夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

「佐清(スケキヨ)!」

2012年09月10日 | 映画(番外編:映画と読み物)
知らない人はいないであろう、横溝正史の大ベストセラー、『犬神家の一族』。
昔から頻繁に映像化されていたにもかかわらず、たぶん怖かったのでしょう、
私は読んだこともなければ観たこともありませんでした。

それがここ数年、本を読めば「佐清」に当たるもんで、
本好きの父に「横溝正史、持ってる?」と聞いたら、「あるある」とのこと。
借りたと言っても自分の父親、いつ返してもええやろと、
去年の夏に借りたまま、読まずに来ました。

そして、知らない間にTSUTAYA DISCASのパックに付いてきた「旧作借り放題」。
私は1カ月16本を借りられる定額パックを契約しているのですが、
16本を超えて借りると今までは発生していた追加料金が、旧作に限り無料なんですと。
使わない手はありません。

ということで借りましたがな、『犬神家の一族』(1976)と『八つ墓村』(1977)。

『犬神家の一族』の舞台は昭和22(1947)年。
巨万の富を築いた犬神佐兵衛が死去し、親族の前で遺言状が開封される。
莫大な遺産を相続するのは、佐兵衛の恩師の孫娘・野々宮珠世とあり、
珠世の結婚相手は佐兵衛の3人の孫の中から選ぶようにとのこと。
3人それぞれの母親である、佐兵衛の長女・松子、次女・竹子、三女・梅子は、
なんとか我が子を珠世と結婚させようと血まなこに。
やがて竹子の息子・佐武(スケタケ)、続いて梅子の佐智(スケトモ)も殺されて……。

いや~、オモロイ!
殺しのトリックについて何の矛盾も生じないところがスバラシイ。
観終わってから、「あれはどーゆーこと?」みたいな疑問がひとつも無し。
石坂浩二演じる金田一耕助がきちんとすべて説明してくれます。

「佐清(スケキヨ)」死亡のシーンはご存じの方がほとんどでしょう。
観たことのない私でも、噂に聞いて知っていましたから。
湖面からズボッと2本、突き出た足。かの有名な「波立つ水面から突き出た足」のシーンです。

で、私にどうしてもこれを観ずにいられなくさせた本は2冊。

1冊は乾くるみの『蒼林堂古書店へようこそ』。
蒼林堂古書店に集った客たちが、日常の不思議についていろいろ推理します。
本としてはまぁ普通だったのですが、ツボに入ってしまった箇所が。
常連客の小学校教師(♀)がオススメ本を尋ねるさいにひと言。「スケキヨものは?」
スケキヨものって何なのよ。(^^;

もう1冊は金城一紀の『SPEED』。
映画化された『フライ,ダディ,フライ』(2005)と同じく、
落ちこぼれ男子高校生たちが活躍する“ザ・ゾンビーズ”シリーズ第3弾です。
ヒロインの女子高生を救うため、他校に侵入した彼ら。
メンバーのひとりに必ず何かやらかしてしまう山下くんという子がいて、
このときも見事作戦成功かと思いきや、山下くん、行方不明。
発見された姿は「校舎脇の植え込みに、逆立ちするみたいに頭から刺さっていた」。
メンバーの声にふきました。「スケキヨを助けに行くぞ!」

そのほか、『行け!男子高校演劇部』にもスケキヨが登場します。
主人公らがプール前にいるシーンで、プールには2本の突き出た足。
けれども、これについては何のコメントもなくてスルー。
スルーであることが余計に可笑しくてウケました。

『八つ墓村』ももちろん面白かったですが、怖すぎる。
スケキヨには驚かなかった私も、水面からにょきっと出たお婆の手には飛び上がりました。
夏八木勲の落ち武者のしたり顔も夢に出てきそうだし。

次に旧作を借りるときは、これらのリメイク版を観るつもりです。

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『汚れた心』

2012年09月08日 | 映画(か行)
『汚れた心』(原題:Corações Sujos)
監督:ヴィセンテ・アモリン
出演:伊原剛志,常盤貴子,菅田俊,余貴美子,大島葉子,
   エドゥアルド・モスコヴィス,奥田瑛二他

