フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月31日(火) 晴れ

2009-03-31 23:59:35 | Weblog
  9時半、起床。朝食兼昼食はカレーうどん。
  午後、自転車に乗って郵便局に振込みに行き、その足で「甘味あらい」へ。贅沢あんみつと磯辺巻き(2つ)のセットを注文。贅沢あんみつと磯辺巻き(3つ)を別々に注文するより割安であるが、難は、あんみつと磯部巻きが一緒に運ばれてくることである。私としては、まずあんみつを食べ、口直しに磯辺巻きを食べたい。しかし、一緒に運ばれてきてしまうと、まず磯部巻きから食べないと磯部巻きが冷えて硬くなってしまう。「磯部巻きは後からもってきてください」と注文を付けることはできなくはないのかもしれないが、他のお客さんもいることだし、わがままを言うのは気が引ける。「甘→辛」か「辛→甘」かの順序問題は私にとってはけっこう重要な問題なのだ。今回については、磯部巻き→贅沢あんみつの後にブレンド珈琲を注文して口直しとした。

         

  追加で珈琲を注文したので、少々長居をして、一週間後に迫った最初の授業「現代人間論系総合講座1」の講義ノート(プロット)を作成する。初回は担当教員4名が全員登壇して講座の概要を説明する。コーディネーターである私の総論が30分。4名の教員による各論が1人10分として40分。最後に成績評価のやり方についての説明を10分。予備に10分とっておく。時間配分はこんなところであろう。総論の部分と自分の各論の部分を考える。一週間後の今日はほかに卒論演習の初回も予定している。学生は4人。毎週だと早く発表の順番が回りすぎるから隔週ペースがよいだろう。ただし4月登録の二文生がいるかもしれない。いまそういう学生がこのブログを見ているかもしれないので、いっておいた方がよいだろう、前期の卒論演習は火曜5限に行います。
  呑川沿いの道を帰る。川沿いの桜並木はまだまだである。早くても今週末だろう。いつもなら一緒に咲く菜の花が一足早く咲いていた。

         

  途中でちょっと錦栄会通り、観音通りに寄り道。古い商店街だ。お母さんと2人の小さな子供連れとすれ違ったとき、彼らの会話が聞こえた。「へをたれる」の「へ」とはオナラのことだと母親が子供に教えていた。「知ってるよ」と子供は答えていた。

         
                 すみれの花咲く頃 初めて君を知りぬ

         
                    文化包丁とか文化鍋とか

         
         古い小さな商店はしだいに自動販売機の殻に覆われていく

         
                      性別役割分業
  
         
                  呑川の上空をかもめが飛んでいた

3月30日(月) 晴れ

2009-03-31 03:27:03 | Weblog
  9時、起床。炒飯とオニオンスープの朝食。
  昼過ぎ、自宅を出る。「やぶ久」で昼食(鍋焼きうどん)。いつものように『週刊文春』を読む。「創刊50周年記念号」とのことで、普段よりも読み応えがあり、鍋焼きうどんを食べ終わるまでに読み終えることができず、駅の売店で購入。山田太一と宮藤官九郎の対談が興味深かった。

