夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『孤独のススメ』

2016年05月10日 | 映画(か行)
『孤独のススメ』(原題:Matterhorn)
監督:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス,ルネ・ファント・ホフ,ポーギー・フランセン,アリーアネ・シュルター,
   ヘルマート・ヴァウデンベルフ,エリーセ・シャープ,アレックス・クラーセン他

映画のハシゴをするときは、念入りにスケジュールを立てます。
特にフリーパスをつくったときは、朝起きて「今日はこれを観る」なんて適当さでは駄目。
劇場の上映スケジュールとにらめっこして、
少なくとも数日先までのハシゴ計画をピシッと組みます。
シネコンは、毎週木曜日に翌日から1週間分の上映スケジュールが更新されるところが多いから、
なかなか思うように計画を立てることは叶わないのですけれども。

GW前、そんなふうに上映スケジュールを見ながら、
はたしてフリーパスで何本観られるだろうかと考え込みました。
しかしGW期間丸ごとの上映スケジュールはなかなか出ないし、変則的な更新。
同じTOHOシネマズにもかかわらず、梅田の更新は遅く、伊丹が意外に早かったりして。
客の入りで上映回数や打ち切りの時期を決めるのでしょう。
だもんで、更新されるごとにハシゴ計画の変更を余儀なくされました。

この日もどこぞのTOHOシネマズでフリーパスを使用して映画鑑賞するつもりでしたが、
GW中に公開になった作品はほとんど観たし、
あとは何曜日にどれを観て……などとスケジュールを検討すると、観るものが底をつく。
ならばレディースデーはほかの劇場で観ておくことにしようと、
この日はシネ・リーブル梅田でハシゴ4本計画を立てました。その1本目。

オランダ作品。
俳優でもあるディーデリク・エビンゲの長編監督デビュー作品だそうです。
出演陣はいずれもベテラン俳優らしいのですが、
オランダ映画ってそんなに馴染みがあるわけではないので、全然知りません。
だけど良かった。役者に釣られて観に行くのとはちがう、とても良い作品でした。

オランダの田舎の村。
一人暮らしのフレッドは、規則正しい毎日を繰り返している。
時計がきっかり同じ時刻を指すとお祈りと食事を始め、1分の狂いもない生活。

ある日、向かいの家の住人と話している男を見てフレッドは激怒。
そいつはつい昨日、ガソリン代を無心しにやってきた男。
今日もポリタンクをぶら下げて、今度は向かいの住人に無心しているのか。
そんなに早くガソリンがなくなるわけがないし、そもそも車はどこにある?
この嘘つきめ、金を返せとフレッドはまくしたてる。

男が昨日渡した金を持っているはずもなく、
フレッドは金が返せないならば家の前を掃除しろと男に言いつける。
一応約束どおりに掃除を済ませた男が所在なげにしているのを見て、
ついついフレッドは男に食事と寝る場所を提供する。

男には知的障害があるようで、突飛な行動に出ることしばしば。
困惑するフレッドだったが、そのまま居着いてしまった男を追い出すことができない。
やがて奇妙な共同生活がフレッドの気持ちに変化をもたらして……。

フレッドの部屋には妻と息子の写真が飾られており、だけど一人暮らし。
ここで観客はいろいろな想像をします。別れたのかな、亡くなったのかな。
妻を偲ぶシーンがあり、あぁ、奥さんを亡くしてから
孤独な人生を送っているのだなということは察しが付きます。

住人全員が顔見知りというほどの小さな村。
しかも誰もが敬虔なクリスチャン
フレッドが見ず知らずの男を家に招き入れ、しかもその男は少しおかしい。
たまにフレッドの奥さんの服を着ているようだ。
それが悪い噂にならないはずがありません。

こういったことが何もかもの伏線になっていることがわかる終盤。
偏見を捨て、お互いが知り合おう、受け入れようとすることがなんと大切なのか。
オフビートなコメディかと思っていたら、最後は私、涙の渦。

ハシゴ1本目からものすごく良い作品に出逢えました。

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