ミシッシッピー州でもっとも商業的に成功したストリング・バンド、と言われているミシッシッピー・シークス。その歴史は古く、チャットモン(Chatmon、Chatmanとしている資料も多い)一家を中心にして、19世紀もかなり遡れる頃から活動していたらしい。下のCD,YAZOOの2006『Mississippi Sheiks-Stop and Listen』で聞けるのはフィドル(ヴァイオリン)のロニー・チャットモン(Lonnie Chatmon1890's~1942or'43)とヴォカルとギターのウォルター・ヴィンソン(Walter Vinson1901.Miss~1975.Chicago)の二人が中心になった録音で、おそらくは1930年代のものと思われる。音楽的にはブルースというよりもむしろヒルビリーに近い感じだ。多くは2ビート系で、コード進行もきまった形式をもたず、ポップな感じ。戦前のミシッシッピーではかなり目新しい音楽で人の気を引きパーティーなどではさぞかし喜ばれたと想像される。この当時のグル―プの編成としては、時にロニーの兄弟、つまりチャットモン・ファミリーからボーや、サムが加わったりしていたらしい。
とにかく、ロニー・チャットモンのフィドルがすばらしい。クラッシック音楽の基準からすれば、とても受け入れられない演奏法ということになるだろう。が、すこし視野を広げて聴いてみると、多様な生活世界が見えてくる。先入観を持たずに接してみたいものである。
こちらは、同じCDのジャケット裏面。チャットモン・ファミリーの写真だが、年代や、どれが誰だかは不明である。当然音楽一家で、兄弟は何らかの楽器に携わっていたという。その中で、最も人気があり単独の録音を多く残したのがボー・カーター(Bo Carter、本名Armenter Chatmon.1893Miss~1964Memphis,Tenn)だ。
ヨーロッパのレーベルOLDTRAMPのLP、OT-1203。おもに、ブルース形式の曲を年代順に集めてある。サブ・タイトルの[Mississippi Party Blues Singer・・・]というのが、言いえて面白い。
YAZOO のLP、1014。録音年はバラバラだが、巧みなギターと歌を楽しめる。落語で言えば「バレ噺」と言えるような曲、たとえば、[Your Biscuits Are Big Enough For Me]のように卑わいなものもある。露骨に過ぎるとも言えるが、身近な人を集めたパーティーや盛り上がったジューク・ジョイントなどでは、このような曲が受けたとの想像もできる。
ウォルター・ヴィンソンのアルバム、ヨーロッパのレーベルAGRAMのLP、2003。1929年から’41年までの録音17曲を収録。ヴィンソンはこの後シカゴに移り住み音楽からは遠ざかっていたが、'60年代のフォーク・ブームでカムバックした後、1975年にシカゴで亡くなる。
YAZOOのCD解説によると、ロニー・チャットモンは1942年頃、病を得て死に臨んだ時「もう、ブルースはやりたくない、元気になれたら教会にいってゴスペルやるんだ・・・」と兄弟のサム(Sam Chatmon.1897~1983Miss)に語ったという。大衆に迎合した音楽を演奏していたという悔悟があったのか、あるいは宗教的な救いを求めたのか、それは誰にもわからない。ミシッシッピー・シークスが'30年代に録音した[Sitting Of The Top Of The World]は、1957年にハウリン・ウルフが取り上げ、その後多くのミュージシャンが取り上げスタンダードと言ってもいい曲になった。一方でサム・チャットモンはというと、ミシッシッピー・シークスでは少年の頃ベースを弾いたりしていたらしいが、かなり歳を取ってから多くの録音や映像を残した。その中には、[Sitting Of The Top Of The World]もあった。ちなみに、ジャック・オーウェンス(2011.7.9ブログ)の項で紹介したWOLFのオムニバス・アルバム[Giants Of Country Blues Guitar]の左端、長い髯をたくわえて写っているのがサム・チャットモンである。
とにかく、ロニー・チャットモンのフィドルがすばらしい。クラッシック音楽の基準からすれば、とても受け入れられない演奏法ということになるだろう。が、すこし視野を広げて聴いてみると、多様な生活世界が見えてくる。先入観を持たずに接してみたいものである。
こちらは、同じCDのジャケット裏面。チャットモン・ファミリーの写真だが、年代や、どれが誰だかは不明である。当然音楽一家で、兄弟は何らかの楽器に携わっていたという。その中で、最も人気があり単独の録音を多く残したのがボー・カーター(Bo Carter、本名Armenter Chatmon.1893Miss~1964Memphis,Tenn)だ。
ヨーロッパのレーベルOLDTRAMPのLP、OT-1203。おもに、ブルース形式の曲を年代順に集めてある。サブ・タイトルの[Mississippi Party Blues Singer・・・]というのが、言いえて面白い。
YAZOO のLP、1014。録音年はバラバラだが、巧みなギターと歌を楽しめる。落語で言えば「バレ噺」と言えるような曲、たとえば、[Your Biscuits Are Big Enough For Me]のように卑わいなものもある。露骨に過ぎるとも言えるが、身近な人を集めたパーティーや盛り上がったジューク・ジョイントなどでは、このような曲が受けたとの想像もできる。
ウォルター・ヴィンソンのアルバム、ヨーロッパのレーベルAGRAMのLP、2003。1929年から’41年までの録音17曲を収録。ヴィンソンはこの後シカゴに移り住み音楽からは遠ざかっていたが、'60年代のフォーク・ブームでカムバックした後、1975年にシカゴで亡くなる。
YAZOOのCD解説によると、ロニー・チャットモンは1942年頃、病を得て死に臨んだ時「もう、ブルースはやりたくない、元気になれたら教会にいってゴスペルやるんだ・・・」と兄弟のサム(Sam Chatmon.1897~1983Miss)に語ったという。大衆に迎合した音楽を演奏していたという悔悟があったのか、あるいは宗教的な救いを求めたのか、それは誰にもわからない。ミシッシッピー・シークスが'30年代に録音した[Sitting Of The Top Of The World]は、1957年にハウリン・ウルフが取り上げ、その後多くのミュージシャンが取り上げスタンダードと言ってもいい曲になった。一方でサム・チャットモンはというと、ミシッシッピー・シークスでは少年の頃ベースを弾いたりしていたらしいが、かなり歳を取ってから多くの録音や映像を残した。その中には、[Sitting Of The Top Of The World]もあった。ちなみに、ジャック・オーウェンス(2011.7.9ブログ)の項で紹介したWOLFのオムニバス・アルバム[Giants Of Country Blues Guitar]の左端、長い髯をたくわえて写っているのがサム・チャットモンである。