前述の『最強のふたり』を観たあと、梅田ロフトへ。
7階で開催中だった楳図かずお恐怖マンガ展「楳恐(うめこわ)」を見るはずが長蛇の列。
60分待ちとの案内に泣き、そのまま地階のテアトル梅田へ向かいました。
並んでも見たかったけれど、ネット予約した本作に間に合わなくなっちゃいます。
楳恐に行きたくて、わざわざハシゴ先をここにしたのに、これじゃ本末転倒だぁ。

第二次世界大戦後まもないブラジル。
日本からの移民が多く住んでいるが、日本との国交は断絶、
日本語の新聞等は廃刊となり、情報は遮断されている。
日本が連合国に対して降伏したにもかかわらず、
それを知り得ない彼らは、日本の勝利を信じつづける。
そんな中にも、日本の全面降伏を認める少数派は存在した。

これがいわゆる、日本の勝ちを信じる「勝ち組」と負けを認める「負け組」。

勝ち組のリーダー格である元日本帝国陸軍大佐のワタナベは、
ある日、現地警察のガルシア伍長が日章旗を踏みつけたことに激怒。
写真館店主で同じく勝ち組のタカハシらを引き連れて抗議に出向く。
伍長を殺しかねない勢いに、地元の保安官は軍に応援を要請。
勝ち組の日本人は全員逮捕される。

保安官事務所で取り調べを受けるさい、
ポルトガル語を話せない、または話そうとしない勝ち組のために通訳に呼ばれたのがアオキ。
実はこのアオキやその近隣に住むササキは、
ポルトガル語のラジオ放送を聴いて日本の敗戦を知っていた。
それは誰にも言わずにいたのだが、通訳として在席しただけで、
勝ち組から裏切り者よばわりされてしまう。

釈放されたワタナベは再び勝ち組を集めると、
裏切り者のアオキをはじめとする「国賊」を粛清せよと言う。
自分は本当に正しいことをしているのか、
そんな思いに駆られながらも、血に手を染めるタカハシは……。

歴史の教科書でしか習ったことのない戦争。
けれども教科書には載っていなかったことが、
戦争を題材とした映画には次から次へと出てきます。
『サラの鍵』もそうでした。これもそうです。
辛く、厳しく、苦しい。

本当にここまでの殺し合いがあったかどうかは知りませんが、
勝ち組と負け組の抗争があったのは事実。
日本刀で斬りつけて返り血を浴びたタカハシが、敗戦の事実に気づき、
保安官事務所で語るシーンは胸に迫ります。
それでも自分は死ねない、汚名を受け入れながら生きるしかないと。

大和魂っていったい何なのよ。こんな大和魂、いらない。
『死刑弁護人』とか『先生を流産させる会』とか、
「死」について考えさせられる作品が続いて疲労困憊気味。(--;

それよか、隣に座っていたカップルの男のほう。
上映中にいったいなんべん携帯を見るねん。
おみゃあが斬られろ!

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『最強のふたり』

2012年09月06日 | 映画(さ行)
『最強のふたり』(原題:Intouchables)
監督:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ,オマール・シー,アンヌ・ル・ニ,オドレイ・フルーロ,
   クロティルド・モレ,アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ他

封切り日にTOHOシネマズ梅田別館アネックスにて。
アネックスのほうではなぜかこれまで映画を観る機会がなく、
足を踏み入れるのはOS劇場のとき以来です。
『クリムゾン・リバー』(2000)を観たのが確かここでした。
この爬虫類顔のお兄ちゃん(=ヴァン・サン・カッセル)と
あの肉感美女のモニカ・ベルッチが夫婦なのかぁとしみじみ思ったおぼえが。

さて、本作は昨年のフランス公開作品のうち、最大のヒットとなった作品。
予告編からして良さそうで、さっそく拝見。

パリに暮らす大富豪の中年男性フィリップは、事故で頸髄を損傷。
話すことに不自由はないものの、首から下は感覚なし。
車椅子の生活を余儀なくされ、自力ではまったく動けない。
女性秘書のマガリとともに、住み込みの介護人候補者を面接中。

そこへやってきたのは大柄な黒人男性ドリス。
貧困層がひしめくアパートの出身で、言葉遣いも態度もめちゃくちゃ。
彼には就職する気など毛頭なく、ただ職探しをした証拠がほしいだけ。
面接に応募したという証明書にフィリップのサインを頂戴すれば、
給付期間終了間際の失業保険をまたもらえると言うのだ。

