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読書 桜井裕子「性教育の暴走」

2010-04-22 10:56:57 | 読書

         
 セックス奨励教育の実像という副題のついた性教育を厳しく批判するノンフィクションである。身辺に幼児や小・中・高生のいない私にはまったくの初耳に属する。なんともマンマンデーの日々を送ってきたことか。
 小学一・二年段階からの性教育。この本の例によれば、「せっくすのえほん」がある。
<おとうさんの からだには おちんちんが ついていて おとこ。おかあさんの からだには あかちゃんが でてくるあながあって おんな>という書き出しの解説がついている。しかも、性交の図もお母さんが下で、お父さんが上になって性器の挿入までリアルに描いてあり、二人がキスまでしている。著者のコメントには、まだ、読み書きも十分に出来ないような子供たち、自分の身の回りのことさえ出来ないような六・七歳の子供たちに、果たしてセックスや性器を教える必要があるのだろうか。これが「発達段階に応じた性教育」と言えるのだろうか。
 さらに、吹田市教育委員会の中学校性教育副読本「きらめく青春─思春期を迎えて─」にはつぎの記述があると言う。
 <性交は愛を交し合うことで、二人にとってとても暖かく、親しい気持ちになる、ステキな営みです。男の人と女の人がキスをする時などに、優しく触れ合うと、とでも嬉しく、心地よさが次第に高まり、お互いにもっともっと近づきたくなります。
 そういう気持ちは体の中で性的な興奮となり、体にいろいろな変化をもたらします。男の人のペニスは勃起し、女の人もワギナから分泌液が分泌されます。ペニスをワギナにインサート(挿入)し、男性の性的な興奮が最高に高まると、精液がペニスからワギナの中へ放出されます(射精)。
 そして、お互いリラックスした、暖かく親密な気持ちになります。性交は二人にとって、とても大切な、とっておきのコミュニケーションなのです。「性交」は、性器の結合だけに限らないで、手などでお互いの体に触れ合うことも同じようにとらえて、広い意味で「性的ふれあい」であると考えられています>
 著者の言う「性交のすすめ」としか受け取れない。こういう書き方でいいのか。もっと端的に書けるはずだ。書いた人が男か女か知らないが、若い肉体を思い浮かべてスケベな気分で書いたとしか思われない。
 これを読んだ中学生が無視するとは想像できない。女子を捕まえてキスしようと迫り、おっぱい触らせて! 俺のも触っていいよ。なんてふざけあっても文句は言えまい。
 上記の文章を少し崩せば、大人の濡れ場になる。こんな言い方よりも、この本の著者と元桑名市民病院副院長中山尚夫の一問一答がなによりも意味があるように思われる。
 この中で女性の膣の働き、感染症の恐さ、コンドームの不確実性など、こちらの方こそ教えるべき題材に思える。
 膣の持つ機能のすばらしさは、性交によって膣には精液というたんぱくが入る。これは女性の体にとっては、異物、異種たんぱくで免疫機能に対して少なからぬ負担になる。それに、ペニスは消毒もしていない。そんなペニスを受け入れても病気にならずにいられるのは、膣にいるデーデルライン桿菌(かんきん)という善玉菌によって膣内を強い酸性環境に保ち雑菌の侵入を防いでいるからだという。
 そのほかにも激しい動きやお産の時の猛烈な伸展にも破れない構造、精液や細菌、ウィルスなどからも免疫機能で守られている。神様がくれた宝物だそうだ。これを知ると女性、とりわけ母性に敬意を表したくなるはずだ。これらを生徒に教えれば、お互いを尊重しあうのではないか。
 ある統計によれば、女子高校生の半分ぐらいは、卒業までに処女を捨てているという。どうも今時の性教育の悪い面が現れているような気がする。私の娘が早々とセックスに耽っていれば、強烈に怒り狂うのは確実だ。
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