フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

1月10日(日) 晴れ

2021-01-11 13:38:30 | Weblog

10時15分、起床。

トースト、ベーコン&エッグ、サラダ(+ウィンナー)、牛乳、紅茶の朝食。

食後、ただちに書斎へ移動(平日は『おちょやん』を見たり新聞に目を通したりする)。

昨日のブログをアップし、レビューシートのチェック。

今日は初句会(オンライン)のある日。

書斎のドアの外に「会議中」と「カフェ中」のどちらの札を出そうか考えて(「句会中」という札はない)、

「カフェ中」の札を出す。「句会」の「会」に着目するならば「会議中」なのだが、リアルの句会はいつも「カフェ・ゴトー」でやるので「カフェ中」の方がいいのだ。それに「句会」は仕事ではなく遊びですから。

「カフェ中」という言葉でちょっと気になるのは「アル中」を連想させること。「カフェ中毒」あるいは「カフェイン中毒」の略のような気がすることである。もっとも私はほぼ毎日どこかしらのカフェに行っているから「カフェ中毒」と言われてもしかたないけれど。

本日の句会のライブ(zoom)での参加者は7名(主宰の紀本さん、月白さん、渺さん、萬笑さん、さやかさん、犬茶房さん、私=たかじ)。他に立夏さんが投句と選句(事前)での参加。あやこさんが投句のみの参加。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今回の投句は24句。兼題は「笑」。この中から各自が天(5点)一句、地(3点)二句、人(1点)二句の計五句を選ぶ。

私が選んだのは次の五句。

 天 石蕗(つわ)の花かの野良猫の現れし

 地 寒茜江の島ありて富士もある

 地 初空や一人は一人でそれも良し

 人 歯を抜きて笑えず七草粥を喰む

 人 噺家の笑う目の奥月冴ゆる

全員の選句を集計した結果は以下のとおり(作者は感想が終った後に明らかにされる)。

21点 石蕗(つわ)の花かの野良猫の現れし 萬笑

今回の特選は久しぶりで参加の萬笑さんの作。21点というのは圧倒的な得票である。5人が選び、うち3人が「天」を付けた、私もその一人である(他の二人は月白さん、渺さん夫妻)。全体を一読して今回はこれが「天」と迷わなかった。「石蕗の花」という季語がいい。花そのものよりも「石蕗の花」という言葉がいい。漢字がいい。庭の隅に、あるいは路傍に咲いているのだろう。そこに最近姿をみなくて、どうしたのかしらと少し心配していた「かの野良猫」が姿を現したのだ。よかった、元気だったんだ。そいういう句である。「かの」が効果的。一つ注文を付ければ、「現れし」(過去形)ではなく、「現れり」(完了形)とした方が臨場感があるだろう。

作者が萬笑さんと明らかになったとき、彼女は「バンザイ!」をした。残念ながらその瞬間を写真に撮ることができなかったので、その後のウルウルしている(嘘です)写真を載せておく。

10点 初空や一人は一人でそれも良し 月白

さやかさんが「天」を付けた。コロナの時代でなければ、正月を一人で迎えた独身者(彼氏や彼女なし)を詠んだ句と理解されるだろう。しかし、今年は違う。コロナで帰省できずに東京で一人の正月を迎えた学生や若い社会人が重なってくるだろう。中の句は「一人は一人」とした方が七音でリズムはいいが、「で」を付けて「一人は一人で」とあえて八音にした方が自分に言い聞かせている雰囲気が出てよい。

9点 炉火(ろび)に浮かぶ片頬の笑み魔女めきて 渺

萬笑さんが「天」を付けた。「片頬の笑み」は何か悪巧みをしているときの所作である。その女性が、一瞬、魔女っぽくみえたという句である。渺さんが見ているその女性は妻である可能性が高い。みんながそう思っている気配を画面越しに感じたのであろう、月白さんが言った、「うちには暖炉はありません」。

