雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

平和共存 ・ ちょっぴり『老子』 ( 67 )

2015-06-19 10:55:02 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 67 )

               平和共存

強者も弱者も謙譲の心で 

「 大国者下流、天下之交。天下之牝。牝常以静勝牡。以静為下。故大国以下小国則取小国、小国以下大国則取大国。故或下以取、或下而取。大国不過欲兼畜人、小国不過欲入事人。夫兩者各得其所欲。大者宜爲下。 」
『老子』第六十一章の全文です。
読みは、「 大国は下流にして、天下の交なり。天下の牝(ヒン)なり。牝は常に静を以って牡(ボ)に勝つ。静を以って下ることを為せばなり。故に大国以って小国に下れば則(スナワチ)小国を取り、小国以って大国に下れば則大国を取る。故に或いは下りて以って取り、或いは下りて取られる。大国は人を兼ね畜(ヤシナ)わんと欲するに過ぎず、小国は入りて人に事(ツカ)えんと欲するに過ぎず。それ両者各々その欲する所を得る。大なる者は宜しく下ることを為すべし。 」
文意は、「 大国は下流であって、天下の水が交わる所である。また、たとえるならば、天下の女性のようなものである。女性は常に静かで争わないことをもって、男性に勝っている。女性が男性に勝つのは、静かでへりくだっているからである。そうであるから、大国は小国に対してへりくだった態度で接することで小国を帰服させることが出来、小国は大国に対してへりくだった態度で接することで大国の庇護を得ることが出来る。故に、一方では大国がへりくだることにより小国を帰服させ、他方では小国がへりくだって大国に帰属して庇護を得るのである。大国の望みは、多くの人民を兼ね養うことを欲しているに過ぎず、小国の望みは、大国に取り入って仕え安堵することを欲するに過ぎない。このように、両者がへりくだれば、それぞれがその欲する所を得られるのである。大なる者は宜しくへりくだるべきなのである。 」

さて、文意ですが、本章の場合、「故大国以下・・ 小国以下・・」の部分には、誤記あるいは欠落があると考えられます。多くの研究者も指摘していて、このままでは意味を理解できないので、その後の部分も勘案して修正文意としました。
この章に誤謬があることは確かと思われますが、内容はなかなか興味深いものです。

現代に通じるか

一般的にこの章は平和共存について説かれていると受け取られています。きっとその通りだと思われますが、もう一つ興味深い部分は、「大国は女性のような存在であり、女性が男性より静かであり、それ故に男性に勝つ」と述べている部分です。もちろん、『老子』の基本的な考え方の延長だといえますが、現代でも、そのまま通じるのでしょうか。
一方で、大国と小国が平和裏に共存するためには謙譲の態度こそ大切だと述べていると思われますが、こちらの方は、それが真実だとしても現代に至ってもなかなか実現が難しそうです。

『老子』は、最後の部分に、「大者宜爲下」と記しています。
「大人物になればなるほど謙譲の心で物事を対処せよ」と教えているのでしょうが、私たちの日常では、「小者と見える人物ほど傲慢な態度を取ること」が珍しくないようです。
心したいものです。

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