マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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南之庄歓楽寺虫供養

2010年07月30日 07時28分16秒 | 奈良市(旧都祁村)へ
4月は岳へ登って豊作を祈願した。

その月にはオコナイでたばったお札を苗代に挿して苗が育つように祈った。

5月の田植えでは天候を気にしながら植え初めをした。

田植えが終わったら岳へ登って田植終いの報告祭。

節目、節目に豊作を願う行事を行ってきた。

6月になれば虫がどこからともなく発生する。

農家にとって育ってきた稲を食い荒らす虫は外敵だ。

虫を殺生しては、その虫を弔う虫供養。

祭壇に虫一族一切皆満足なにがしと墨書された卒塔婆が置かれた都祁南之庄の歓楽寺本堂。

檀家総代ら役員は本堂にあがって虫供養の法要を始められた。

本尊のお薬師さんの前で恒例の虫供養を祈る。

傍らには祈祷札が挿された長さ2メートルほどの青竹が立てかけられている。

それは田畑の稲がよく実るよう、うやうやしく祈願する法要だ。

住職は敬って五穀豊穣を願った。

梅雨入りは13日。昨夜から降り出した雨もあがった。

田んぼには潤いの水が満たされている。

ウグイスが囀る境内は「やーて、やーて」の般若心経とともに共鳴している。

法要を済ませると総代たちは村境にやってくる。

南之庄から桜の峠を越えて到着した。

手にしているのが先ほどの祈祷札だ。

村境は白石と吐山の境界地の分岐点に挿す。



虫は村の境に追いやったということだ。

かって南之庄でも虫送りの松明があったという。

戦時中のことだと前置きされて語った。

空襲で大阪の中心部は焼けだされた。

都祁の村も空襲警報が鳴った。

そんな時代に灯りは禁物。

松明といえども爆撃機から見えないようにした。

いわゆる灯火管制だ。

戦後も迎えたのだが、村から虫送りの松明が消えていった。

(H22. 6.16 EOS40D撮影)