてその上にのせて焚きます。 秋の香りの菊の形をした香を選びました。 小一時間も煙が流れます。締め切っているのに煙の流れ方が様々です。
夕方、座敷に戻りました。家の匂いは消えています。そして、ふと微かな白檀の香りが鼻をかすめます。
「炭団」を買いに仏具店に行った時、「香炭」というものを見つけました。炭自体に香りがついているものです。 試しに買ったものの、香りが持続しません。すぐに炭が灰になってしまいます。
「炭団」をピンンセットでつまんでローソクで火を起こし、ピンセットでつまんだ香をのせます。時間がゆっくり流れます。煙を見ながら、家は時に匂いでもって私に話しかけているように思います。懐かしい匂いではありません。カビくさいのでもありません。何かわからないけれどこの家の匂いは寂しさを誘います。小さな香一つで、心が晴れて行きました。