今年度の日本社会学会大会は11月23(日)・24日(月)の両日、東北大学で開催される。私自身は発表はしないが、ゼミの院生が発表を行なうので、それを聞きに行こうと思っている。発表する内容は知っているが、フロアーの反応が知りたいのである。それと、知り合いの研究者の発表や、最終日のシンポジウムにも聞いてみたいものがある。今日、ネットで仙台のホテルを検索し、リッチモンドホテルを予約した。今年の7月にオープンしたばかりの新しいホテルで、利用者の評価(これはけっこう信頼できる)も上々のようである。1泊1万円を少し出るが、朝食付きのプランなのでよしとしよう。私は、どうせ寝るだけだから部屋が狭くても多少汚くてもかまわない、という気持ちにはなれない。酒を飲まないので、旅行・出張先では夜は早くホテルに戻り、部屋でTVを見たり、本を読んで過ごすことが多い。そのとき暗くて狭い部屋は息が詰まるし、旅先で自宅の風呂より狭いバスタブに入るのも気分が滅入る。デスクと椅子も大切だ。狭いデスクや、正面に鏡のあるデスクはいやだ(鏡よ鏡よ鏡さん、みたいで)。デスク用の椅子とは別に座面の低いソファーがあると読書やTVを見るのに快適である。今日予約した部屋はこれらの条件をクリアーしている(室内写真と「口コミ」情報からそう判断できる)。
午後、散歩に出る。有隣堂と栄松堂を回って以下の本を購入し、「テラス・ドルチェ」で読む。
堀江敏幸編『記憶に残っていること』(新潮クレスト・ブック)
サンドウィッチマン『敗者復活』(幻冬舎)
雨宮処凛『プレカリアート デジタル日雇い労働者の不安な生き方』(洋泉社)
『敗者復活』は2007年M-1グランプリで敗者復活戦から勝ちあがって優勝したサンドウィッチマンの手記である。二人の出会いから現在までのことを二人が交互に語っている。ファイナル決勝で二人が披露したネタは「ピザのデリバリー」だったが、終盤で二人を襲ったピンチについて富澤たけし(ボケ役)がこう書いている。
「「ピザのデリバリー」の滑り出しは、営業のときと同じ手ごたえだった。
遅れてきた配達人が「配達にいくかどうかで迷ってました」と言う頭のボケで、スタジオにドッと笑いが起きた。こうなったら、後は研究した通り。4分間での、最も効果的で笑いのとれる、デリバリー・M-1バージョンを展開するだけだ。
(中略)
「腹たつなぁ、お前。・・・・ムカつくなぁ」
と、伊達がツッコミを2回くりかえした。
ん!?
2回目の「ムカつくなぁ」は台本にない。
意識的に伊達の視線をずっと避けていたけど、その時パッと目があった。
伊達が、目でSOSサインを送っている!
ヤバい! こいつ飛んでる! 次のネタが思い出せてない!!
(どうしよう・・・!!)
いきなり訪れた、緊急事態のトラブルだ。
そこまでは何もかもが順調だったから、僕もパニックだった。このくだりで、過去、ネタが飛んだことは一度もない。しかもネタが飛ぶのはだいたい、僕の方だった。それが、このときに限って、いきなり伊達に来た。
最悪なのは、伊達の「飛び」が瞬時に伝染して、その先のネタを僕も思い出せなかったことだ。
(マズい・・・・・!! フォローしてやれない!!)
頭の中はF1エンジンのようにフル回転した。
どうする!? ここのネタはカットするか、だとしたらどこから始める!?
あそこか、ここか!? いや、あのくだりだ!!
待て、それだとオチまで4分を切る!!
じゃあ、あのネタを代わりにさしこむか!?
ダメだ、その後の流れにつながらない!!
どうしたらいい!?
何か思いつけ!!
すると―伊達が。
「ふざけてんだろ、お前」
と、フッとネタを思い出してくれた!
ホッとした・・・・・そこからは僕も気持ちを立て直して、「ピザのデリバリー」を順調に進めることができた。
焦った。本当に、ヤバかった。
このトラブルの間は、コンマ1秒、あるかないかだ。
たぶん見ている人は、僕と伊達がパニックになっているなんて、気づかなかっただろう。
でも僕は、本気で「あっ、死んだ・・・・!!」と思った。ここまで上がってきて、憧れの場所で、夢だった漫才をやれて・・・・ここで失敗するのか! と、膝をガックリつきそうだった。」(pp.225-227)
そんなことがあったのか。過去3年分のM-1グランプリ(優勝者はブラックマヨネーズ、チュートリアル、そしてサンドウィッチマン)は録画して保存してある。さっそく去年の分を再生してみた。一度目はわからなかった。二度目で「ここか」とわかった。確かに一瞬の間が生じて、富澤が伊達の顔を素の表情で見る場面があった。それまでビザの配達人役の富澤は客である伊達にどんなに文句を言われようと柳に風、ゴーイングマイウェーという感じで応対していたのだが、その一瞬だけ、困惑の表情を見せた。威勢よく文句を言っていた伊達にもそのときだけ声に張りがなかった。そうか、そうだったのか。
私も講義中に話そうと思っていた内容が飛んでしまうことがよくある。事前に講義メモは作成するが、講義中はメモはできるだけ見ないようにしているし、見たとしても時間が経過していると自分でも判読できない場合が多いのだ。漫才と違って講義は一人なので、話そうと思っていたことが飛んでしまっても、そのまま続けるしかない。というよりも、その場では飛んでしまっていることに気づかず、後から(授業の途中や終了後に)気づくことがほとんである。授業の途中であれば、そして飛んでしまったことが重要なことであれば、「あっ、さっき言い忘れたけど」と話を問題の箇所に戻して差し挟むことができるが、終ってから気づいても後の祭りで、翌週の授業の冒頭、「前回のポイント」を復習するときに補足することになる。少し前の失敗談だが、授業で話そうと思っていたことを話し忘れて、しかし話し忘れたことに気づかず、それを試験問題にしてしまったことがある。幸い、問題は4問出して、学生はその中から一つを選択して解答する形式だったので、実害は生じなかったのだが、その問題を選択した学生が一人だけいて、しかも「A」評価の答案だったことがいまだに不思議だ。
