宇陀市榛原柳で行われる旧暦閏年の庚申行事は、2カ月に一度の庚申さんの日に行われている庚申講の例会の営みを終えてから実施される。
旧暦閏年の庚申講。
この年が当たりの年である。
旧暦のカレンダーによれば、今年の当たりになる「大」の月、つまり閏月は5月辺りであるが、榛原柳では「大」の月に合わすことなく、4月にしているそうだ。
この年の4月に「申」の日は3日間ある。
4月3日に15日と27日である。
いずれも平日であるから、止むを得ず集まりやすい2日の日曜日に決定された。
会所でもある旧長福寺で心経を唱えた人たちは寺から離れる。
一年に6回の営みをしていた庚申講中が次に訪れる場は庚申講のヤド家。
例年の場合には見られない特別に行われる旧暦閏年の閏庚申行事である。
向かう先は庚申講のヤド家。
東出・西出垣内合同の閏庚申が営むヤド家である。
事前の了解を取っていなかったので屋外の取材、と思っていたが、伺ったヤド家はここまでという場で撮らせていただく。

ヤド家玄関横に立てた葉付きの桧材は塔婆。
ヤド家のTさんは、これを魔除けの塔婆と呼んでいた。
村の地に生えている桧材は細いからそれを選んだ。
もっと太い桧材は個人所有の山にあるが、太くい桧材は塔婆用途に合わない。
そう判断して村所有地から前日に伐採した桧材を加工して願文を書いたという。
「奉願 天下泰平 村内安穏 家内安全 五穀豊穣 南無青面金剛童子菩薩の塔也 平成二十九年四月吉日 堂主○○○○」である。
その上には三文字の梵字。
これまで数々の旧暦閏年の閏庚申の塔婆を拝見してきたが三文字は初見である。
五文字であれば、五輪塔と同じく「キャ カ ラ ヴァ ア」読みの「空 風 火 水 地」であろうが、三文字の場合はわからない。
なんせ、私は梵字を読み取る能力は持ち合わせていない。
「キャ カ ラ ヴァ ア」についても天理市山田の真言宗僧侶に教えてもらったことはあるが、私が梵字を読めるわけはない。
だが、区長さんがネットで調べた結果を書いた文字は「御庚申(おんこうしん)」。
梵字もネットで調べたそうだ。
これより始まるのは閏庚申の営み。
ヤド家の座敷で行われる。
座敷で講中を迎えるヤド家の当主は正装である。
しばらくは差し出すお茶で時間を過ごす。

そうして始まった閏庚申は月例と同じく般若心経を三巻。
床の間に飾った東出・西出垣内の庚申掛軸を前に唱える。
お供えは月例と同じく赤飯もあるが、塩漬けの生鯖も添えた。

この場も大字柳の区長さんが導師を務めた。
これら法要を済ませば座敷でヤド家接待のヨバレに移る。
午後の部はヨバレが終わってから始まる。
その間に急ぎたい次の取材先に向かって車を走らせた。
それほど遠くない地になる桜井市の大字出雲である。
そこは短時間しか滞在できない。
午後には戻って、屋外にある庚申さんに参るヤド家の営みもあるから大わらわの取材である。
ヤド家で接待されるヨバレの時間が終わるころを見計らって戻って待っていた。
だいたいが2時間ほどの接待時間になるらしい。
稀に早くなったり遅くなったりする場合もあるということだから気が気じゃない待ち時間である。
室内から洩れる声の様子を伺って待っていたら、「そろそろ行きましょうか」と、いう声が外に洩れた。
玄関に立てていた塔婆を持つ男性。
誰でもいいのだと云いながら歩きだした。
塔婆に続いて講中もぞろぞろ動き出す。
向かう先は近鉄電車が通過するトンネルの向こう側。

急坂道の先に庚申石仏である。
建てた小祠の内部に安置された青面金剛像は風化激しく、姿、形はぼんやり。
薄っすらとしか見えないが、どことなく榛原篠楽の下垣内極楽寺下にある青面金剛像と同じような姿であったのでは・・・と、思ったがどうだろうか。
ここも御供を供えて、同じく三巻の般若心経を唱える。

足場が不安定なだけに、女性たちは下から拝んだ。
塔婆上げを済ませたら直会に移る。

供えた御供餅は講中に配られて下の道でお神酒いただき。
すぐ横を流れる小川は長谷川。
「これより上流が源流になるという長谷川はこれでも一級河川なんだ」と、自慢される。
この長谷川を挟んで西側が桜井市の吉隠(よなばり)。
河川が境界になるそうだ。

その吉隠も隣村の榛原角柄にも旧暦閏年の庚申行事をされていたが、今年はまったくその様子は見られなかった。
もしかとすれば、だが、吉隠も角柄も講中は解散、若しくは中断されたのかもしれない。
そう思っていたが違った。
解散でなく旧暦閏年の庚申行事日が「大」の月に行われたようだった。
判別できた日はこの年の9月1日だった。

