マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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柳・上柳の地蔵盆

2017年04月12日 09時32分18秒 | 吉野町へ
この日の行事取材地は吉野町と大淀町。

各地の地蔵盆の在り方を拝見することにある。

目的地に向かう道すがらに見つけた地蔵盆の提灯。

ずらりと横並びに吊った提灯は否が応でも目に入る。

これは是非とも話を伺っておいたほうがいいだろうと思って車を停めた。

ここより先の処でUターン。

その場で目が点になった施設に揚げた幟旗。

これは一体何であるのか。



「火の用心」の大きな文字があるからここは消防署。

なにかがおかしい。

「火の用心」は上から読んで火の用心。

その左側に貼ってる幟旗の文字は「交通安全」。

なぜか逆さ文字である。

逆さ文字に違いないと思うのは下段の横文字。

正位置に書かれた文字は「中竜門交通安全協会」である。

ここは一体どこなんだ。

辺りを見渡せば地域施設の位置を示す地図がある。

それには「吉野町消防団中竜門第一分団管内図」とある。

その地図を立てている横に施設がある。

「中竜門地域振興センター・柳児童館」である。

ここは吉野町の柳であった。

柳は西から田尻、中央、中村。

中村の北に別所。

また、中央の東に上柳とある。

さきほど見かけたたくさんの提灯を吊っていた地蔵盆がある地区は上柳。

Uターンして村の人に聞けばそうであった。

上柳の地蔵盆は8月24日。

夕方の午後5時半ころから集まる。

当番の人が地蔵さんに供えるセキハンの握り飯を並べる。

コモチも多くて一斗半も搗く。

太鼓を打ってカセットテープが唱える念仏を流している。

終るのは午後6時だと区長さんらが話していた。

それまでの時間帯は他町村地区の地蔵盆の様相を探索、取材する。

一旦は上柳を離れて大淀町増口中増西増に吉野町丹治に出かける。

そこでの取材を終えて戻って来た時間帯は午後6時。



県道の拡張工事によって埋没していた地蔵さんが出てきた。

谷にあった地蔵さんはこうしてコンクリート製の崖内に設えた祠に納めて祭っている。

日中に遭遇した地蔵さんの前は長机があったが、それは相当数ある御供を納める祭壇になっていた。

その代わりではないが、歩道に並べた長椅子を設えていた。

すでに何にかの人たちが夕涼みを兼ねて座っている。

話していたセキハンの握り飯のお供えを拝見する。



お盆に盛ったセキハンの握り飯はたくさんある。

形はどちらかと云えば俵型である。

ざっと数えただけでも100個の握り飯。

上柳の戸数は20戸というから一軒に何個かの握り飯が配られるのであろう。

白い餅はコモチ。

前述したように一斗半も搗いたコモチは桶でもなくバケットに盛っていた。



当番の人は花を立ててローソクに火を灯す。

線香も火を点けていくころの時間帯は陽も暮れる。

辺りはゆっくりと時間が流れ、電灯線をひいた提灯に火を灯す。



村の人たちがやってきて始まりを待つ。

子供たちの姿もみえる。



老若男女が揃って長椅子に座る。

地蔵さんに手を合せばカセットテープが唱える念仏が流れる。

車の往来が激しい国道沿いの地蔵盆。

役員たちは交通安全にここより上下区間とも人を配置して通りがかる車に合図する赤色LED誘導灯で誘導していた。

上柳の地蔵さんは、この新道の拡幅工事をしている際に出てきたという。

右下にある谷から出現した地蔵さんは大切に守ろうというわけでコンクリート製の崖内に設えた祠に安置したということだ。

カセットテープの音源は生前に導師が残したお念仏。



なみようほうれんげきょ・・の念仏に合わせて村人たちもお念仏を唱える。

村内にあるお寺は願成寺。

無住寺であるが、真宗大谷派の東本願寺の教区になる。

お念仏を終えたら先を急がねばならない。

日が暮れているかななおさら急がねばならない。

事情を申しあげて、さようならを伝えたらどっさりとお下がりのコモチを分けてくださった。

ありがとうの気持ちは再会したときにお礼を伝えたい。

そう思って退出した。

(H28. 8.24 EOS40D撮影)