雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

騒がしきもの

2014-06-11 11:00:38 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百三十八段  騒がしきもの

騒がしきもの。
走り火。
板屋の上にて、鳥の、斎(トキ)の生飯(サバ)食ふ。
十八日に、清水に籠もり合ひたる。
暗うなりて、まだ火もともさぬほどに、ほかより人の来合ひたる。まいて、遠きところの他(ヒト)の国などより、家の主の上りたる、いと騒がし。

近きほどに、「火出で来ぬ」といふ。
されど、燃えはつかざりけり。


騒がしいもの。
ぱちぱちとはね飛ぶ火の粉。
板屋根の上で、鳥が施餓鬼の食べ物を運んで食べている様子。
十八日(観音菩薩の縁日にあたる)に、清水寺に参籠者が立て込んだ時。
家の中が暗くなって、まだ灯りをつける前の頃に、来客が大勢来合せてしまった時。まして、遠方にある地方などから、その家の主人が上京した時などは、とてもあわただしい。

近所で、
「火事だ」という声がした時。
けれど、延焼はまぬがれました。



「騒がしきもの」という言葉の意味は、現在とほとんど変わらないようです。
少納言さまが挙げられている事例も、火の粉がぱちぱちはねる様子や、鳥の騒ぐものと、人が立て込んだり大騒ぎするものなどを並べていますが、現在も同様の使い方をしています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 謎めいていて ・ 心の花園 ... | トップ | 雲は白き »

コメントを投稿

『枕草子』 清少納言さまからの贈り物」カテゴリの最新記事