  山田 この間、『少年メリケンサック』観てきましたよ。面白かったなあ。お客さんも入ってて、終った後もみんな楽しそうだった。シルバー割引で入ったのはたぶん僕だけ(笑)。
  宮藤 ありがとうございます。監督したのは二本目なんですが、一本目は思い入れが強すぎて、お客さんに作品を届けるというところまで気がまわらなかったんです。今回はその反省を踏まえて作りました。
  山田 話の設定はかなり飛んでるんですけど、細部で「そりゃないでしょ」というところがない。隙のない演出だと思いましたね。
  宮藤 一本目のときは、言わなくてもわかるだろうっていう甘えがあって、だから今回はしつこいくらいに確認しながら撮ったつもりなんですが。
  山田 パンクの中年男たちに、だんだんと魅力が出てきて、気がつくと、パンクってなかなかいいものだと思わされてました。
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  宮藤 山田さんの『ありふれた奇跡』で、風間杜夫さんと岸部一徳さんが女装して街を歩くシーン。あれはパンクを感じました。
  山田 だといいけど。
  宮藤 パンクって、音楽でありつつ日常を破壊する行為そのものだと思うんですよね。だから最初は白い目で見られてた。
  山田 日常から逸脱しようとする、あがきみたいなものを書きたかったんですよね。でも大麻とかホモセクシャアルだと重すぎるでしょう。
  宮藤 それを話の中心に持ってこないといけなくなりますもんね。
  山田 そう、そこだけが肥大化して、そっちの話を広げなきゃいけなくなる。それでいろいろ考えて女装にしたんです。
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  宮藤 『ありふれた奇跡』に限らず山田さんは、あまり次回に向けて話を引っ張らないですよね。あえてだと思うんですが。
  山田 品がない気がしてね。翌週まで引っ張るのはお客さんを馬鹿にしてるようで、あまりやりたくない。
  宮藤 毎回、何気ないところで終るのが良かったです。いくら引っ張っても次回予告でだいたい分っちゃいますから。
  山田 そういうやり方があってもいいと思うけど、僕はやりたくないっていうだけなんですけどね。
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  宮藤 ご自分のスタイルをどれくらい意識されてますか?
  山田 自分では毎回変えてるつもりなんだけどね。
  宮藤 僕もそうなんです。でもバレちゃう。山田さんのドラマではウエイトレスが出てきたところで、わかっちゃいます(笑)。山田さんの作品には、喫茶店での店員とのやりとりにこだわりを感じます。
  山田 僕はちょっとウエイトレスフィチなところがあるのかもしれないな(笑)。喫茶店のシーンで、ウエイトレスをくっきり描いて、主人公をぼんやり描くと不思議な味が出たりしていいんですよ。ただそこに名前のあるうまい俳優さんに出てもらうわけにはいきませんから。
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  山田 僕がライターになった頃、バディ・チェイエフスキーというアメリカのドラマ作家の本を読んだんですよ。その中にテレビというのは突出した人を描くんじゃなくて、ありふれた人を描くのに適しているということが書いてあった。王子が自分の父親を殺したのは誰だ?という話じゃなくて、隣の肉屋さんはなぜ今の奥さんと結婚したんだろう?っていうほうがずっと刺激的だと。僕は大いにうなづきましたね。日常のちょっとしたことで一話書いちゃう。昔はのんびりしてたからそういうところで修業したという感じはありましたね。
  宮藤 でもみんなが隣の肉屋さんの結婚の話を書いても、山田さんみたいには書けないと思いますよ。
  山田 みんながやる必要はないんです。八〇年代くらいまでは、素朴な思い込みでも何とかやっていけたんですよ。テレビでも視聴率のことをあんまりうるさく言わなかったし。でもその後一気にドラマの商品化が進んで、脚本家の個性とか内面とかは関係なくなっちゃった。僕も娯楽作品は嫌いじゃないんですが、なんかこうひんやりしてきてね。誰の過去も私(わたくし)性も関係なく、技術だけ持ち寄ってドラマ作りをするようになった。それがドラマを痩せさせた理由の一つじゃないかな。一つ成功するとどの局も右に倣えで似たようなものを作り始める。
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  宮藤 山田さんはセリフを一言一句変えないでくれとおっしゃるんですよね。
  山田 とりわけ連続ドラマだと忙しいからチェックする時間がない。「何でもいい」というと現場では何が起こるかわからないでしょう。
  宮藤 僕は基本的に現場にお任せなんですよ。「違うじゃない?」って書いたのが、「違くね?」になったりする。のびのびやってくれるのは良いんだけど、さすがに自分で書いたと思われたら恥ずかしいなっていう言い回しもあって。そろそろ「セリフを変えないで」って言おうかなと思ってる(笑)。
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  宮藤 山田さんはハコ書き(ストーリーの構想)をしないんですよね。
  山田 僕ハコ書きができないんです。ハコ書きの才能がない(笑)。
  宮藤 じゃあ書いてるときもどの方向に行くのかわからないんですか?
  山田 ええ、そうですね。
  宮藤 でも企画段階ではストーリーのアウトラインを書いてくださいっていわれますよね?
  山田 何もないんじゃ会議をするとき困るだろうから一応書きます。でもそれは意気込みみたいなものです(笑)。
  宮藤 そう、意気込みですよね。ローンの頭金みたいなもんです。「僕、書けます」っていう。だから意気込みの段階で「ここがちょっと・・・」って言われると「え?」って思う(笑)。
  山田 そうそう。僕はひそかに、ライターがハコ書きを作ってその通りに行くことがあるんだろうかって思ってます。ドラマなんて書いてみなきゃ分らない。どんな話になるか分ったら書く気力がなくなっちゃう。アウトライン通りになるドラマなんて、つまらないでしょう。書いてるほうも先行きがわからないから面白いんじゃないかな。
  宮藤 話って書いているうちにどんどん変わって行きますよね。
  山田 最初に決めたテーマと変わってしまうこともあります。半分くらい書いた書いたところで、本当のテーマはこれだって気づくんですよ。
  宮藤 でも最初に書いた部分も、後で気づいたテーマのためだったりするわけですよね。
         

  大学に着いて、事務所や生協の書店でいくつか用件をすませてから、現代人間論系室で教員懇親会の準備作業。
  6時から「西北の風」で非常勤講師の方々をお招きしての教員懇親会。この季節、ちょうど陽が沈む時刻で、15階のレストランからの眺めがよい。晴天に恵まれてよかった。ホスト役としては、せっかく来ていただいた方が手持ちぶたさでポツンとされていることがないようにということだけ気を配ったつもりだが、初対面の先生同士が歓談されている様子にホッとする。みなさん社交の術は心得ていらして、出席者が一人一人自己紹介をしているとき、メモを取りながら聞いていらっしゃる方が多かった。これで後から「先ほどのお話ですが・・・」で会話が起動する。最後に集合写真を撮って、9時ごろ散会。さあ、授業開始まであと一週間である。