マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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御所鳥井戸の燻炭焼き

2016年07月30日 08時01分19秒 | 民俗あれこれ(四季耕作編)
大宇陀本郷、吉野町、大淀町、下市町(新住丸尾・栃原)、五條市(津越・城戸)を巡って帰路につく。

五條市から御所市に繋がる峠越え。

稲刈りを終えた田園景観が広がる。

昨年もほぼ同じ時期を走っていた見慣れた風景の中に煙が上がっていた。

畑の中に黒いエントツがあった。

通り過ぎたが気になってUターン。

間違いもない燻炭焼きである。

通ったときにはその場に鍬を手にした男性が居られた。

話しを聞ける。

そう思って膨れた場に停車する。

数百メートルも歩けば燻炭焼きの場につくが、心臓がバクバク唸る。

厳禁の早歩きは負担がかかる。

逸る気持ちを抑えて歩くスピードをスローダウンして到着する。

せっかくの機会を逃してはなるまいと思って、その場に居られた男性にお願いして撮らせてもらった。



燻炭焼きは常に遭遇するものではない。

場所、時間帯、焼き状況が私の行動と一致しなければ見られない作業なのだ。

煙が昇っていても田主が居ない場合がほとんど。

風景写真であればその様相を撮るだけで良いが、私の場合は暮らしのなかの風景。

つまり、風景写真に民俗要素を入れ込むということだ。

特に重要視しているのは田主の言葉だ。

生活、手法などなど不知な私を醸成してくれる生の声。

教わりがイチバンの栄養素。

私を成長させてくれる宝の声に教えを乞う。

巡りあえた田主さんは元建築業。

定年後の10年間は稲作など畑仕事をしていると云う。

燻炭焼きのエントツは近くのDIY店で購入したもの。



ブリキ板で作られたエントツは何カ所かを月型に開けた穴がある。

それが空気穴だ。

エントツの下部はこれの倍以上の膨らみがあると云って焼けた籾に鍬を入れて崩してくれる。

内部から出現した袴型の部品も月型空気抜き穴がある。

内部にある籾が焼ける。

周りの空気を取り込み、エントツを通して煙が立ち昇る。

ウスヒキした籾は焼けてしまえば真っ白な灰になる。

灰になれば燻炭ではなく、籾が燃え尽きるだけだ。

これを防止するには山高く積まれた籾を混ぜ合わせなければならない。

火を点けたら一時間に一度は混ぜ合わせ。

この作業を繰り返すことでデキの良い燻炭ができあがる。



今日もそうしていたと云う。

一段高い畑にマメを干していた。

この時期ともなれば畑の周囲に植えたアゼマメを引っこ抜いてハザに架けて干す。



カラカラに乾いたら棒で莢を叩いてマメを取り出す。

この場でするのではなく自宅に持ち帰って作業をする。

マメは二種類ある。

シロマメとクロマメだ。

お節料理などに欠かせないシロマメにクロマメ。



どういうものか持って帰りと云われて数本を分けてくれた男性は自宅へ戻っていった。

ちなみに男性は吉野水分神社と大いに関係あるらしい。

あらためて伺いたいと思った。

(H27.11. 7 EOS40D撮影)