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地味なラブ・ストーリーである。それに人間誰でも冷徹な打算に救いを求めることもあるだろう。この映画がそれを示してくれる。
レナード(ホアキン・フェニックス)は、失恋して入水しようとしたが、死の恐怖が彼を水面に浮上させた。ずぶ濡れのまま自宅に帰って知らされたのが、父のクリーニング店を買いたいという家族の来訪だった。
レナードの両親は、躁うつ病の息子の行く末を案じていた。何かと気持を切り替えさそうと苦心している。親たちは、娘や息子のパートナー探しに頭を痛める。この来訪もその一環だった。
その家族の中にサンドラ(ヴィネッサ・ショウ)もいてレナードの部屋での四方山話からお互いに意識し始める。そしてある日、同じアパートに住むミッシェル(グウィネス・バルトロー)とも知り合う。
ミッシェルは、法律事務所の事務職員で共同経営者の男の愛人だった。ミッシェルにアパートの屋上へ呼び出され、相手の男が離婚に踏み切れず自分は中途半端だと悩みを打ち明けられる。その時、レナードは愛を告白する。
サンドラとも肉体関係に発展しているが、ミッシェルがサンフランシスコに友人がいるからそちらへ行くという。レナードは一緒に行くと言って航空券の手配も済ませ、アパートの中庭でミッシェルを待つ。
遅れてやってきたミッシェルは、恋人が家庭を捨て結婚を申し込んできたという。サンフランシスコへはいけない。この言葉にショックを受けるレナード。
夜のコニーアイランドのボードウォークで用意していたダイアモンドの指輪のケースを砂浜に放り投げた。波打ち際まで行ってまたもや入水を考えたのか暗い海を眺めていると、いつ落ちたのかサンドラからプレゼントされた手袋に気づいた。それを拾い上げ一度は捨てたダイヤモンドの指輪のケースもポケットにしまった。
家に帰るとパーティが行われていて、サンドラもいた。彼は無言でそのケースを渡した。ミッシェルもレナードも言ってみれば自分勝手な見本みたいなもの。しかし、彼らを悪しざまに非難するのもおこがましい。人間の共通する欠点だし、その欠点があるからこそ生きていけるのかもしれない。
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監督
ジェームズ・グレイ1969年生まれ。
キャスト
ホアキン・フェニックス1974年10月プエルトリコ生まれ。「スタンド・バイ・ミー」に出ていたリヴァー・フェニックスの弟。’05「ウォーク・ザ・ライン/君にづづく道」でアカデミー賞主演男優賞にノミネート。
グウィネス・バルトロー1972年9月ロサンジェルス生まれ。’98「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー主演女優賞を受賞。
ヴィネッサ・ショウ1976年7月ロサンジェルス生まれ。
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