9点 噺家の笑う目の奥月冴ゆる 犬茶房

紀本さんが「天」を付けた。作者の犬茶房さんによると、この噺家は鶴瓶さんをイメージしているそうだ。彼は顔は笑っていても目が笑っていない(とよく言われる)。私は最初、この句に「地」を付けたのだが、最終的に一つ落として「人」とした。理由は「月冴ゆる」という季語が本当の月ではなく冷たい光の比喩として使われているからである。もしこれが噺家ではなく、夜の街路にいる誰か(たとえば客引きとか)であれば、目に月が映っているというのもリアリティがあったと思う。

7点 枯木見て背筋を伸ばす明日も晴れ 立夏

「枯木」には「枯れた木」という意味と、「葉を落とした木」という意味があるが、たぶん後者であろう(ならば「冬木」でもよかったか)。なんだか子どもが作った俳句のようである。作者が立夏さんとわかって意外な気がした。こんな健全な句を作る人でしたっけと(笑)。もしや「枯木」というのは「父親」の比喩ではあるまいな。選んだ方々(紀本さん、月白さん、渺さん)はコロナの中での初句会ということで明るい句を選びたかったのだろう。

7点 厚切りのハムの歯型よ松の内 犬茶房

お正月あるあるである。川柳っぽい。ときに「厚切り」とはどの程度をいうのであろうか。まさか伊達巻ほどではあるまいな。私が朝のハム&エッグに使うハムはスーパーの切ってパックに入っているペラペラのハムである。お歳暮なんかでいただくハムを自分で包丁で厚切りして、フライパンで焼きたいと常々思っている。

6点 寒茜江の島ありて富士もある 萬笑

私はこの句に「地」を付けたのが、下手をするとお風呂屋さんの絵みたいになってしまう危惧も感じていた。そうならずにすんだのは「寒茜」(かんあかね)という季語の手柄である。

6点 凍空に冬の三角画然と 渺

「冬の三角」とはオリオン座のぺテルギウス、こいぬ座のプロキオン、そしておおいぬ座のシリウスという3つの一等星が作る「冬の大三角形」のことである。確かに画然として見える。「三角」と「画然」が「カク」で繋がっているのも趣向である。それはいいのだが、「凍空」(いてぞら)は冬の季語だから、完全に季重なりである。うっかりされたのであろう。「冬の大錯覚」である。しかもそれが入選したことに愕然とした。

5点 猫跳ねる饅頭ふっとぶ初笑い あやこ

兼題が「笑」でお正月とくれば「初笑い」という季語がまさにぴったりである。

5点 思案顔カフェの主人(あるじ)の七日かな たかじ

私の句。「七日」は新年の季語であるが、一都三県に緊急事態宣言が発令された日でもある。行きつけのカフェの店主さんの「どうしたものか」とため息をつく姿を詠んだものである。

5点 「密だ」って、祖母が言うけど、いつのギャグ?笑 立夏

近未来SFのような作品である。若い頃にコロナ禍を経験したお祖母さんが、何かの拍子に「密だ」と発言して、コロナ禍を知らない孫が「それって昔のギャク?」と反応する。「アッと驚くためごろうー」みたいな感じ。兼題の「笑」は読まれることなく文字(記号)としてのみ使われている。立夏さんらしいケレンミのある句である。

5点 負け試合それでも走るラガー等は 渺

中高年が高校生のひたむきな姿に感動して詠んだ句である。「自分にもあんな頃があったな」と。下の句の「ラガー等は」(「らがーらは」)は日本語の調べとして不自然。「ラガーたち」とか「ラガーメン」でよいでしょう。

3点 傾城の紅の微笑み寒椿 月白

「傾城」(けいせい)は中国の故事から美女のこと。生半可な美しさではない。国王が彼女にかまけて国が傾いてしまうほどの美女である。転じて遊女のことを指すようになる。もしこの句の「微笑み」が「片頬の笑み」ならば、さらに転じて美魔女を指すと考えるべきだろう。

