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わたしのレコード棚―ブルース24、Jack Owens,

2011年07月09日 | わたしのレコード棚
 ジャック・オーウェンス(Jack Owens,1904Bentonia,Miss~1997)は極めて重要なカントリー・ブルースマンの一人だ、と声を大にして言いたい。この人の録音が地に埋もれてしまうようなことがあってはならない、と思う。が、現実にはCDは入手困難なようで、中古CDが驚くような高値でネットで売られている。かなり以前だが、P-vineにオーウェンスのCDを出してくれるようにお願いしてみた事があるのだが・・・残念無念。
 さて、オーウェンスがデイビッド・エヴァンス(ブログ2011/7/2のハミー・ミクソン参照)によって見出されたのは1966年で、その時すでにオーウェンスは60歳を過ぎていた事になる。エヴァンスによるLP解説によると、1966年の春にベントニアでスキップ・ジェイムスにインタヴューした際、他に良いミュージシャンがいたらということでコーネリアス・ブライト(Cornelius Bright)という若手のブルースマンを教えてもらい、さらにそのブライトからジャック・オーウェンスにたどり着いたらしい。
 オーウェンスがギター・プレイを教わったのは父と叔父からで、その二人はヘンリー・スタッキー(Henry Stuckey)、アダム・スラター(Adam Slater)、リッチ・グリフィン(Rich Griffin)らとスタッキー・ブラザーズ(The Stuckey Brothers)というグループで活動していたらしい。ベントニア・スタイルギターとでも言うべきオープン・Eマイナー・チューニングは、このスタッキー・ブラザーズから出たのかもしれない。

Jackowens
TESTAMENTのLP,T-2222『It Must Have Been The Devil』。1970年ベントニアにて、エヴァンスの手による録音6曲を収録した名盤。オーウェンスのヴォーカルとギター、バド・スパイアーズ(Benjamin "Bad" Spires1931~、ビッグ・ボーイ・スパイアーズの息子)のブルースハープ。オーウェンスのヴォーカルはジェイムスのようにファルセットではなくストレートでかなり力強い。またギター奏法もジェイムスと同じオープンEマイナーが多いが、オーウェンスは低音側をオールタネイトで弾き、それに高音側のリードに近い音を絡ませる安定感のある奏法で、ジェイムスとはまた違った味わいがある。
 ジャケットの写真を見ると、ほんとに昼間でもお化けが出てきそうな所だなあ。こわくて、一人じゃ絶対行けそうにない。
まあ、それはそれとして、エヴァンスは、このLPの解説で次のように言っている。

「Not only did Jack Owens play blues like Skip James,he played and sang better ! And I had considered James to be one of the greatest country bluesman.」
意訳してみる。
「スキップ・ジェイムスはもっともすぐれたカントリー・ブルースマンの一人とそれまで考えていたのだが、ジャック・オーウェンスのブルースはそれに勝るとも劣らない。」

 音楽はスポーツのように記録やスピードを競うものでは無いので、ミュージシャンの比較はあまり意味が無い、と常々思っている。しかし、このLPを最初に聴いた時には、わたしもそう感じたですよ、ホントに。


Wolf120911
こちらは、オーストリーのWOLFレーベルから出たオムニバスLP、120.911『Giants Of Country Blues Guitar 1967-81』。オーウェンスは、1981年6月の4曲を収録。他には、Son House,Sam Chatmon,Eugine Powell,Furry Lowis,Mager Johnson,Mott Willis,などを収録。

 オーウェンスは自宅の一部をライブができるスペース(ジューク・ハウスJuke house)にして、週末にバド・スパイアーズと共に演奏していたという。あとは、素朴な農民であり、ときに労働者だった。そこに、本来あるべきミュージシャンの姿を見るような気がするが、どうだろう。1997年2月、オーウェンスは、92歳の天寿を全うしたのだった。


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