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映画「リンカーン弁護士The Lincoln Lawyer ’11」劇場公開2012年7月

2013-01-19 16:39:05 | 映画

                 
 アメリカの自動車メーカー、フォード・モーターズの高級車アブラハム・リンカーンから名づけたリンカーン・タウン・カーのナンバー・プレートには、「NTGUILTY(無罪)」とある。その後部座席を事務所代わりにしている刑事弁護士ミッキー・ハラー(マシュー・マコノヒー)の顧客といえば、麻薬の売人やけちな犯罪者たちが多い。
 そんな彼らを弁護するハラーに、検事や刑事たちからは蔑みの視線を浴びる。しかし、ハラーは次のように自己弁護をする。

 「社会の多くの人間が私を悪魔と考えているが、彼らは間違っている。私は油で汚れた天使なのだ。私こそまさに真のロード・セイント(市井の聖人)だ。私は必要とされ、望まれている。両方の側に。私は機械の中のオイルなのだ。私はエンジンをかけ、回転させるギアを作動させる。システム(司法制度)のエンジンを動かし続けるのに手を貸している」とは言っても稼ぎが多いほうがいいのは当然だ。

 離婚した元妻を連絡係として雇い、別居中の検事をしている妻マギー・マクファーソン(マリサ・トメイ)との娘の養育費、それにリンーカーンの運転手アール(ローレンス・メイソン)の給料など、稼ぎがいくらあっても邪魔にはならない。

 そんな時、なじみの保釈保証人から美味しい話が持ち込まれる。手広く住宅販売を営む会社の息子ルイス・ルーレ(ブライアン・フィリップス)が、女に暴行を加えたとして傷害容疑の事件だった。保釈保証金は、少なくとも100万ドルは確実だった。

 この刑事弁護士ミッキー・ハラーのせこいところは、随所に現れる。この保釈保証金をルーレ家は所有不動産を売って金を作ると言ったが、ハラーは「時間がかかる」ということで保釈保証人から借り入れさせる。これも暗黙の出来レースだ。

 さらにルーレの顧問弁護士と二人で立っているところへ、フリーのテレビ・カメラマンが撮影し始める。金持ちのルーレ家には迷惑なことだ。ハラーは、カメラマンを呼んでビデオ・テープを1000ドルで買い上げる。勿論、顧問弁護士に「経費でいいな?」の言葉も忘れなかった。
 後でそのカメラマンに200ドル、自分は800ドルの分け前となった。前もって仕組んだ芝居を演じたハラー。

 暴走族相手にもたかるハラー。収監中の暴走族の一人ハロルドに「弁護料を払え!」と迫りながら、判事に証人を探す必要があるから裁判の延期を申し立てる。
「いつまでだ?」と判事。
「わかりません」とハラー。判事は検事に聞くと、検事は「いいよ」との返事。ハロルドはいつまでたっても豚箱から出られない。

 ロサンジェルスの輝く陽射しを浴びながら、目的地に向かうミッキー・ハラー。やがて一団の暴走族に囲まれる。エディという暴走族の頭目がハラーの窓に肩肘をついて「ハロルドに聞いたぞ。裁判を遅らせていると」
「弁護料がまだだ」とハラー。
「5000ドル 払ったろ」
「とっくにない、半分は航空写真のプロに渡した。ハロルドの農場へ麻薬取締局が低空飛行で侵入したと証言してもらう。そのためには彼をニューヨークから呼んでホテルなども手配しないと……契約を交わしただろう? 資金が足りない」平然と言うハラー。
「また、5000払えと?」
「1万だ。飛行機はビジネス、ホテルは一流」
「ハロルドはいいクサを育てる。分かるだろ?」
「分かりたくもない。気に入らなきゃ公選弁護人に頼め。腕は落ちるだろうが……」
エディは、一万ドルの入った封筒を差し出す。

 再び陽光に囲まれてリンカーンは海原を行く船のようにゆったりと走る。運転手のアールが口を開く。
「その証人を迎えに行きますか?」
「誰も来ない。写真のプロなら地元にいる」
「なるほど、あなたならストリートでもやっていける」
「今だってストリートを走ってる」ハラーは、そう言って微笑む。

 ところが美味しい話にはどこか胡散臭くぼろ儲けなんてとんでもない。これが巧妙な罠と気づいたハラーがいかにしてその苦境から逃れるか。俄然エンタテイメント溢れる展開になる。ハラーの調査員フランク(ウィリアム・H・メイソン)が殺される。それはハラーの銃だった。ハラーは容疑者とされるが、銃が見つからないことには拘束できない。

 一方ルーレの裁判では、ハラーの妙手が的中するが、決して褒められた手段ではない。そしてフランク殺害の意外な結末が待っていた。

 私も好きなアメリカの人気作家マイクル・コナリーの同名の原作を映画化したもの。舞台がロサンジェルスでマイクル・コナリーは、作中に実在するバーやレストラン等を書き込んでいて、観光旅行に使えるなと思ったことがある。映画としてはテンポもいいし楽しめる作品だ。
             
             
             
             
             
             
             

監督
ブラッド・ファーマン出自不明

キャスト
マシュー・マコノヒー1969年11月テキサス州ウバルデ生まれ。’96「評決のとき」が飛躍の足がかりになった。
マリサ・トメイ1964年12月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。’92「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を受賞。
ブライアン・フィリップス1974年9月デラウェア州ニューキャッスル生まれ。
ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州生まれ。
ローレンス・メイソン ニューヨーク市ブルックリン生まれ。