ちなみにヤド家のT家の玄関にヒイラギイワシを挿していた。
2月3日の節分風習は当家にもある。
たしか、3月23日にも訪れた榛原柳。

当地で初めてお会いしたY家もあったことを覚えている。
いつか訪ねて節分の習俗を尋ねてみたくなった。
(H29. 3.23 SB932SH撮影)
(H29. 4. 2 EOS40D撮影)
旧暦閏年の庚申講。
この年が当たりの年である。
旧暦のカレンダーによれば、今年の当たりになる「大」の月、つまり閏月は5月辺りであるが、榛原柳では「大」の月に合わすことなく、4月にしているそうだ。
この年の4月に「申」の日は3日間ある。
4月3日に15日と27日である。
いずれも平日であるから、止むを得ず集まりやすい2日の日曜日に決定された。
会所でもある旧長福寺で心経を唱えた人たちは寺から離れる。
一年に6回の営みをしていた庚申講中が次に訪れる場は庚申講のヤド家。
例年の場合には見られない特別に行われる旧暦閏年の閏庚申行事である。
向かう先は庚申講のヤド家。
東出・西出垣内合同の閏庚申が営むヤド家である。
事前の了解を取っていなかったので屋外の取材、と思っていたが、伺ったヤド家はここまでという場で撮らせていただく。

ヤド家玄関横に立てた葉付きの桧材は塔婆。
ヤド家のTさんは、これを魔除けの塔婆と呼んでいた。
村の地に生えている桧材は細いからそれを選んだ。
もっと太い桧材は個人所有の山にあるが、太くい桧材は塔婆用途に合わない。
そう判断して村所有地から前日に伐採した桧材を加工して願文を書いたという。
「奉願 天下泰平 村内安穏 家内安全 五穀豊穣 南無青面金剛童子菩薩の塔也 平成二十九年四月吉日 堂主○○○○」である。
その上には三文字の梵字。
これまで数々の旧暦閏年の閏庚申の塔婆を拝見してきたが三文字は初見である。
五文字であれば、五輪塔と同じく「キャ カ ラ ヴァ ア」読みの「空 風 火 水 地」であろうが、三文字の場合はわからない。
なんせ、私は梵字を読み取る能力は持ち合わせていない。
「キャ カ ラ ヴァ ア」についても天理市山田の真言宗僧侶に教えてもらったことはあるが、私が梵字を読めるわけはない。
だが、区長さんがネットで調べた結果を書いた文字は「御庚申(おんこうしん)」。
梵字もネットで調べたそうだ。
これより始まるのは閏庚申の営み。
ヤド家の座敷で行われる。
座敷で講中を迎えるヤド家の当主は正装である。
しばらくは差し出すお茶で時間を過ごす。

そうして始まった閏庚申は月例と同じく般若心経を三巻。
床の間に飾った東出・西出垣内の庚申掛軸を前に唱える。
お供えは月例と同じく赤飯もあるが、塩漬けの生鯖も添えた。

この場も大字柳の区長さんが導師を務めた。
これら法要を済ませば座敷でヤド家接待のヨバレに移る。
午後の部はヨバレが終わってから始まる。
その間に急ぎたい次の取材先に向かって車を走らせた。
それほど遠くない地になる桜井市の大字出雲である。
そこは短時間しか滞在できない。
午後には戻って、屋外にある庚申さんに参るヤド家の営みもあるから大わらわの取材である。
ヤド家で接待されるヨバレの時間が終わるころを見計らって戻って待っていた。
だいたいが2時間ほどの接待時間になるらしい。
稀に早くなったり遅くなったりする場合もあるということだから気が気じゃない待ち時間である。
室内から洩れる声の様子を伺って待っていたら、「そろそろ行きましょうか」と、いう声が外に洩れた。
玄関に立てていた塔婆を持つ男性。
誰でもいいのだと云いながら歩きだした。
塔婆に続いて講中もぞろぞろ動き出す。
向かう先は近鉄電車が通過するトンネルの向こう側。

急坂道の先に庚申石仏である。
建てた小祠の内部に安置された青面金剛像は風化激しく、姿、形はぼんやり。
薄っすらとしか見えないが、どことなく榛原篠楽の下垣内極楽寺下にある青面金剛像と同じような姿であったのでは・・・と、思ったがどうだろうか。
ここも御供を供えて、同じく三巻の般若心経を唱える。

足場が不安定なだけに、女性たちは下から拝んだ。
塔婆上げを済ませたら直会に移る。

供えた御供餅は講中に配られて下の道でお神酒いただき。
すぐ横を流れる小川は長谷川。
「これより上流が源流になるという長谷川はこれでも一級河川なんだ」と、自慢される。
この長谷川を挟んで西側が桜井市の吉隠(よなばり)。
河川が境界になるそうだ。

その吉隠も隣村の榛原角柄にも旧暦閏年の庚申行事をされていたが、今年はまったくその様子は見られなかった。
もしかとすれば、だが、吉隠も角柄も講中は解散、若しくは中断されたのかもしれない。
そう思っていたが違った。
解散でなく旧暦閏年の庚申行事日が「大」の月に行われたようだった。
判別できた日はこの年の9月1日だった。

ちなみにヤド家のT家の玄関にヒイラギイワシを挿していた。
2月3日の節分風習は当家にもある。
たしか、3月23日にも訪れた榛原柳。

当地で初めてお会いしたY家もあったことを覚えている。
いつか訪ねて節分の習俗を尋ねてみたくなった。
(H29. 3.23 SB932SH撮影)
(H29. 4. 2 EOS40D撮影)