8時、起床。昨夜はフィールドノートの更新をしないで寝たので(夜型人間ではあるが眠いときは寝ることにしている)、朝食前に更新をすます。今日は朝から雨が降っている。傘を差して「Kaga」に朝食をとりにいく。時間的に昼食を兼ねることになりそうなので、サンドウィッチと珈琲を注文。このサンドウィッチがとても美味しかった。具はありふれたものばかりなのだが、その1つ1つがちゃんとしているのだ。ちゃんとうぃっち(日本文学の兼築先生が言いそうな駄洒落だ)。とくに卵。薄焼き卵なのだが、ふんわりとしてやわらかい。本を読みながら食べるつもりでいたが(喫茶店のサンドウィッチってそういうものであろう)、そういうわけにはいかなくなった。片手間ではなく、心して、味わって食べる。デザートにヨーグルト・ゼリーを追加で注文する。ケースに入っているのを見ていたら美味しそうだったからだ。見た目も美しいが、実際、美味しかった。表面の苺のゼリーが甘酸っぱいので、ヨーグルトそのものは淡白で上品な味わい。やはり本を読みながら食べることができなかった。
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晴れの日は屋外、雨の日は屋内(曇りの日は気温による)、これが旅先での基本的行動パターンである。金沢21世紀美術館で開催中の展覧会「杉本博司 歴史の歴史」を見物に行く。杉本博司のことはよく知らない。展覧会の内容もよくわからない。ただ、去年の12月6日に千葉市立美術館で観た彼の作品(3枚の海の写真)は強く印象に残っていて、ああいう写真を撮る人の展覧会ならばという思いがあった。実際、行ってよかった。素晴らしい展覧会だった。あと1日残っているが(昼前に金沢を立つ)、今日が今回の金沢滞在の5日間のうちの最良の日になった。展覧会の内容を説明することは、それを観た後でも、やはり難しい。私は彼を写真家だと思っていた。そして「歴史の歴史」は基本的に写真展なのだと思っていた。しかし、そうではなかった。写真家は杉本博司の、重要ではあるが、一つの側面でしかなく、「歴史の歴史」は、写真がふんだんに使われてはいるが、写真展とは全然別のものだった。彼を何と呼べばよいのだろう。芸術家、アート作家、いや、それでも狭い気がする。なぜなら、通常、そこには学問、とくに科学は含まれていないから。杉本博司は、レオナルド・ダ・ビンチと南方熊楠を足して二で割ってポストモダン的な意匠を凝らした人物、別の言い方をすると、知性とユーモアと探究心と想像力を非常に高いレベルで兼ね備えた人物である。こういう人物の作品の展覧会は、その展示の仕方そのものが、つまり、どの作品の隣にどの作品を置くか。どの展示室の次にどの展示室を置くか、そういう「編集作業」そのものが、一つの作品になる。観客は、指示された順路に従って展示室から展示室へと移動しながら、そしてそれぞれの展示室で作品から作品へと移動しながら、驚かされ、刺激され、ニヤリとさせられ、翻弄され、そしてクタクタになる。どの展覧会でもそうするように、今回も二回周ったので、クタクタのクタクタになった。息抜きで金沢に来ているのに、全然、息抜きにならない。しかし、息抜きとは必ずしも弛緩することではない。弛緩的息抜きだけなら、海辺のホテルに泊まって日がな一日海を眺めているのがよい。街を歩けば刺激に出会う。しかし、その刺激が、普段はあまり使っていない脳の部位への刺激であれば、それも一種の息抜きであるといえるだろう。展覧会を観終わって、どこかに腰を下ろしたいが、美術館内のカフェに入れば何かを注文しなければならない。いまはケーキも珈琲も欲しくはない。ただ座って休息がしたいのだ。ふと見ると、美術館の玄関を入って、カフェとは反対側に、アクリル製の透明な椅子が等間隔に並んでいる空間があるではないか。しかし、誰もその椅子に座っていない。まさかオブジェなんじゃないだろうなと思いつつ、その椅子の1つに座ってみる。係員が飛んでくる様子もないので、オブジェではないようだ。そこで少しの時間、目を閉じる。そして本を読む。「Kaga」では本が読めなかったので、今日初めての読書時間だ。金沢21世紀美術館はよい美術館である。これで洋式トイレにウォシュレットが備え付けになれば、名実共に「21世紀」の美術館となるであろう。
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ホテルには午後4時頃戻る。一風呂浴びてから、ホテル内のレストランで早めの夕食(今日は昼食をとっていない)をとる。一昨日の夕食はちらし寿司、昨日の夕食は海鮮丼、おかげで体重は維持できているが、そろそろ肉が食べたくなった。角切りステーキ定食を注文する。時間が早い(5時半)ので、客は少ないが、従業員の視線にさらされているので、写真は撮りにくい。代わりに昨夜の夕食の海鮮丼の写真を載せておく。
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夕食を終え、部屋で一服してから、石川県立音楽堂にオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演会を聴きに出かける。チケットはホテルの予約をした日に購入済みである。指揮は常任の井上道義。プログラムは次の3曲。
ハイドン、交響曲第100番ト長調「軍隊」
ブルッフ、ヴァイオリン協奏曲第1番ト長調
ビゼー、劇音楽「アルルの女」から
