雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

今日はお雛さま

2025-03-03 18:56:16 | 日々これ好日

     『 今日はお雛さま 』

   今さら 雛祭りでもあるまい と言いながら
   あられを頂き ちらし寿司も頂いた
   一方 お天気は 荒れ模様
   風雨が強く 温度も下がり
   昨日のお天気は 一体何だったのかと思い
   ついつい 「さすが 女の子のお祭りだ」なんて
   言わなくてもいいのに・・・ 口は災いの元!!

                  ☆☆☆
   

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食して肥えませ ・ 万葉集の風景

2025-03-03 07:59:46 | 万葉集の風景

     『 食して肥えませ ・ 万葉集の風景 』


   題詞 「 紀女郎が大友宿禰家持に贈る歌二首 』

 戯奴がため 我が手もすまに 春の野に
          抜ける茅花ぞ 食して肥えませ

             作者  紀女郎 

( 巻8-1460 )
      わけがため あがてもすまに はるののに
              ぬけるつばなぞ めしてこえませ

意訳 「 お前さんのために 手も休めずに 春の野で 抜いておいた茅花ですよ どうぞ召し上がって少しは太りなさい 」
なお、「戯奴」は女主人が使用人に使った言葉らしい。ここでは、単に戯れで使っているのかもしれません。
「茅花」は乾燥させるなどして保存食したらしい。

 昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木の花
         君のみ見めや 戯奴さへに見よ 

( 巻8-1461 )
      ひるはさき よるはこひぬる ねぶのはな
              きみのみみめや わけさへにみよ

意訳 「 昼は咲き 夜は恋しい人と寝るという 合歓の花を 主であるわたしだけが見るのではなく お前さんも見なさいよ 」
なお、「君」は主君のことです。


   題詞 「 大伴家持が贈り和(コタ)ふる歌二首 」

 我が君に 戯奴は恋ふらし 賜りたる
         茅花を喫めど いや痩せに痩す

             作者  大伴家持

( 巻8-1462 ) 
       あがきみに わけはこふらし たばりたる
                つばなをはめど いややせにやす

意訳 「わが君に 私めは恋しているようです 頂きました 茅花を食べましたが ますます痩せるばかりです 」

 我妹子が 形見の合歓木は 花のみに
         咲きてけだしく 実にならじかも

(巻1-1463 )
      わぎもこが かたみのねむは はなのみに
               さきてけだしく みにならじかも

意訳 「 あなたから頂いた 記念の合歓の木は おそらく花だけが咲いて 実を結ばないのでしょう 」


* 歌を贈った紀女郎(キノイラツメ)は、奈良時代初頭の頃の女性です。父の紀鹿人は外従五位上に昇っていますので、下級貴族の娘といった環境で育ったのでしょう。
720 年前後の頃に、安貴王と結ばれています。安貴王は、志貴皇子の孫ですから歴とした皇族で、二人の間には市原王が生れています。
ただ、紀女郎が嫁いで2~3年後の頃に、安貴王と元正天皇の采女との密通が表面化して、安貴王は罰を受けました。諸国から天皇に献上される采女との密通は「不敬之罪」として厳しく罰せられ、采女は故国に戻され、安貴王も、謹慎や官位剥奪などの罪を受けたと思われます。729 年頃には赦免され、後に従五位上まで昇進しています。
この事件から間もない頃に、紀女郎は安貴王と離別しています。

* 歌を返した大伴家持(オオトモノヤカモチ・718 ? - 785 )は、万葉集の編纂に深く関わっている人物です。従三位中納言まで上った人物ですが、経歴などは割愛させていただきます。

* 二人の歌の贈答は、間違いなく恋愛感情が絡んでいると思われますが、実に軽妙で、可笑しさを強く感じます。
この歌が交わされたのは、740 年頃とされていますので、家持が22歳前後なのに対して、紀女郎の方はかなり年上と考えられます。誕生年は未詳ですが、市原王を儲けてから20年近く経っていますから、おそらく、30歳台の後半だったのではないでしょうか。現在と違って、当時の30歳台後半は、孫がいて不思議のない年代です。
紀女郎は、よほどチャーミングな女性だったのでしょうが、家持がすっかり熱を上げているのを、お姉さんがからかっているかのような、それでいて思わせぶりでもあり、後の大歌人を「戯奴」扱いしているのが、何とも楽しい場面を提供してくれているように思うのです。

       ☆   ☆   ☆


   

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