2点 歯を抜きて笑えず七草粥を喰む 月白

これも月白さんの句。兼題を使った句を2つ投句したのですね。ただし、こちらは「笑えず」と「笑」を打ち消した句。私はこれに「人」を付けた。最初、老人をイメージしたが、その場合は、「歯を抜きて」よりも「歯が抜けて」となるだろうから、老人ではなさそうである。

1点 読初の『笑い』はアンリ・ベルグソン たかじ

私の句。ネットで兼題「笑い」を検索したらベルグソンの著書『笑い』がヒットした。「人間は笑う動物である」という視点から展開される古典喜劇論である。犬茶房さんから「ベルグソンではなく、ベルクソンでは?」との指摘があったが、私の若い頃は「ベルグソン」の方が一般的だったのだ。ベルグソン昭和も遠くなりにけり。

1点 ウィズコロナ東京かるたでお正月 紀本直美

「ウィズコロナ東京かるた」なるものがあることを私はこの句で(作者の解説を聴いて)初めて知った。小池都知事の肝いりで作られたらしい。「あ 愛してる家族のために距離をあけ」。愛情至上主義と家族中心主義という近代社会の価値観がコテコテに反映(利用)されている。

1点 当直の毛布に聞こゆ除夜の鐘 犬茶房

医療従事者のみなさまお疲れ様ですという句。

1点 初詣家にいる人いない人 紀本直美 

意外に人の多い初詣のテレビ映像をみながらの句。

次回の句会もオンライン。3月21日(日)13時から。兼題は「丸、マル、〇」の文字(記号)を入れること。

「お オンライン三密なしで親密に」(ウィズコロナ東京かるた)

句会を終えて3時。「吉岡家」に昼食を食べに行く。

天ぷらうどんを注文。柚子の皮がのっている。いい香りだ。

店を出て、食後の散歩。元カフェ「屋根裏」の前を通る。

新年の飾りがされている。

御成り橋通り商店街を歩く。

床屋さんの側面の壁。

大型乾燥機のある小さなコインランドリー。

「スリック」に顔を出す。

あれっ、もう閉店?!時刻はまだ4時だけど。どうやらシフォンケーキが完売してしまったらしい。

「お飲物しかありませんけど、どうぞ」とマダムが言ってくれた。昨日と今日はマダムは着物姿である。

ウバをミルクで注文。

帯に猫がデザインされている。

袖の裏地にも。

足袋にも。

草履にも。

そこにルイ君登場。

「マダム、犬派じゃなかったの?!」とルイ君。

では、今年もよろしくお願いします。

家の戻る途中、「まいばすけっと」でカレー煎餅とアーモンドチョコレートを購入。

帰宅して、『山下達郎のサンデーソングブック』をタイムフリーで聴きながら(句会の時間に放送されていた)、句会の感想を忘れないうちにブログの下書きに書いておく。

夕食はシシャモ、肉じゃが、ワカメと掻き卵の吸い物、ごはん(イクラのせ)。

シシャモは頭からムシャムシャ食べられるのがいい。昨日、スーパーに鱈を買いに行ったときついでに買っておいた。

シシャモと肉じゃがのコンビネーションは私のリクエスト。

正月用のイクラの最後の一匙。

来年度の授業のシラバス(講義要項)の作成。12日が締め切りなのだ。簡単にかける科目もあれば、時間のかかる科目(15回の授業の各回について書かなくてはならないもの)もある。時間のかかるものからとりかかる。悩ましいのは、授業がスタートする4月の時点でコロナの状況がどうなっているかがわからないこと。一応、講義はオンデマンド、演習は対面という原則で書く(今年度は両方ともオンラインで、講義はオンデマンド、演習はライブだった)。

風呂を浴びて、今日の日記とブログ。

2時半、就寝。