猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

マンガ日本の古典 23 安彦 良和 「三河物語」

2009年05月01日 12時51分37秒 | マンガ家名 やらわ行
      ↑ 中央公論新社 1991年2月25日 初版 文庫版

 このシリーズでは女性作家の紹介が続いたので、男性作家もご紹介します。シリーズの中には 「源氏物語」 を長谷川 法世さんが変わった趣向で描いていたりして、まだまだ楽しい作品がいっぱいあります。


 原作の 「三河物語」 は講談・歌舞伎作品で知られる徳川三代に仕えた 大久保 彦左衛門こと 大久保 忠教 (おおくぼ ただたか) 1560年-1639年 という幕府旗本が自家用に書いた本。江戸時代のベストセラーだそうだ。しかも版木で印刷したものでなくすべて手で写したものが流布したそう。

 講談や歌舞伎芝居の中では「天下のご意見番」などと持ち上げられ、魚屋の 一心 太助 とのコンビで3代の各将軍にもズケズケと意見を言ったというのは後世の創作らしい。
 ただ浪人を食客として多数養ったり、筋の通らない話には命を賭けても抵抗するなど、「三河物語」 の中のエピソードを見ると頑固な義侠の士というのは本当らしい。又、八男ということでけして嫡流の出ではなく、大久保家の本家も長兄の子が継いでいる。

 原作は絵師の 安彦 良和氏 があとがきで言っているように、家康公の合戦譚や自分の一族の活躍自慢、太平の世になってからの一族の不遇振りの愚痴など、今の我々が読んでもさして面白くないことがつづられており、どうマンガにするか困ったそうだ。
 ところが実在の太助が彦左衛門の草履取りをしていたということを知り、安彦氏 はそれを手がかりにしてこの作品を描ける ! と思ったそうだ。
 又、港区白銀 立行寺 に彦左衛門の墓と背中合わせに 一心 太助 の墓がある。
 
 原作の 「三河物語」 にも太助のことはなにも書いていない。しかしこの作品では、侍の主人へのご奉公の理不尽さを織り込みながら 太助 から見た彦左衛門を描いている。しかも少年マンガ雑誌で連載されてもおかしくないような面白い作品に仕あげているのだ。ほとんど氏の創作作品と言っても良い。
 この中では剛直、強情、気骨まんまん、しかし稚気あふれる彦左衛門や 侍になりたくてなりきれなかった 太助 が生き生きと動いている。

 「機動戦士ガンダム」 のキャラクターデザインと作画ディレクターを担当したことで有名な 安彦氏 だが、私がマンガ喫茶で読んだ少ない氏のマンガ作品からでも骨太の作品作りはわかり、マンガ作家としても評価の高い人だ。
 これも、氏の作品の中ではあまり有名ではないのがもったいないと思う程、しっかりした作品だった。ガンダムを知らない子供たちにも図書館などで長く読まれる作品としたら、かえっていいかもしれない。

 これを読んで改めてマンガ作家としての 安彦 良和氏 に興味がわいたので、またまたマンガ喫茶へ行ってあさってみようかな。

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