この映画の監督は、韓国生まれで養子としてフランスに渡った女性のウニー・ルコント。前作、自身の体験をもとに養子をテーマとした「冬の小鳥」で注目された。本作は本人の言によれば、養子3部作の2作目ということになるらしい。
理学療法士の30歳のエリザ(セリーヌ・サレット)は、自身の出自を知りたくて夫をパリに残し、息子ノエ(エリアス・アギス)を伴って生まれ育ったダンケルクに居を移す。しかし、病院で名前も告げずに出産できるフランス特有の「匿名出産」という制度が行く手を阻む。匿名出産のあと養子に出された人が自分の出自を知りたくなっても簡単でないというこの制度の欠点と言われる。 が、中絶を防ぎ尊い命が助かることも無視できない。
そんな中エリゼが求める生みの親は手を伸ばせば届くところにいた。どうやらシナリオは、生み親が近くにいるという設定が初めにあってストーリーは後付けという印象。
したがって一人息子のノエとダンケルクへ行き、夫婦は不和としてある。この夫婦不和の原因も分からない。想像してくれというのかな。説明的なセリフや場面も必要と思うのでやや不満。偉そうなことは言えないが、もう少し工夫すれば驚きの出会いもあったのではないか。
それから突然の場面転換で戸惑ったりする。オープニングが一例としてあげられる。列車か電車だろう窓の外の景色が流れ座席のエリザ役のセリーヌ・サレット(この人なかなかいい顔をしている)が思いに耽っている表情がずーっと続きトンネルに入ったと思ったら、突然どこかの部屋で私服の女性と対面している場面。
日本人的な風貌のその人が「いい結果ではありません」なんて言ってる。二人のやり取りからエリザの生みの親の確認は取れたが、その親が娘の存在を否定していることが分かる。普通こういうときは裁判所かお役所か観るものに理解を助ける映像を挿入することがあるが、随所にこういう余計なもののカットが多い。まるでビフテキをドンとお皿につけ合わせもなしで出された気分になる。
ただエンディングはよかった。生みの親アネット(アンヌ・ブノワ)と公園のベンチで語らうが、何年も一緒に生きてきたようで涙のないシーンだった。
監督ウニー・ルコントは、1966年、韓国ソウル生まれ。9歳のときに養護施設からフランス人の家庭に養女として引き取られた。パリの服飾専門学校でドレスデザインを学び、学生時代から映画の撮影に参加。オリヴィエ・アサイヤス監督「パリ、セヴェイユ」(91年)などに出演し、衣装デザインのアシスタントを経て、06年に『冬の小鳥」脚本を執筆。09年にフランス・韓国合作作品として完成させる。第62回カンヌ国際映画祭の特別招待作品となり、東京国際映画祭ほか数々の賞を受賞という経歴。
キャスト
セリーヌ・サレット1980年4月フランス、ボルドー生まれ。
アンヌ・ブノワ出自不詳
エリエス・アギス出自不詳
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