昨年末の
NZZに
海面上昇で水没する地中海沿岸のユネスコ世界文化遺産に関する2ページの特集記事がありました。
「水没する文化遺産」と聞いて誰もが先ず思い浮かべるのは
ヴェネチアではないでしょうか。
ヴェネチアは既に水没しつつあります。アクア・アルタ(洪水)は毎年の恐るべき「恒例現象」となっています。
幸運にも私はアクア・アルタに遭遇したことがありません。でも、事態は刻々と悪化しつつあります。

サンマルコ広場2012年10月

水路と道路の区別がつかない脇道2008年12月
上の写真は英語・独語ウィキペディアのものです。
そもそもヴェネチアは干潟に数百万本の杭を打ち込みレンガで補強した「人工地盤」の上に築かれた集落です。放っておいても少しずつ沈下するのです。
人口増加や工業化によって地下水が大量に汲み上げられ、地盤が急速に沈下するようになりました。
抜本的な救済策が必要だと明らかになったのは既に1966年のことです。長い長い論議の歳月を経て2003年に、危険水位のときに閉ざすべき79の水門が計画されました。この装置は2011年から稼動する予定でしたが、現在も完成していません。悲観的な予想によると、2100年にはヴェネチアは水没しているだろうとされます。
水没を別としても、ヴェネチアは既に半ば死んでいます。古い建物の修復に膨大な費用がかかるため、住む人がないまま朽ち果てつつある空家が多いのです。膨大な数の旅行者のため働いている「地元の人たち」の大半は、陸地の
メストレや他の近郊都市から通勤しています。
昔は帆船が入港するだけだったサンマルコ湾には近年、巨大なクルーズ船が停泊し、これも大問題となっています。
オーバーツーリズムについて紹介された記事
地中海沿岸にある他の世界文化遺産49ヵ所のうち42ヵ所も危機に直面しています。
その全てを紹介するのは大変なので、代表的な数ヵ所のみ・・・
サモス島
デロス島
ティルス
カルタゴ
アマルフィ海岸
地中海沿岸だけで42ヵ所が危機ということは、全世界的には、どれほどの文化遺産が水没しようとしていることか・・・
文化遺産が水没するということは、そこに住む人たちの生活環境も脅かされるということです。