夜な夜なシネマ

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『殿、利息でござる!』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の19本目@伊丹)

2016年05月30日 | 映画(た行)
『殿、利息でござる!』
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ,瑛太,妻夫木聡,竹内結子,寺脇康文,きたろう,千葉雄大,
   西村雅彦,堀部圭亮,上田耕一,羽生結弦,松田龍平,草笛光子,山崎努他
ナレーション:濱田岳

西天満で晩ごはんの前に半休を取って2本ハシゴの2本目。
前述の『海よりもまだ深く』と同じくTOHOシネマズ伊丹にて。

『武士の家計簿』(2010)と同じ原作者、磯田道史の『無私の日本人』に収載される、
「穀田屋十三郎」、「中根東里」、「大田垣蓮月」のうち、「穀田屋十三郎」を映画化。
監督は質の高い娯楽作品を次々と繰り出す中村義洋
もっと軽いコメディかと思いきや、なんともいい話で泣きました。

18世紀後半、江戸時代中期の仙台藩。
百姓や町人の暮らしは重税のために困窮し、破産や夜逃げが続出。
宿場町の吉岡宿(よしおかじゅく)も例外ではなく、誰もがうちひしがれている。

町の行く末を案じる穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、
なんとか町を救えないものかと知恵者の菅原屋篤平治(瑛太)に相談。
酒の席で篤平治が発したアイデアを真に受ける。

それは、藩に大金を貸し付けて、その利息で町を再建しようというもの。
計画にはざっと1000両(約3億円)が必要。
それだけの金を用意できるわけもなく、篤平治はすぐにその話を忘れる。

ところが後日、十三郎が穀田屋十兵衛(きたろう)を伴って篤平治のもとへやってくる。
先日の話を十兵衛にしたところ、町のためならば金を出すと乗り気。
お上に金を貸すなど正気の沙汰ではないと篤平治は困惑。

肝煎(きもいり=世話役)の遠藤幾右衛門(寺脇康文)に話せば止められるにちがいない。
篤平治が十三郎を連れて幾右衛門を訪ねると、幾右衛門も賛成する。
ならばと、町でもっともお上に近い立場にある大肝煎、千坂仲内(千葉雄大)に話すと、
仲内は「町のことをそこまで考えている者がおるとは」と涙を流すではないか。

藩に無事に金を貸すことができたとして、利息はすべて町に落とす。
だから、貸し付ける金を工面しても、その金は工面した当人たちには返ってこないし、
何の得にも儲けにもならない。これはあくまで町のため。
それを理解して金を用意しようという奇特な人間など、この5人以外にいるとは思えない。
話が話だけに、1000両用意できる前にお上に知られでもしたら大変。
5人は節約に節約を重ね、家財をなげうって銭集めに奔走するのだが……。

老いも若きも役者が良し。

阿部サダヲ演じる十三郎は、もとは浅野屋の息子。
幼い頃、先代の浅野屋甚内(山崎努)から穀田屋に養子に出され、
甚内の名を継いだのは弟(妻夫木聡)。
金を貸してはたんまりと利息を取り、どケチと呼ばれた父親と、
その血をそのまま継いだとおぼしき弟。
十三郎は長男である自分が養子に出されたことに傷つき、
あんな守銭奴になるものかと心に誓って生きてきました。
いろいろと明らかになるシーンに思いがけず涙。

両替屋役の西村雅彦には顔を見ているだけで笑わせられ、
悪役も多い堀部圭亮が印象に残る代官役、松田龍平が無慈悲な出入司役で、
おもしろい配役といえましょう。
中村義洋作品の常連、竹内結子が飲み屋の女将役。気っぷが良くて綺麗。
同じく常連の濱田岳がナレーションで声のみの出演とはまた粋。

自分がどうなろうとかまわない。
町の皆が幸せに暮らせますようにとの一念で走り回った無私の人たち。
こんなふうにはなれないものだけど、こんなふうになれたら。

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