さて、今週からいよいよ秋学期の授業が始まる。緊張感をもって、かつリラックスして、取り組んでいこう。
午後、散歩に出る。有隣堂と栄松堂を回って以下の本を購入し、「テラス・ドルチェ」で読む。
堀江敏幸編『記憶に残っていること』(新潮クレスト・ブック)
サンドウィッチマン『敗者復活』(幻冬舎)
雨宮処凛『プレカリアート デジタル日雇い労働者の不安な生き方』(洋泉社)
『敗者復活』は2007年M-1グランプリで敗者復活戦から勝ちあがって優勝したサンドウィッチマンの手記である。二人の出会いから現在までのことを二人が交互に語っている。ファイナル決勝で二人が披露したネタは「ピザのデリバリー」だったが、終盤で二人を襲ったピンチについて富澤たけし(ボケ役)がこう書いている。
「「ピザのデリバリー」の滑り出しは、営業のときと同じ手ごたえだった。
遅れてきた配達人が「配達にいくかどうかで迷ってました」と言う頭のボケで、スタジオにドッと笑いが起きた。こうなったら、後は研究した通り。4分間での、最も効果的で笑いのとれる、デリバリー・M-1バージョンを展開するだけだ。
(中略)
「腹たつなぁ、お前。・・・・ムカつくなぁ」
と、伊達がツッコミを2回くりかえした。
ん!?
2回目の「ムカつくなぁ」は台本にない。
意識的に伊達の視線をずっと避けていたけど、その時パッと目があった。
伊達が、目でSOSサインを送っている!
ヤバい! こいつ飛んでる! 次のネタが思い出せてない!!
(どうしよう・・・!!)
いきなり訪れた、緊急事態のトラブルだ。
そこまでは何もかもが順調だったから、僕もパニックだった。このくだりで、過去、ネタが飛んだことは一度もない。しかもネタが飛ぶのはだいたい、僕の方だった。それが、このときに限って、いきなり伊達に来た。
最悪なのは、伊達の「飛び」が瞬時に伝染して、その先のネタを僕も思い出せなかったことだ。
(マズい・・・・・!! フォローしてやれない!!)
頭の中はF1エンジンのようにフル回転した。
どうする!? ここのネタはカットするか、だとしたらどこから始める!?
あそこか、ここか!? いや、あのくだりだ!!
待て、それだとオチまで4分を切る!!
じゃあ、あのネタを代わりにさしこむか!?
ダメだ、その後の流れにつながらない!!
どうしたらいい!?
何か思いつけ!!
すると―伊達が。
「ふざけてんだろ、お前」
と、フッとネタを思い出してくれた!
ホッとした・・・・・そこからは僕も気持ちを立て直して、「ピザのデリバリー」を順調に進めることができた。
焦った。本当に、ヤバかった。
このトラブルの間は、コンマ1秒、あるかないかだ。
たぶん見ている人は、僕と伊達がパニックになっているなんて、気づかなかっただろう。
でも僕は、本気で「あっ、死んだ・・・・!!」と思った。ここまで上がってきて、憧れの場所で、夢だった漫才をやれて・・・・ここで失敗するのか! と、膝をガックリつきそうだった。」(pp.225-227)
そんなことがあったのか。過去3年分のM-1グランプリ(優勝者はブラックマヨネーズ、チュートリアル、そしてサンドウィッチマン)は録画して保存してある。さっそく去年の分を再生してみた。一度目はわからなかった。二度目で「ここか」とわかった。確かに一瞬の間が生じて、富澤が伊達の顔を素の表情で見る場面があった。それまでビザの配達人役の富澤は客である伊達にどんなに文句を言われようと柳に風、ゴーイングマイウェーという感じで応対していたのだが、その一瞬だけ、困惑の表情を見せた。威勢よく文句を言っていた伊達にもそのときだけ声に張りがなかった。そうか、そうだったのか。
私も講義中に話そうと思っていた内容が飛んでしまうことがよくある。事前に講義メモは作成するが、講義中はメモはできるだけ見ないようにしているし、見たとしても時間が経過していると自分でも判読できない場合が多いのだ。漫才と違って講義は一人なので、話そうと思っていたことが飛んでしまっても、そのまま続けるしかない。というよりも、その場では飛んでしまっていることに気づかず、後から(授業の途中や終了後に)気づくことがほとんである。授業の途中であれば、そして飛んでしまったことが重要なことであれば、「あっ、さっき言い忘れたけど」と話を問題の箇所に戻して差し挟むことができるが、終ってから気づいても後の祭りで、翌週の授業の冒頭、「前回のポイント」を復習するときに補足することになる。少し前の失敗談だが、授業で話そうと思っていたことを話し忘れて、しかし話し忘れたことに気づかず、それを試験問題にしてしまったことがある。幸い、問題は4問出して、学生はその中から一つを選択して解答する形式だったので、実害は生じなかったのだが、その問題を選択した学生が一人だけいて、しかも「A」評価の答案だったことがいまだに不思議だ。
さて、今週からいよいよ秋学期の授業が始まる。緊張感をもって、かつリラックスして、取り組んでいこう。