木津川市山城町平尾に鎮座する涌出宮で行われた女座行事の取材を終えて同町の上狛に向かう。
昨年の大晦日に貴重な砂撒き習俗を取材させていただいたお家にお礼に向かう行脚である。
上狛はかつて狛城の名で呼ばれていた環濠集落。
文明年間(1479~)に在所の狛日向守が居館・城郭として築城、要塞化した地区である。
寛保三年(1743)の記録によれば、当時の最大濠幅は6mにもなっていたそうだ。
今ではその面影は見られない濠幅。
濠は護岸工事によって整備されているので、一見は水路のように思えて仕方がない。
環濠内は宅地化。
近年においては近代的民家に建替えられていることも多くなり、昔のような風情を味わえる所も少なくなったようだ。
ただ、一部では今も農作業をされているお家もある。
水路は水嵩を調節する板を嵌め込む堰もある。
農水の利用もあったと思わる構造物もある。
そんな佇まいを拝見しながら歩いていた。
目的地の1カ所目は孫さんとともに砂撒きをしていたO家である。
3カ月を経ても砂撒きをした箇所がうっすらとわかる痕跡があったお家である。
呼び鈴を押して出てこられた家人に記念の写真をさしあげた。
積もるほどの話しもないのだが、上がってくださいと云われて座敷に案内される。
お部屋に入った途端になんともいえない初めて体感する香りに吸い寄せられる。
思わず円卓に置かれた道具に見入る。
素焼きのように思えた厚手の円形大皿はほうらく製。
ほうらくは豆を煎ったりする道具。
この日は豆でなく茶葉であった。
昔はもっと大きな皿でしていたが、この日は深さのある円形ほうらく皿。
刈り取った茶葉を燻していたという。
そうすることで部屋の臭みを消す。
しかも、香りの良い茶葉の匂いが部屋中に浸みこんでいる。
丁度そのときに入室させていただいたときの心地よさであるが、実は前夜に食べた料理はすき焼きだった。
部屋に美味しい匂いが籠っていたので、逆に茶葉で燻していたというのだ。
私の場合は前夜に食べていたすき焼きの場。
翌朝に目を覚ましてドアを開けた瞬間に、今朝は残り物のすき焼きにうどんを入れて食べたくなるほどに、すき焼きの匂いが大好物である。
ほうらくにある茶葉が黒いのは焦げた色。
お臼は抹茶にする葉をすっていたという道具を撮らせてもらった。
ご主人が云うには、縁も厚手の深い皿は香炉になる、だった。
貰い物の玉露を強火で燻す。
煙が出るほどに燻していたといいつつ、もう一品の香炉も拝見する。
これは、と思った陶器製の道具は、いりごま(煎り胡麻)を作る器だという。
登場した陶器製の胡麻煎り道具もほうらく。
何故か私も「ほうらく」と呼ぶことが多い。
一般的には「ほうろく」の呼び名だそうだが、どこでどうなったのか、存じあげない。
だが、どちらが正解なのだろうか。
ネットで調べた「世界大百科事典第2版」によれば、浅い皿型の厚手の土器が「ほうろく」。
充てる漢字が焙烙
。関西で云う“ほうらく”が正しい呼び名で、“ほうろく”は訛ったもの、であった。
ところがだ。
昔の戦術に用いられた「ほうろくだま」を充てる漢字は焙烙玉。
「ほうらくだま」とは云わなんだ。
訪れたこの日は彼岸の中日。
例年のこの日はぼたもちの名もあるおはぎを作っている。
もちろん作っているのは奥さんである。
たまたま孫が希望したから作った桜餅がある。
お点前のお茶に自家製の桜餅いただくことになった。
貰った茶葉は蒸して乾燥した。
それを茶臼で挽いて粉末状にする。
煎茶に比べて濃厚で深い味わいでいただける茶筅の抹茶。
無作法な私にそのことを伝えてくださる。
ぐいといっぱいいただく深い味。
奥さんが作られた茶につきものの和菓子が桜餅。
どうぞと云われていただいた桜餅のお味。
この桜餅の味わいは和菓子屋さんで販売されているような代物だった。
いや、むしろ和菓子屋さんが作ったものより私の口に合っているように思える味だ。
一般的に、とお断りしておくが、和菓子屋さんの餡子は濃い味。
美味しいことは美味しいのであるが、甘すぎて喉が詰まるような感じがする。
スーパーで売られている桜餅は安いが、もっとくどい甘さのように思えて仕方がない。
違いはどこにあるのか。もしかとすれば保存料の加減なのか。
その点、奥さんが作りはった桜餅の餡はくどくもなく、優しいのである。
桜餅は粳米でなく糯米。
蒸し加減が抜群な食感に甘さを感じる米の味。
そこへもって良い加減に漬けた桜葉がたまらんくらいに美味しい。
塩分含有量なんてどうでもいいと思ってしまうぐらいの良い味加減に桜葉の舌触り。
あかん、もう一個ほしくなる。
この桜葉は一年前に採取したものらしい。
そんなたいしたことありませんのやと云われるが、漬け具合も素晴らしいと賞賛したのはいうまでもない。
お部屋に愛荘町の造り酒屋が作って販売している「元旦初しぼり」のお酒がある。
どうやら蔵元は「藤居本家」のようだ。
お話しによれば、そのお酒の関係者は先ほどまで取材していた涌出宮(わきでのみや)の宮司さんだった。
ご夫妻ともども家族ぐるみの付き合いをしているという。
O家に繋がった縁に感謝する。
帰り際に尋ねた12月12日の逆さ護符。
奥さんの実家である山城町椿井。
当時はおばあさんがしていたと話してくれた。
