悪徳警察官を摘発するロンドン警視庁AC-12(汚職捜査班)を主体として描くクライム・サスペンス。警察官を監察する部署を核としたドラマは今までになかった。警察官を摘発する嫌われの部署だからだ。
例えば、中央署のトニー・ゲイツ警部(レニー・ジェームス)がカフェでコーヒーを飲みながら、美人の白人女性と歓談しているとき、窓の向こうで若い男が子供連れの女性に暴行を加えているのを見て飛び出して行って取り押さえた。それを見ていたカフェの女性従業員がせめてもの敬意としてコーヒー代金をトニーに返金した。
後日、AC-12の訪問を受けて業者から無料の役務を受けた時、内務省規定で報告しなけれなならない。その規定違反だという注意なのだ。ただ報告すればいいだけのことながら、世間の常識ではコーヒー一杯にそれほど神経は使わない。トニー警部は苦々しく思ったことだろう。
が、大の男二人ヘースティングズ警視(エイドリアン・ダンバー)とアーノット巡査部長(マーチン・コムストン)がわざわざ出向くということは、何か裏がある。
シーズン1からシーズン5まで、頭が切れて狡猾な悪徳警官に怒りを覚えながらドラマを追うことになる。早い物語の展開とともにシーズン2の女性警部リンジー(キーリー・ホーズ)とシーズン4の同じく女性のロズ警部(タンディ・ニュートン)の悪徳ぶりには舌を巻く。
全てにおいて十分練られた構成は見応えは十分ではあるが、事件現場に早々に現れたりするAC-12には、果たしてそれが任務なのかと疑いたくなる。本来の監察業務から逸脱している。といって本来の業務に特化するとドラマが面白くない。架空のロンドンと思うのがいいのかも。
それにしても階級制度のイギリスの面目躍如といったところがある。何しろ尋問は上級職が主に質問をするが下級職は上級職の許可を得なければならない。尋問前の事情を聞く場面でヘースティングズ警視と並んでアーノット巡査部長が質問すると「上級職から質問してくれ」。正式の尋問でないから誰が聞いても構わないのに嫌味な反論が返ってくる。
アメリカの映画やドラマでこういう場面を観たことがない。このドラマは、階級制度をに皮肉っているのかもしれないが、観る人に嫌なイメージを与えかなねない。イギリスに住もうとは思わなくなる。
ではあってもシーズン5までくると思いもつかない展開が待っている。シーズン5の終わり方から見てシーズン6がありそうだ。三人のメインキャスト、ヘースティングズ役のエイドリアン・ダンバー、アーノット役のマーチン・コムストン、フレミング役のヴィッキー・マクルアのうちシーズン5になるとマーチン・コムストンは、頬がふっくらとして少し太った感じだし、ヴィッキー・マクルアは、逆に頬がこけたようだ。
シーズン1が2012年に制作されてマーチン・コムストンは、28歳。ヴィッキー・マクルアは、29歳。その5~6年後にシーズン5が制作された。彼ら二人は、30代中ごろで俳優としては一番いい時期ではないだろか。 このドラマの白眉は、尋問場面ではないだろうか。両者のせめぎあいは、見応えがある。それにしてもロンドンは、カラッと晴れた場面がないなあ!
キャスト
マーチン・コムストン1984年5月スコットランド生まれ。
ヴィッキー・マクルア1983年5月イギリス生まれ。
エイドリアン・ダンバー1958年8月北アイルランド生まれ。
レニー・ジェームス1965年10月イングランド生まれ。
キーリー・ホーズ1976年2月ロンドン生まれ。
タンディ・ニュートン1972年11月ザンビア生まれ。