そんな事情を隠しもせずに話してとっとと帰ろうとするドリスに、
フィリップはこの体ではすぐにはサインできないから、明朝出直すようにと告げる。
約束どおりドリスが翌朝再訪すると、試用するから働いてみろと言うフィリップ。
浴室まで付いた広い個室に惹かれ、ドリスは介護人を引き受けるのだが……。

実在の人物がモデルとなっていて、本人たちはエンドロールに登場します。

貧困層出身で前科もあるドリスのことを雇ったと聞き、
フィリップの知人は、ああいう輩は容赦がないぞ、やめておけと忠告します。
けれどもフィリップは、逆に容赦がないのがいいんだと言います。
ドリスにとってはフィリップはただ普通の人間。
車に乗るときだって、車椅子ごと荷物のように積み込むのはドリスが拒否、
マセラティ・クアトロポルテの助手席にフィリップを座らせます。

そんなふうに、ほかの人のように同情の目では見ないし、
腫れ物に触るような接し方もしないけれど、
フィリップが苦しんでるときには駆けつけて、そばに居ます。
澄んだ空気を吸いにふたりで散歩に出かけるシーンは清々しい。

オペラ鑑賞の席で大声で笑うドリスにだけは駄目だしさせてもらいますが、(^^;
フィリップの趣味であるクラシック音楽もいいとして、
私はやっぱりドリスが大好きなアース・ウィンド・アンド・ ファイアー派。
ちょうど9月、“September”にノッちゃってください。

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『らもトリップ』

2012年09月04日 | 映画(ら行)
『らもトリップ』
監督:三間旭浩,今橋貴,松尾健太,中野裕之
出演:小島藤子,野村周平,宮下ともみ,清水くるみ,神崎れな,松尾貴史,
   嶋田久作,永池南津子,忍成修吾,勝村政信 諏訪太朗他

先月24日までシアターセブンにて公開されていました。
最終日は「みんなでトリップ♪」っちゅうことで、アルコール1杯付き。
けれども私はどうせ車だから飲むのはあきらめなあかんし、
同日にDVDもレンタル開始になるしということで、
劇場ではなくDVDにて鑑賞しました。

2004年の夏にラリって階段から転げ落ち、急逝した中島らも
超有名進学校の灘高から大阪芸大へという異色の経歴の持ち主で、
小説も書けば芝居もするし歌もうたう、ワラかしてくれる凄い人。

著作のなかで私が特に好きだったのは、『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』。
1960年代から1970年代、らもさんの青春時代を綴ったエッセイです。
いつ思い出しても笑ってしまうのは、バンド結成のときのお話。
女にモテるにはバンドに限るということで、同級生らと活動開始。
作曲なんてできる奴がいるはずもなし、だけどただのコピーじゃつまらない。
有名曲を転調して演奏しようと、決めた曲は“オブラディ、オブラダ”。
抱腹絶倒した一文を丸ごと覚えているわけではありませんが、こんな感じでした。
「演奏を始めたメンバーを見て、僕は愕然とした。
なんと彼らは〈悲しそうな顔〉で“オブラディ、オブラダ”を歌い始めたのだ」。
もちろん、長調のままですよ。

学生時代に高槻の友人宅に泊まったとき、
夜中にラジオから聞こえてくるらもさんの静かな声。
「ここ高槻のポンポン山では……」。タイムリーすぎて大笑い。

本作は、そんならもさん原作の小説3編を映画化した作品と、
らもさんと親しかった著名人へのインタビューで構成されています。

『クロウリング・キング・スネイク』は、ヘヴィメタするヘビ女の話。
かなえには最近引きこもり気味の姉のぞみがいる。
心配顔の父親に言われてのぞみの様子を見に行ったところ、
なんとのぞみの全身にうろこが発生中、脱皮までしてスッキリ。
のぞみはエレキギターを弾きたいと言いだし、かなえはギターを買いに。
地肌なのかコスチュームなのかわからん格好でライブ出演。

『微笑と唇のように結ばれて』は、吸血女に献身的な愛を捧げる男の話。
画廊を経営する丸木のもとへ、ある日、若い美女マリカがやってくる。
一夜を過ごした翌朝、まだ夢うつつの丸木の首に噛みつくマリカ。
彼女は血を摂取しなければならない病に冒されているらしい。
丸木はマリカに血を与えつづけようとするが、
マリカは別の血を求めて出て行ってしまう。
彼女の居所を突き止めた丸木は、傷つけるくらいなら殺してくれと懇願する。

