応用美術館には名高いフランクフルト・キッチン(1926年)が再現展示されています。
職業を持つ女性が、自宅でも効率良く調理や後片付けができることを目標とした台所です。
これは建築史上およびデザイン史上のパイオニアであり、「現代への出発点」として記念すべき存在です。
フランクフルト・キッチンは、その後約1万世帯に導入されたということです。
キッチンの再現展示
コンロ

下はオーブンでしょう
収納性の良い引き出し式容器と戸棚
調理台

独り者なら、ここで食事できますね
吊り戸棚
ヨーロッパでは押したり手前に引いたりする扉や戸が一般的でしたが、これは横に滑らせる(ヨーロッパとしては)画期的なもの。
流し(現代「日本語」ではシンク)
ゴミ入れかな?
窓側から見たところ

奥に見えるのは別の展示品です
古いタイプの台所模型が同じフロアに展示されています
現代の目から見ると、あまり動き回らず台所仕事ができ、しかも統一されたデザインのモダンなキッチンに見えますが、当時は色々な批判がありました。特に「2人以上で働けないから、女性がひとりきりで台所仕事をしなければならない」という批判は核心をついていると思いますが、あるいは、職業を持つ一人暮らしの女性(男性でも)を想定した台所かなとも思います。
フランクフルト・キッチンの設計者マルガレーテ・シュッテ・リホツキーは、
ウィーン応用美術大学で学んだ最初の女性であり、従ってオーストリア最初の女性建築家です。この革命的台所は、彼女が
フランクフルト・アム・マインで建築家として活動していた時期に設計され、この名称があります。
彼女はナチスの時代、反ナチスの抵抗運動に加わって逮捕され、死刑の宣告を受けたものの、執行されないうちにアメリカ軍に解放されました。
このレジスタンス時代に共産党員となったため、戦後は長らく無視されていましたが、後年高く評価されるようになり、色々な賞を受賞、2000年に102才という高齢で亡くなるまで平和運動に参加していました。
レジスタンス時代の回想録
この本は以前、友達からプレゼントされて読みました。イスタンブールへ行ったりウィーンへ戻ったりと、なんだか冒険小説のようでした。
巻末には、彼女とともに投獄されていた人たちの経歴が紹介されています(殆どの人が投獄中に処刑され、生還した人は僅かです)。
Wikipedia:
フランクフルト・キッチン
Wikipedia:
Margarete Shuette-Lihotzky(英語:独語のウムラウトは文字化けするためUEに書き換えてあります)
もう暫くゴタリングです。たまに覗いてくださいませ

でも恒例、乞無期待