アウトドア派でクライマーのアーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)。岩の割れ目を降りるとき、手にかけた岩が滑り落ちて右手がその岩と岸壁に挟まれてしまう。この岩は頑固でよそよそしくふて腐れているようにびくともしない。さあ、困った。茫漠たる広野に置き去りにされたと同様に偶然でも人と会うことは絶望的だった。
アーロンは一人暮らしで母からの電話にも出ないし、ガールフレンドの電話にも出ない。留守電任せで車に飛び乗り、夜の国道をブルー・ジョン・キャニオンへ向けてアクセルを踏んだ。
こういう場面は私の大好きなシーンで、私も登山に熱中していた頃はアーロンと同様にナイトランで目的地に向かったものだ。何が良いかといえば、車に一人で煩わしさもないし、好きな音楽を聴きながら、がら空きの国道を疾駆する快感は仕事の疲れを癒してくれる。
ガール・フレンドといちゃつくのもストレスを癒してくれるが、山の持つ自然の霊気にはそれらを超えるものがある。
ブルー・ジョン・キャニオンへの入り口には車2台とテントが二張り。その間に車を乗り入れ、車中で仮眠。これも私のやっていたこととそっくり。翌朝、キャニオンを目指すがここが私とは大違い。
キャニオンまで35キロを起伏のある広野をMTBでぶっ飛ばす。思わず「ああ、いいなあ!」とため息が出る。私にはもう出来ないことだから。
この映画を技術論的に見るのもいいだろう。でも私には、どうも過去の憧憬が甦ったような気分になったらしい。それに気に入ったセリフがあった。アーロンは、ソニーのデジカメ、キャノンのビデオ・カメラを持ってどこでも何でも撮る癖がある。ラストで切り離した腕が岩に挟まった様子をデジカメで撮るぐらいだからね。
手首から先が青く変色して壊死の様相が見える。レザーマンらしき万能ナイフで腕を斬るが、まったく斬れない。死ぬかもしれないと覚悟を決めてビデオにコメントを入れる。
「決して中国製のナイフは買わないように。これは母からのプレゼント」かつての安かろう悪かろうの日本製品を思い出させる。いまや世界中で安くて悪い製品の代名詞が「中国製」になったのかも。
そして、おろそかにしてはいけないのが、行き先を告げずに出かけることだ。いつ、何処へ、そしていつ帰る。もし、谷間に落ちて途方にくれたくなければね。私にとって青春の血がたぎった映画だった。
キャニオンへの入り口
さて、出発
切り離した自分の腕をパチリ!
またよろしくです♪