『仔羊ドリー』は、自分のクローンをつくった男の話。
売れっ子作家の藤原はあまりの多忙さに嫌気が差し、
自分に代わって仕事をしてくれる奴がいればラッキーと、クローンを注文。
届いたクローンは自分とは似ても似つかないように見えるが、
他人から見ればウリ二つらしく、誰もクローンだとは気づかない。
瞬く間に藤原のことを学習したクローンは、仕事もこなせるようになり、
いつしか勝手に依頼を引き受けて、勝手に小説を書き始める。

こんな3作の前後にインタビューの『らも語り』。
らもさんについて語るのは、らもさんの奥様とお嬢さんのほか、
石田長生、宇梶剛士、大槻ケンヂ、竹中直人、チチ松村、原田伸郎、
古田新太、宮前賢一、山内圭哉の面々です。

映画はどれもいろんな意味で気持ち悪い。(^^;
『仔羊ドリー』は、勝村政信のクローンが諏訪太郎で、その時点で可笑しすぎ。
諏訪太郎に迫られる勝村政信が、「そっちの気はない」と叫びつつも、
「やめて~、気持ちいい~、やめて~、やめないで」って気色ワルっ。
そう、クローンだから、オリジナルのことはいちばんよ~くわかってるんですと。(^o^;

らもさんの数々の逸話は、この人、ほんとに愛されていたんだなぁと思うものばかり。
鼻からラーメンを出して眠りこけていた話とか、やはり凡人ではありません。
他界してから7年以上、今もこんなふうに話してもらえるのは幸せですね。

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『灼熱の肌』

2012年09月03日 | 映画(さ行)
『灼熱の肌』(原題:Un Été Brûlant)
監督:フィリップ・ガレル
出演:モニカ・ベルッチ,ルイ・ガレル,モーリス・ガレル,
   セリーヌ・サレット,ジェローム・ロバール他

ハシゴするにはもってこいのナナゲイですが、
『隣る人』『先生を流産させる会』の次の上映は、すでに観た『死刑弁護人』
その次がコレで、時間を潰して待てれば観ようかなと思っていました。
意外と元気が残っていたので、赤瀬川原平の『老人力』を読みながら待つこと2時間。
ず~っとナナゲイのロビーの硬い椅子に座っていました。

フランス/イタリア/スイス作品。
監督はフランスの名匠らしいですが、初めて拝見。

端役しか回ってこない俳優のポールは、
同じく端役ばかりの女優エリザベートと現場で出会い、声をかける。
意気投合してそのまま一緒に暮らすように。

ポールは友人を介して画家のフレデリックと知り合う。
裕福な家庭に生まれたフレデリックは、絵を売らなくてもいいような状況。
知人友人に絵を見せて、気に入ってくれた人には進呈する。
そんな具合でも生活に困らない、羨ましい人生。
しかも妻はイタリア人の美人女優アンジェルだ。

パリからローマへと引っ越したフレデリック夫妻のもとを
ポールとエリザベートは訪ねる。
ほとんど文無しのポールたちを滞在させることをフレデリックは気にも留めず、
部屋も食事も何もかも提供、好きなだけいればいいと言う。

自由気ままなフレデリックに魅了されたかのように、
エリザベートをほったらかして、ポールはフレデリックとばかり過ごす。
一方のアンジェルは、時折フレデリックから悪意ある言葉を投げつけられ、
もうフレデリックとは一緒に暮らせないと感じている。
別れを切り出すとフレデリックは泣き出して……。

フレデリックが車を暴走させるシーンから始まります。
なぜ死に走ったのかは最後まで観ても判然とせず、
情緒不安定な彼がアンジェルに捨てられて自暴自棄になった、
その程度の解釈でいいのかどうか疑問。

監督がとても信仰心に厚いのは見て取ることができます。
神前で添い遂げることを誓ったのに別れたのだから、
キリスト教では禁忌である自殺という罰をフレデリックに受けさせたという見方も。

つまらなくはなかったけれど、一昔前の恋愛ものを観ているようで、
これからも進んで観たいタイプではないなぁといったところ。

それにしてもモニカ・ベルッチは美しい。
冒頭突如として映し出される、全裸で横たわる彼女。
「カモ~ン」とばかりに手招きしてくれますが、
ド迫力のこのハダカは物語の構成上必要とは思われず、完璧なサービスショット。
脱ぎっぷりが良すぎます。(^o^;

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