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海外ドラマ「ザ・ナイト・オブ(……の夜)」

2019-08-28 17:12:18 | 海外テレビ・ドラマ

                 

 2016年7月アメリカのケーブルテレビ局HBO(Home Box Office)で放送され称賛を受けた作品。日本のスターチャンネルで放送されたときは、「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」となっている。DVDの発売はなく、アマゾン・プライムで観るしかない。

 アマゾンでは原題の「The Night Of」になっている。タイトルをThe Night Ofにしたのは、観る人によって視点が違うからだろう。殺しの夜、忘れえぬ魅惑の夜、禁断の夜、暗転の夜、忘却の夜など思いつける。

 パキスタン系の学生ナズ・カーン(リズ・アーメッド)は、父親のタクシー車を無断で持ち出し友人のパーティに行く途中、乗り込んできたアンドレア(ソフィア・ブラック=デリア)が「海に行って」とあいまいな行き先を告げるが、走り回るうち川でもいいということでハドソン川畔で二人はドラッグを吸引、そのままアンドレアのアパートに転がり込んだ。そこでもアルコールとドラッグ。行きつく先はめくるめく快楽のセックス。

 疲れ果ててどういうわけかキッチンのテーブルで目を覚ましたナズ。アンドレアに帰宅を告げにベッドルームへ。そこで見たものは、刺し傷がいっぱいの血まみれで死んでいるアンドレアがいた。動転したナズは、急いで現場を後にした。その様子を向かいのアパートから男が眺めていた。

 注意が散漫になったナズは、左折禁止を左に回ってパトカーの鋭い警笛に止められる。こういう形で物語が始まり、延々8話約8時間の細かい描写も飽きさせない。

 警察の鉄格子の留置場に座るナズを見た弁護士のジョン・ストーン(ジョン・タトゥーロ)が助けの手を差し伸べる。たった一人のしがない弁護士ストーンは、足の疥癬で寒いのに素足でサンダル、それによれよれのコートという出で立ち。警察署内では有名人。殺人事件のあったアパートを実際に見て回り、飼い主を失った一匹の猫が目に留まる。猫アレルギーのストーンには飼えないので、処分施設に持ち込んだ。しかし、100日後に殺処分されると聞き、猫を引き取る。そういう心優しき男でもある。

 この二人ストーンとナズが主軸となって物語は回転していく。ナズは、未決拘留先としてライカーズ島にあるライカーズ刑務所に送られる。ここは短期禁錮刑受刑者らを収容していて、ナズが入れられた区画を牛耳るのはフレディ・ナイト(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)。フレディ・ナイトは、独房から殺しを命じることが出来る実力者。早速ナイトに呼ばれ「手下になれ」を「考えさせてくれ」の返事の答えは、ナズのベッドが焼かれる。否応なくナイトの手下になったナズ。

 時間がたつにつれて、ナズは頭を剃り上げ両手をズボンに突っ込み肩を怒らせて闊歩する。手下になったおかげで独房も手にする。(こんなのが囚人で出来るのだろうか。そういえば看守はすべて黒人だった。刑務所の実態がこういう風なのだろか。気にかかる)勿論、ドラッグの吸引は日常茶飯事。あのおどおどとして実直な若者の姿はもうない。

 ナズの裁判は不利な状況から始まる。アンドレアが殺された時間帯に同じアパートにいたこと、目撃者の証言、しかも血の付いた犯行に使われたと思われるナイフを持っていたことだ。しかも手のひらにナイフの傷もある。ナズは、自分が殺していないから証言すれば事態の打開ができるのではというが、ストーン弁護士は危険だからやめたほうがいいという。それを押し切って証言台に立った。

 女性検事の追及は容赦がなかった。セックスに対する質問は微に入り細を穿つという返事に困ることもある。傍聴席には両親も顔を見せているからなおさらだ。被告席のストーン弁護士の顔がこわばる。陪審評議は翌日に持ち越される。

 翌日の法廷で陪審員長は、「評決不能です。有罪・無罪が6対6で打開できない」判事は了解して検事に「どうしますか、陪審員を改めて再審を」女性検事は被告席の被告と弁護人に目をやり、おもむろに「これ以上の訴追を辞退します」こうしてオズは晴れて自由の身となった。

 しかし、世間の目は冷たい。家族との関係も何故が冷たい隙間風が吹いているようだ。そりゃそうだろう、無罪になっていないし、行きずりの女とドラッグまみれのセックスで気が付けば女は死体、となれば笑顔で握手を求めたりはしない。

 行き場のないオズは、ハドソン川畔でキュートなアンドレアを思い描きながらコカインを吸引する。オズが自由の身となりストーンは、酒を飲みながら可哀そうな生き物のテレビを観ている。弁護依頼の電話が鳴る。コートを着て外へ出る。猫が部屋から部屋へ移動する。(猫アレルギーのストーンも部屋に閉じ込めずに自由を与えた。オズの自由の身と重なる)

           
           
           
           

 その映像に重ねてセリーヌ・ディオンが歌う2000年のシングル曲「The First Time Ever I Saw Your Face」が流れる。なかなか余情のあるいいエンディングだった。この曲を選んだのは、多分オズの最初のキスでありセックスで、彼はそれを忘れがたい記憶として留めておきたいという思いがあるからだろう。それでは、「The First Time Ever I Saw Your Face」を聴いてください。私なりの意訳を下記に

 初めて見たあなたの顔
 目の中に太陽が昇り
 月と星はあなたの贈り物
それは私の愛とともに夜の空に

初めて味わうあなたとのキス
胸苦しくなるほどの愛おしさ
小刻みに震える心臓は小鳥のよう
それは私の愛が求めたもの

 初めてあなたと体を横たえた
私の心臓とあなたの心臓が重なる
そこで見たあなたの初めての顔、顔

 Celine Dion-The First Time Ever I Saw Your Face With Lyrics   

監督
スティーヴン・ザイリアン1953年1月カリフォルニア州生まれ。本来脚本家ながら本作で監督も。

ジェームズ・マーシュ1963年4月イギリス、イングランド生まれ。映画作品2014年「博士と彼女のセオリー」他。

キャスト
ジョン・タトゥーロ1957年2月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。1991年「バートン・フィンク」でカンヌ国際映画祭男優賞受賞。2004年「名探偵モンク」でゲスト出演ながら、テレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞受賞。

リズ・アーメッド1982年12月イギリス、イングランド生まれ。本作でエミー賞の主演男優賞受賞。

マイケル・ケネス・ウィリアムズ1966年11月ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン生まれ。

ソフィア・ブラック=デリア1991年12月ニュージャージー州生まれ。


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