EJI(Equal Justice Initiative平等な正義イニシアティブ)は、広く知られている公益弁護士であり、「Just Mercy」のベストセラー作家であるブライアン・スティーブンソンによって1989年に設立された。
EJIは、非合法の有罪判決、不当な判決、刑務所で虐待された人たちとか、死刑と過度の刑罰に異議を唱える仕事をしている組織。
この映画は「Just Mercy」を原作としていて、無実の死刑囚通称ジョニーDと言われるW・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)の解放に多大の尽力を惜しまなかったブライアン(マイケル・B・ジョーダン)の真実の物語である。
1987年11月1日アラバマ州モンロー郡で、18歳のロンダが首を絞められた挙句、射殺された遺体がクリーニング店で発見される。警察は非常線を張る。森で木を伐採して帰路についたマクミリアンが逮捕される。
1964年7月2日公民権法が制定されたとはいえ、法律上の人種差別がなくなっただけで20年後も人種差別は厳然と存在していた。ハーバードを出たばかりの若き黒人のブライアンにも重くのしかかる。白人女性のエバ(ブリー・ラーソン)の助力も得てようやくジョニーDを解放することができた。
この映画には、微妙な感情の交錯をさらりと投げ込まれている。刑務所にマクミリアンを訪ねたブライアンを、検査と称して丸裸の侮辱的行為を行った看守。その看守が黒人の死刑囚の刑執行場面に立ち会ったのち、マクミリアンや家族に目立たないが温情をみせる。
また、マクミリアンの無実が立証されていくにつれ、表向きは否定的な態度の検事もやがてブライアンの立証を認めることになる。
さらに、マクミリアン解放を勝ち取ったブライアンに、祝福の笑顔と肩を叩く仕草でエバは伝える。
これら一連の行為には、時代の微妙な空気が反映されている。ブライアンが最初にマクミリアンに会ったとき、マクミリアンはやや懐疑的だった。「黒人のくせにハーバード? しかも俺を助ける?」
黒人にもいろいろあって金持ちの黒人もいる。ブライアンを金持ちの黒人に思ったのかもしれないが、貧しい生い立ちを語った時、初めて信頼の表情がマクミリアンに表れる。
黒人のコミュニティも白人のコミュニティも、そこに生きる人たちは周囲の目を気にしているのは確かだ。ブライアンを裸にした看守も、控えめな親切心だし、ブライアンの勝利を祝うエバも、ハグで応えたいが微笑みだけで、当時としては白人と黒人のハグはあり得ない状況だったのかもしれない。
「人種差別問題」は、アメリカにのしかかる巨大な岩のようなものなのだ。取り除くのは容易ではない。コロナ禍の中でも白人警官の黒人容疑者への死に至らしめる行為が、全米にデモの風を吹かせた。背後に左翼系の扇動分子がいると言われ、黒人の警察官や検事、弁護士もいるが、白人と黒人との間にはまだまだ高い壁がそびえているようだ。
マクミリアンを演じたジェイミー・フォックス。彼の映画を一度も観たことがないので、ジェイミー・フォックスだと気づかなった。それでも彼の演技が画面からほとばしるのは、2004年「Ray/レイ」でアカデミー賞主演男優賞、同年「コラテラル」で助演男優賞受賞の実力派の面目なのだろう。
さらにエバを演じたブリー・ラーソンも、2015年「ルーム」でアカデミー賞主演女優賞受賞者である。
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