アリは
社会性昆虫として高度に発達した社会生活を営みます。そこに病原性の菌類の胞子を浴びた働きアリが戻ってくれば、人間社会と同様パンデミックとなる可能性があります。
では、アリはどうするかというと、人間社会と同じことをするのです。胞子を浴びたアリは「自己隔離」し、他のアリたちは「胞子持ちアリ」とのコンタクトを最小限にとどめます。「看護師アリ」は「胞子持ちアリ」から胞子を取り除き、ほんの少しだけ摂取します。これによって抗体が形成されます。コロニー内は蟻酸によって徹底的に消毒されます。胞子を浴びたアリも全員が発病するのではなく、あるいは発病したとしても軽症で済みます。「看護師アリ」の抗体は他のアリにも伝播し、更に次世代にも送られます。こうして、アリ・コロニーはパンデミックを克服します。感染警戒期間中、女王アリは常に完全に保護されています。
これは
Sars-CoV-2による
Covid-19パンデミックが始まったのでアリ社会も調査してみた、というのではありません。オーストリアの研究チームとローザンヌの研究チームの共同研究で、既に昨年、専門誌に発表されたものです。
隔離とソーシャル・ディスタンスと消毒は、既に数百万年効果を発揮してきたパンデミック対処・予防法なのです。
上の写真では大きなアリさんですが、研究チームは本物の小さなアリ4000匹に小さな標識を付け、研究室内で約150匹ずつのコロニーに分け、その一部の働きアリに胞子を付けて、人工的にパンデミックの出発点を作り出したのです。小さなアリさんに小さな識別ラベルを貼り付けるというのは、随分手間のかかる作業だったに違いありません。
いつもの新聞HPに載った記事
オリジナル研究論文
アリのコロニーと同じことを人間がしている、と言っても、それは人間がアリ・レベルだということではなく、逆に、自然界でも長い長い進化の過程で、様々な行動様式が発展獲得されてきたということだと思います。そうした積み上げ・土台の上に人類社会が成り立っているのです。
4月27日は
オーストリア第二共和国樹立宣言から75周年に当たります。それで記念式典が、Covid-19パンデミック対応で行われました。
兵隊さんは
オーストリア国旗のマスクをしています
オーストリア独立のため戦った人々の慰霊碑に花輪を置く共和国大統領
最高の財産の蛇足で、国防大臣が、戦闘服の生地によるマスク独自生産を発表したと書きましたが、国旗柄のマスクは多分、式典用の特製だろうと思います