(H29. 3.20 EOS40D撮影)
昨年の大晦日に貴重な砂撒き習俗を取材させていただいたお家にお礼に向かう行脚である。
上狛はかつて狛城の名で呼ばれていた環濠集落。
文明年間(1479~)に在所の狛日向守が居館・城郭として築城、要塞化した地区である。
寛保三年(1743)の記録によれば、当時の最大濠幅は6mにもなっていたそうだ。
今ではその面影は見られない濠幅。
濠は護岸工事によって整備されているので、一見は水路のように思えて仕方がない。
環濠内は宅地化。
近年においては近代的民家に建替えられていることも多くなり、昔のような風情を味わえる所も少なくなったようだ。
ただ、一部では今も農作業をされているお家もある。
水路は水嵩を調節する板を嵌め込む堰もある。
農水の利用もあったと思わる構造物もある。
そんな佇まいを拝見しながら歩いていた。
目的地の1カ所目は孫さんとともに砂撒きをしていたO家である。
3カ月を経ても砂撒きをした箇所がうっすらとわかる痕跡があったお家である。
呼び鈴を押して出てこられた家人に記念の写真をさしあげた。
積もるほどの話しもないのだが、上がってくださいと云われて座敷に案内される。
お部屋に入った途端になんともいえない初めて体感する香りに吸い寄せられる。
思わず円卓に置かれた道具に見入る。
素焼きのように思えた厚手の円形大皿はほうらく製。
ほうらくは豆を煎ったりする道具。
この日は豆でなく茶葉であった。
昔はもっと大きな皿でしていたが、この日は深さのある円形ほうらく皿。
刈り取った茶葉を燻していたという。
そうすることで部屋の臭みを消す。
しかも、香りの良い茶葉の匂いが部屋中に浸みこんでいる。
丁度そのときに入室させていただいたときの心地よさであるが、実は前夜に食べた料理はすき焼きだった。
部屋に美味しい匂いが籠っていたので、逆に茶葉で燻していたというのだ。
私の場合は前夜に食べていたすき焼きの場。
翌朝に目を覚ましてドアを開けた瞬間に、今朝は残り物のすき焼きにうどんを入れて食べたくなるほどに、すき焼きの匂いが大好物である。
ほうらくにある茶葉が黒いのは焦げた色。
お臼は抹茶にする葉をすっていたという道具を撮らせてもらった。
ご主人が云うには、縁も厚手の深い皿は香炉になる、だった。
貰い物の玉露を強火で燻す。
煙が出るほどに燻していたといいつつ、もう一品の香炉も拝見する。
これは、と思った陶器製の道具は、いりごま(煎り胡麻)を作る器だという。
登場した陶器製の胡麻煎り道具もほうらく。
何故か私も「ほうらく」と呼ぶことが多い。
一般的には「ほうろく」の呼び名だそうだが、どこでどうなったのか、存じあげない。
だが、どちらが正解なのだろうか。
ネットで調べた「世界大百科事典第2版」によれば、浅い皿型の厚手の土器が「ほうろく」。
充てる漢字が焙烙
。関西で云う“ほうらく”が正しい呼び名で、“ほうろく”は訛ったもの、であった。
ところがだ。
昔の戦術に用いられた「ほうろくだま」を充てる漢字は焙烙玉。
「ほうらくだま」とは云わなんだ。
訪れたこの日は彼岸の中日。
例年のこの日はぼたもちの名もあるおはぎを作っている。
もちろん作っているのは奥さんである。
たまたま孫が希望したから作った桜餅がある。
お点前のお茶に自家製の桜餅いただくことになった。
貰った茶葉は蒸して乾燥した。
それを茶臼で挽いて粉末状にする。
煎茶に比べて濃厚で深い味わいでいただける茶筅の抹茶。
無作法な私にそのことを伝えてくださる。
ぐいといっぱいいただく深い味。
奥さんが作られた茶につきものの和菓子が桜餅。
どうぞと云われていただいた桜餅のお味。
この桜餅の味わいは和菓子屋さんで販売されているような代物だった。
いや、むしろ和菓子屋さんが作ったものより私の口に合っているように思える味だ。
一般的に、とお断りしておくが、和菓子屋さんの餡子は濃い味。
美味しいことは美味しいのであるが、甘すぎて喉が詰まるような感じがする。
スーパーで売られている桜餅は安いが、もっとくどい甘さのように思えて仕方がない。
違いはどこにあるのか。もしかとすれば保存料の加減なのか。
その点、奥さんが作りはった桜餅の餡はくどくもなく、優しいのである。
桜餅は粳米でなく糯米。
蒸し加減が抜群な食感に甘さを感じる米の味。
そこへもって良い加減に漬けた桜葉がたまらんくらいに美味しい。
塩分含有量なんてどうでもいいと思ってしまうぐらいの良い味加減に桜葉の舌触り。
あかん、もう一個ほしくなる。
この桜葉は一年前に採取したものらしい。
そんなたいしたことありませんのやと云われるが、漬け具合も素晴らしいと賞賛したのはいうまでもない。
お部屋に愛荘町の造り酒屋が作って販売している「元旦初しぼり」のお酒がある。
どうやら蔵元は「藤居本家」のようだ。
お話しによれば、そのお酒の関係者は先ほどまで取材していた涌出宮(わきでのみや)の宮司さんだった。
ご夫妻ともども家族ぐるみの付き合いをしているという。
O家に繋がった縁に感謝する。
帰り際に尋ねた12月12日の逆さ護符。
奥さんの実家である山城町椿井。
当時はおばあさんがしていたと話してくれた。
(H29. 3.20 EOS40D撮影)