井上道義の指揮をライブで観たのは初めてだが、日本人離れした容貌とスラリとした身体で、トリッキーなパントマイムというか、ホームでたまに見かける酔っ払いのサラリーマンのような動きをする。聴衆を楽しませようというサービス精神からくるのか、あるいは(および)自分の才能に酔っているのか、「のだめカンタービレ」にもそのまま素で出演できそうなキャラクターの持ち主である。ヴァイオリン協奏曲でソロを務めた客演の神尾真由子は、井上が開演前のトークショーで言っていたように「フェラーリみたい」なエンジン全開の演奏だった。アンコールで演奏した(曲名は知らないが)超絶技巧曲も凄かった。とても楽しく愉快な気分でホテルに帰った。雨はもう止んでいた。
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晴れの日は屋外、雨の日は屋内(曇りの日は気温による)、これが旅先での基本的行動パターンである。金沢21世紀美術館で開催中の展覧会「杉本博司 歴史の歴史」を見物に行く。杉本博司のことはよく知らない。展覧会の内容もよくわからない。ただ、去年の12月6日に千葉市立美術館で観た彼の作品(3枚の海の写真)は強く印象に残っていて、ああいう写真を撮る人の展覧会ならばという思いがあった。実際、行ってよかった。素晴らしい展覧会だった。あと1日残っているが(昼前に金沢を立つ)、今日が今回の金沢滞在の5日間のうちの最良の日になった。展覧会の内容を説明することは、それを観た後でも、やはり難しい。私は彼を写真家だと思っていた。そして「歴史の歴史」は基本的に写真展なのだと思っていた。しかし、そうではなかった。写真家は杉本博司の、重要ではあるが、一つの側面でしかなく、「歴史の歴史」は、写真がふんだんに使われてはいるが、写真展とは全然別のものだった。彼を何と呼べばよいのだろう。芸術家、アート作家、いや、それでも狭い気がする。なぜなら、通常、そこには学問、とくに科学は含まれていないから。杉本博司は、レオナルド・ダ・ビンチと南方熊楠を足して二で割ってポストモダン的な意匠を凝らした人物、別の言い方をすると、知性とユーモアと探究心と想像力を非常に高いレベルで兼ね備えた人物である。こういう人物の作品の展覧会は、その展示の仕方そのものが、つまり、どの作品の隣にどの作品を置くか。どの展示室の次にどの展示室を置くか、そういう「編集作業」そのものが、一つの作品になる。観客は、指示された順路に従って展示室から展示室へと移動しながら、そしてそれぞれの展示室で作品から作品へと移動しながら、驚かされ、刺激され、ニヤリとさせられ、翻弄され、そしてクタクタになる。どの展覧会でもそうするように、今回も二回周ったので、クタクタのクタクタになった。息抜きで金沢に来ているのに、全然、息抜きにならない。しかし、息抜きとは必ずしも弛緩することではない。弛緩的息抜きだけなら、海辺のホテルに泊まって日がな一日海を眺めているのがよい。街を歩けば刺激に出会う。しかし、その刺激が、普段はあまり使っていない脳の部位への刺激であれば、それも一種の息抜きであるといえるだろう。展覧会を観終わって、どこかに腰を下ろしたいが、美術館内のカフェに入れば何かを注文しなければならない。いまはケーキも珈琲も欲しくはない。ただ座って休息がしたいのだ。ふと見ると、美術館の玄関を入って、カフェとは反対側に、アクリル製の透明な椅子が等間隔に並んでいる空間があるではないか。しかし、誰もその椅子に座っていない。まさかオブジェなんじゃないだろうなと思いつつ、その椅子の1つに座ってみる。係員が飛んでくる様子もないので、オブジェではないようだ。そこで少しの時間、目を閉じる。そして本を読む。「Kaga」では本が読めなかったので、今日初めての読書時間だ。金沢21世紀美術館はよい美術館である。これで洋式トイレにウォシュレットが備え付けになれば、名実共に「21世紀」の美術館となるであろう。
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ホテルには午後4時頃戻る。一風呂浴びてから、ホテル内のレストランで早めの夕食(今日は昼食をとっていない)をとる。一昨日の夕食はちらし寿司、昨日の夕食は海鮮丼、おかげで体重は維持できているが、そろそろ肉が食べたくなった。角切りステーキ定食を注文する。時間が早い(5時半)ので、客は少ないが、従業員の視線にさらされているので、写真は撮りにくい。代わりに昨夜の夕食の海鮮丼の写真を載せておく。
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夕食を終え、部屋で一服してから、石川県立音楽堂にオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演会を聴きに出かける。チケットはホテルの予約をした日に購入済みである。指揮は常任の井上道義。プログラムは次の3曲。
ハイドン、交響曲第100番ト長調「軍隊」
ブルッフ、ヴァイオリン協奏曲第1番ト長調
ビゼー、劇音楽「アルルの女」から
井上道義の指揮をライブで観たのは初めてだが、日本人離れした容貌とスラリとした身体で、トリッキーなパントマイムというか、ホームでたまに見かける酔っ払いのサラリーマンのような動きをする。聴衆を楽しませようというサービス精神からくるのか、あるいは(および)自分の才能に酔っているのか、「のだめカンタービレ」にもそのまま素で出演できそうなキャラクターの持ち主である。ヴァイオリン協奏曲でソロを務めた客演の神尾真由子は、井上が開演前のトークショーで言っていたように「フェラーリみたい」なエンジン全開の演奏だった。アンコールで演奏した(曲名は知らないが)超絶技巧曲も凄かった。とても楽しく愉快な気分でホテルに帰った。雨はもう止んでいた。
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