雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

陰陽師のもとなる

2014-04-24 11:00:04 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百八十一段  陰陽師のもとなる

陰陽師のもとなる小童部こそ、いみじうものは知りたれ。
祓へなどしに出でたれば、祭文など読むを、人はなほこそきけ、ちうとたち走りて、「酒・水・いかけさせよ」ともいはぬに、し歩くさまの、例知り、いささか主にものいはせぬこそ、うらやましけれ。
「さらむ者がな。使はむ」とこそ、おぼゆれ。


陰陽師の所で召し使われている小童ときたら、何でもよく心得ているものですよ。
お払いに出掛けたりすると、陰陽師が祭文などを読むのを、集まっている人はただ聞いているだけですが、小童は、ちょろちょろっと走り回って、陰陽師が「酒・水を注がせよ」とも命じないのに、そのようにやってのける様子が、作法を心得ていて、少しも主によけいな口をきかせないのが、全く羨ましいものです。
「あのような者がいれば、召し使いたい」とまで、思ってしまいます。



この時代、陰陽師の存在は大きなものであったと思われますが、その助手にあたる小童部の如才ない動きを冷静に見ている辺りが、清少納言という方が並の女房ではないことを感じさせます。
少納言さまも何人かの下女や下男を使っていたようですが、主人の意のままに動いてくれる使用人はなかなかいなかったのでしょうね。

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