夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ハロルドが笑う その日まで』

2016年05月12日 | 映画(は行)
『ハロルドが笑う その日まで』(原題:Her er Harold)
監督:グンナル・ヴィケネ
出演:ビョルン・スンクェスト,ビヨーン・グラナート ,ファンニ・ケッテル他

シネ・リーブル梅田で4本ハシゴの3本目。
デンマーク作品の『バベットの晩餐会』を観たあとは、ノルウェー作品の本作を。
これまた非常によくて、この日のハシゴはシネ・リーブルだけで大当たり。

ノルウェー西岸、ホルダラン県ベルゲンにある町オサネ。
ハロルド・ルンデは40年連れ添う妻とともに家具店を営んでいる。
オサネの町中がハロルドのつくった家具を買うほどの人気で、
家具職人として誰に恥じることのない仕事をしてきたとハロルドは自負している。

ところがある日、ハロルドの店の目と鼻の先にあの“IKEA(イケア)”がやってくる。
北欧最大店舗と銘打ち、大々的にオープン。
あんなチープな商品が売れるものか。そうハロルドは思うが、
客はイケアに流れ、彼の店は閉店に追い込まれる。

時を置かずして認知症が始まっていた妻が急死。
何もかも失ったハロルドはオスロに暮らす息子ヤンを尋ねるが、
タブロイド紙の記者だったはずのヤンは仕事をクビになり、
妻子からも愛想を尽かされて離婚を言い渡されていた。

何もかもイケアのせい。
怒りに突き動かされたハロルドはおんぼろ車サーブを走らせてスウェーデンへ。
イケアの創業者イングヴァル・カンプラードを誘拐すると決める。
イケアが生まれた町エルムフルトにたどり着いたハロルドは、
車の中で居眠りしているところを通りかかった少女エバに起こされる。
カンプラード誘拐計画をエバに話したところ大ウケして……。

そんな大物、簡単に誘拐できるわけがないと思うわけですが、たまたま本人に遭遇。
思いつきの無謀な誘拐計画が行き当たりばったりに展開するという楽しさ。

どこへ行ってもイケアイケアイケア。
品質にこだわってきたハロルドとしては、こんなものクズだと思うわけです。
私だって、チープだよなぁイケアと思ったりもするのですが、
カンプラード氏の話を聞けばなるほど。
単に安くしているわけではない。そこにはアイデアが詰まっています。

エバの母親は過去の栄光にすがり、アル中で男なしでは生きられません。
そんな母親をどうしても見捨てることのできないエバ。
母親と娘の姿を描き、そしてハロルドとヤンに見る父親と息子の姿も。

人はいつからでもやり直せるもの。
ものすごく楽しく、ものすごく心が温まりました。

椅子は椅子に価値があるのではなく、座る人間に価値がある。

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