マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
すべての写真、文は著作権がありますので無断転載はお断りします。

萱森遷しまし頭屋祭

2016年07月09日 09時56分59秒 | 桜井市へ
前年に家族を亡くされた家は服忌で神事ごとには参列できない。

集落には親戚筋も何軒かある。

数珠つなぎのように一族は服忌一年をつとめる。

喪に服した一年間が経てばようやく参列できる。

服忌期間は丁度の一年。

当該の日が過ぎなければならない。

マツリの日はそういう事情もあって一週間も遅らせた。

服忌家の都合でもなく、これは村の考え方。

出仕される宮司もその日であれば兼務社の行事も重ならない。

揃って都合がいいのだ。

3月1日、頭屋家はその日に迎えた神さんを祀るヤカタを自宅で祭ってきた。

およそ10カ月間も祭ってきた神さんはこの日の夜に神輿に遷される。

神事関係者が出入りする頭屋家の門屋前に塩を撒いて敷き詰めていた。

なぜにこのようなことをするのか、である。

つい数日前に村の人が亡くなったからである。

遷しまし神事に参列する祭頭総代、中老、副中老は頭屋家に来るまでに神社でお祓いを受けていた。

祓い清めてもらった参列者であるが、頭屋家はさらに塩を撒いて祓っていたのである。

この夜に遷しまし頭屋祭が行われる桜井市萱森は山間部。

街灯なんぞまったく見られない山間集落だ。

頭屋家の玄関脇。



ローソクに火を灯した御神燈を吊り下げていた。

喪に服する村の規定がある。

亡くなった人が一親等であれば一年間。

二身等であれば百か日間も喪に服する。

頭屋家の座敷にあがった神事関係者は祝いの紅白饅頭をいただく。

水分はお酒でなくこぶ茶である。

そろそろ始めましょうと宮司が動きだす。



祓えの詞、修祓、御神輿に遷しませ・・とかしこみ申す祝詞を奏上する。

頭屋は祭壇の前に座って拝礼する。

これより神遷し。

屋内の灯りすべてを消す。

室内は真っ暗になった。

暗闇のなかに声や音だけが聞こえる。

中老は廊下に置いてあった神輿を室内に移す。

宮司はオォォーーの警蹕音とともに御扉開き。

ヤカタに坐いました神さんは神輿に遷られた。

御扉を閉じて電灯を点ける。



神さんは神輿に遷られた。

白布敷いた場に神饌を供えた。

明日のマツリに担がれた神輿は神社に戻られる。

今夜の一晩は頭屋人とともに神輿で住まう。

この夜の神事に立ち会った二人の中老。

服忌があった家は中老を務める予定だった。

神事に参列することができなくなり、急遽決まった代役である。



遷しまし神事を終えた頭屋家は家で作った接待のアンツケモチでおもてなし。

二老でもある祭頭総代はこれをアンコロモチと呼んでいた。

餅は電器機械で搗いたが、餡は店屋で買ったそうだ。

(H27.10.23 EOS40D撮影)