9時、起床。金沢滞在中も帰京してからの2日間も8時までには起きていたから、久しぶりの朝寝坊である。息抜き旅行とはいえ旅の疲れというものはやはりある。普段の環境と違う場所に身をおいているわけだから、持続的な緊張感というものが基本にあって、それに加えて旅先では昼寝がしにくいということが大きい。昼間はずっと外出しているので、たとえば昼食の後に眠気を催しても、ゴロリと横になることができない。ホテルの部屋に戻れば昼寝はできるが、それは時間のロスであるから、どこか椅子のある場所(電車やバス、喫茶店、公共施設のロビーなど)で座ったまま目を閉じるくらいが関の山である。旅行から帰ってきたときの決まり文句である「やっぱりわが家が一番」というのは、具体的には、ゴロリと横になれるということではなかろうか。
今日は朝食は抜いて、昼食を「鈴文」に食べに行く。12時を少し回ったピークの時間帯であったが、ちょうどよいタイミングで一つ席が空いて、そこにすんなり座ることができた。ランチのとんかつ定食を注文。6切れを塩2、醤油1、ソース3で食べる。支払いのとき「大久保先生」とカウンターのお客さんに声を掛けられれた。蒲田アカデミアのN氏だった。N氏も「鈴文」のファンであると聞いていたが、遭遇するのは初めてだった。これで私の名前が「大久保」であることが店の方々には認知されたであろう。これまで店主や店員さんと話はしていても「大久保と申します」と名乗ったことはなかったので。
食後の珈琲を「シャノアール」で飲んでから、キネカ大森に『ジェネラル・ルージュの凱旋』を観に行く。『チーム・バチスタの栄光』に続くシリーズ第2作である(小説の方ではこの二つの作品の間に『ナイチンゲールの沈黙』が位置する)。『チームバチスタの栄光』はバチスタ手術中の患者の連続死(殺人)の謎を追うというミステリーであったが、『ジェネラル・ルージュの凱旋』はそれとは趣を異にし、ミステリー的要素は含まれているものの(誰が内部告発文書を書いたのか、医療メーカーの社員はなぜ「自殺」したのか)、中心となるテーマは現代医療における救命救急の問題である。そういう意味では、社会派ドラマであり、告発ドラマである。もちろん田口-白鳥コンビを初めとする前作の登場人物たち(東城大学医学部付属病院の面々)がこれにからんでくるわけだから、コミカルで劇画的なテイストは保たれている。でも、やっぱり社会派ドラマである。その中心には救命救急センター長の速水(堺雅人)がいる。これが今回の主役。普段はうっすらとした笑いを浮かべている彼が、救命救急の現場や倫理委員会での尋問場面でみせる、ちょっと下を向いて、上目づかいで相手をにらむときの表情は、堺雅人の十八番で、彼が『クライマーズハイ』で演じた新聞記者が航空機の墜落現場の取材から戻って上司(堤真一)に噛み付くときのそれと同じものであった。「鬼気迫る」というのはこういう表情をいうのだろう。よいキャスティングだったと思う。バチスタ手術のような緊迫した場面は、今回はない。いや、地区内で起こった火災事故の負傷者が続々と病院に搬送されてくる場面がそれに相当するのだろうが、製作者が意図したほどの緊迫感、臨場感には乏しかったと思う。少なくとも私はそうだった。これは負傷者の治療の優先順位を決めるトリアージについてはNHKスペシャルがすでに取り上げているし、ドクターヘリについてもTVドラマですでに取り上げているし・・・と私にとって既視感のある場面の連続だったためで(そのために興醒めがしてしまう)、それを知らない観客には「息を飲む」場面の連続なのだと思う。すれっからしの感想なので、この点は差し引いて読んでください。それにしても東城大学付属病院、病院スタッフによる殺人事件が続いているのによく経営が成り立っているよな。
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大森駅前から出ているバスに乗って池上に行く。いったん蒲田に戻って、池上線を使うという手もあったが、普段あまりバスを使うことがないので、バスにしてみた。窓外の景色は電車とは違う。街との距離感が違う。母や近所の友人たちは都バスは無料なので、ずいぶん遠回りでもバスを使う習慣がある。私も老人になったらそうするかもしれないが、私が老人になるときには「シルバーパス」の規定が変わっているかもしれない(現在は70歳以上の住民税非課税者に対して千円で発行され1年間有効)。大森駅前のバス通りの商店街はけっこう活気がある。それでもだんだん駅から離れていくとシャッターを下ろしたままの店舗が目につくようになる。頑張ってほしい。
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終点「池上駅」の一つ前、「本門寺前」で下車。「甘味あらい」をめざす。雨がチラホラ落ちてきて、傘をもって出ていなかったので(自宅を出るときはよい天気だったのだ)、途中から早足に、しだいにジョギングのようになる。これで「甘味あらい」が早仕舞いをしていたらショックだなと思いつつ(土日の客が多いときはそうなることが珍しくないのだ)、店の前まで行くと、ちゃんと暖簾が出ていたのでホッとする。お客は私ひとりだった。贅沢あんみつ、その後に珈琲を注文。『ジェネラル・ルージュの凱旋』のプログラムに目を通す。雨が上がるのを待って、店を出る。池上線で帰る。
