道のべに 清水流るる 柳陰
しばしとてこそ 立ちどまりつれ
作者 西行法師
( No.261 巻第三 夏歌 )
みちのべに しみづながるる やなぎかげ
しばしとてこそ たちどまりつれ
* 作者 西行法師(サイギョウホウシ)は、新古今和歌集を代表する歌人。 ( 1118 - 1190 ) 享年七十三歳。
西行は、もとは武士で、俗名は佐藤義清(サトウノリキヨ)。藤原秀郷の九世孫にあたる。藤原秀郷は平安中期の人物であるが、別名・俵藤太ともいい、ムカデ退治の伝説で名高い。もっとも、秀郷の子孫と伝えられているのは、関東・京都を中心に五十家を越えるらしい。
* 歌意は、「 道のほとりに清水が流れている。そこに栁が陰を作っている。しばらく休もうと立ち止まったが、あまりに涼しいので、つい長居してしまった 」といったものと思われ、実に素直な和歌と言える。放浪の法師の姿が、浮かんでくるような気がする。
西行の和歌は、新古今和歌集に94首入選していて、その数は第一位にあたる。「新古今調」といえば、情調的、技巧的などと評されることが多いが、この和歌などは、ごくごく素朴なもので、これも新古今調の一端を示しているのかもしれない。
* 西行は、新古今和歌集の代表歌人というだけでなく、平安末期を代表する歌人の一人であり、わが国の文芸史を語る上でも欠かせない存在と言える。西行に関する研究書は多く、登場する小説も少なくない。
西行が出家したのは二十三歳のことであるから、武家としての生活はごく短い。十八歳の頃に左兵衛尉に任官しており、二十歳の頃には、鳥羽院の北面の武士であったと伝えられているので、下級貴族というよりは、武士として活動していたと考えられる。
* 西行の和歌については、またご紹介する予定である。
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