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海外ドキュメンタリー「ガブリエル事件~奪われた小さな命」2020年Netflixリミテッドシリーズ

2020-03-10 16:16:11 | 海外テレビ・ドラマ
 アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス郡パームデールで、それは起こった。

 「息子が浴槽で倒れた」という911へ救急通報があった。心肺停止状態を救急隊の蘇生処置でアンテロープバレー救急病院に搬送されてきた。その様子をベテランの看護師が語る。
 「頭蓋陥没骨折、喉が焼かれ、顔はアザと切り傷だらけ。目の周りやペニスにも。足は引きずられたような傷、足首には縛られたような痕、肺と鼠径部にはエアガンに使うBB弾が撃ち込まれ、体じゅうにタバコの火を押し付けられた痕が見られた。こんな状態は初めて」

 その子の名前は、ガブリエル・フェルナンデス8歳。救急病院から小児病院へ移された後、ガブリエルは死亡する。母パールとその恋人イサウロ・アギレが逮捕される。人種的には、名前からもヒスパニック系といえる。

 この事件がきっかけでお役所のご都合主義と無能ぶりが明らかになる。そのお役所とは、児童家庭サービス局(DCFS=Department of Children and Family Services)なのだ。ここが十分な機能をはたしていれば、ガブリエルが死ぬことはなかった。
 ガブリエルが通っていたサマーウィンド小学校の女性担任教諭の証言からも明らか。

 DCFSの責任者が「各ソーシヤルワーカーが持つ案件は、30件にもなる。手が回らないのが実情だ」というのも理解できるが、納得はできない。語られる証言からは、真剣さが見られないからだ。地方検事は、DCFSの職員数人を起訴した。

 虐待死させたイサウロ・アギレとパールを起訴するのは当然として、陪審員裁判が行われ、陪審員は第1級殺人罪か第2級殺人罪のどちらを適用するのか評議する。第1級殺人罪は、死刑か終身刑のどちらかになる。

 陪審員の評決は、「アギレに対しては第1級殺人罪で有罪」だった。ここロサンゼルスでは、量刑まで陪審員が評決する。結果は、「死刑」宣告だった。

 こういうドキュメンタリーを観ていて、当然わが日本に思いをいたすことになる。まだ記憶に残り多くの人に衝撃と憐憫で心を震わせた「船戸結愛ちゃん事件」がある。船戸雄大とその妻優里が犯した罪で、事件名が「保護責任者遺棄致死、傷害、大麻取締法違反被告事件」でどこにも殺人という文字は見当たらない。

 2019年10月15日東京地裁は、検察の求刑18年に対し懲役13年だった。軽いのか重いのか? 庶民感覚では軽いと受け止める人が多いのではないだろうか。いわゆる専門家では重いらしい。それは庶民は殺人事件と捉えているが、専門家たちは事件名に基づいた判断だからと言える。

 いずれにしても、犯人二人アギレも船戸雄大も心が壊れているのは確かだ。なんの反応も示さないという法廷での態度も共通している。日米の判決を比較するとなんと隔たりの大きいことか。

 このドキュメンタリーで、「西欧諸国で死刑制度があるのはアメリカ合衆国だけだ。いうなればアメリカは、慈悲の国でもあり報復の国でもある」日本もかつては、さらし首や市中引き回しのひどい刑罰もあったが、いつの間にすましたお人よしになったのか。

 アマゾンが運営する映画サイトIMDb(Internet Movie Database)には書き込みがあり、そこには「こういう事態を招く責任も私たちにもある。より良い解決策を見出す必要がある」社会全体で支えていこうという意見に元気づけられる思いがした。

 これらを制作したのは、プロデューサー・脚本家のブライアン・ナッペンバーガーとローウェル・バーグマンの二人。