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池上駅前
今日は朝食は抜いて、昼食を「鈴文」に食べに行く。12時を少し回ったピークの時間帯であったが、ちょうどよいタイミングで一つ席が空いて、そこにすんなり座ることができた。ランチのとんかつ定食を注文。6切れを塩2、醤油1、ソース3で食べる。支払いのとき「大久保先生」とカウンターのお客さんに声を掛けられれた。蒲田アカデミアのN氏だった。N氏も「鈴文」のファンであると聞いていたが、遭遇するのは初めてだった。これで私の名前が「大久保」であることが店の方々には認知されたであろう。これまで店主や店員さんと話はしていても「大久保と申します」と名乗ったことはなかったので。
食後の珈琲を「シャノアール」で飲んでから、キネカ大森に『ジェネラル・ルージュの凱旋』を観に行く。『チーム・バチスタの栄光』に続くシリーズ第2作である(小説の方ではこの二つの作品の間に『ナイチンゲールの沈黙』が位置する)。『チームバチスタの栄光』はバチスタ手術中の患者の連続死(殺人)の謎を追うというミステリーであったが、『ジェネラル・ルージュの凱旋』はそれとは趣を異にし、ミステリー的要素は含まれているものの(誰が内部告発文書を書いたのか、医療メーカーの社員はなぜ「自殺」したのか)、中心となるテーマは現代医療における救命救急の問題である。そういう意味では、社会派ドラマであり、告発ドラマである。もちろん田口-白鳥コンビを初めとする前作の登場人物たち(東城大学医学部付属病院の面々)がこれにからんでくるわけだから、コミカルで劇画的なテイストは保たれている。でも、やっぱり社会派ドラマである。その中心には救命救急センター長の速水(堺雅人)がいる。これが今回の主役。普段はうっすらとした笑いを浮かべている彼が、救命救急の現場や倫理委員会での尋問場面でみせる、ちょっと下を向いて、上目づかいで相手をにらむときの表情は、堺雅人の十八番で、彼が『クライマーズハイ』で演じた新聞記者が航空機の墜落現場の取材から戻って上司(堤真一)に噛み付くときのそれと同じものであった。「鬼気迫る」というのはこういう表情をいうのだろう。よいキャスティングだったと思う。バチスタ手術のような緊迫した場面は、今回はない。いや、地区内で起こった火災事故の負傷者が続々と病院に搬送されてくる場面がそれに相当するのだろうが、製作者が意図したほどの緊迫感、臨場感には乏しかったと思う。少なくとも私はそうだった。これは負傷者の治療の優先順位を決めるトリアージについてはNHKスペシャルがすでに取り上げているし、ドクターヘリについてもTVドラマですでに取り上げているし・・・と私にとって既視感のある場面の連続だったためで(そのために興醒めがしてしまう)、それを知らない観客には「息を飲む」場面の連続なのだと思う。すれっからしの感想なので、この点は差し引いて読んでください。それにしても東城大学付属病院、病院スタッフによる殺人事件が続いているのによく経営が成り立っているよな。
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大森駅前から出ているバスに乗って池上に行く。いったん蒲田に戻って、池上線を使うという手もあったが、普段あまりバスを使うことがないので、バスにしてみた。窓外の景色は電車とは違う。街との距離感が違う。母や近所の友人たちは都バスは無料なので、ずいぶん遠回りでもバスを使う習慣がある。私も老人になったらそうするかもしれないが、私が老人になるときには「シルバーパス」の規定が変わっているかもしれない(現在は70歳以上の住民税非課税者に対して千円で発行され1年間有効)。大森駅前のバス通りの商店街はけっこう活気がある。それでもだんだん駅から離れていくとシャッターを下ろしたままの店舗が目につくようになる。頑張ってほしい。
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終点「池上駅」の一つ前、「本門寺前」で下車。「甘味あらい」をめざす。雨がチラホラ落ちてきて、傘をもって出ていなかったので(自宅を出るときはよい天気だったのだ)、途中から早足に、しだいにジョギングのようになる。これで「甘味あらい」が早仕舞いをしていたらショックだなと思いつつ(土日の客が多いときはそうなることが珍しくないのだ)、店の前まで行くと、ちゃんと暖簾が出ていたのでホッとする。お客は私ひとりだった。贅沢あんみつ、その後に珈琲を注文。『ジェネラル・ルージュの凱旋』のプログラムに目を通す。雨が上がるのを待って、店を出る。池上線で帰る。
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池上駅前