ワシントン・フィリップス(Washington Phillips)も詳しい事はわかっていない人だが、生まれたのは1891年頃、亡くなったのは1938年頃、ともにテキサスと言われている。基本的にはエヴァンジェリスト(伝道者)だが、音楽的にはゴスペルというよりも賛美歌に近い感じで、メロディーも声もなかなかにきれいだ。注目すべきは使用した楽器で、それはドルセオーラ(Dolceola)というものだった。
これは下のLP内の解説にあるドルセオーラの写真。見てわかるように、ハンマー・ダルシマーの上に鍵盤を載せたようなもので、とても柔らかいきれいな音が出る。ギターのボトルネック奏法のように西洋音階の中間音を出すようなことは出来ないが、ワシントン・フィリップスのように整った音作りをする人には必要な楽器だったのかもしれない。この楽器は1890年代にオハイオ州のピアノ調律師デヴィッド・P・ボイドという人の発明といわれており、100台弱が作られたが、現在は数台が楽器コレクターの所有するだけになっているという。音域は4オクターブだったらしい。なお、つづりがDulceolaとなっている資料もあるが、この写真で見る限りDolceolaが正しいと言える。辞書で調べると、dolce(ドルチェ)はイタリア語起源の音楽用語で「柔らかく滑らかに」ということで、Dolceolaという名前もそこから来ていると思われる。
ヨーロッパのレーベルAGRAMのAB2011『Trouble Done Bore Me Down』。珍しいブルース、ゴスペルの1927-1933年頃の録音を編集したオムニバス盤。ジャケットの写真はワシントン・フィリップスで、ドルセオーラの鍵盤部分を載せない状態で持っているものと思われる。フィリップスの録音は1927年12月ダラスでの2曲、[Mother's Last Word To Her Son]と[Paul And Silas In Jail]を収録。
ソニーからでたオムニバスCD『Preachin' The Gospel:Holly Blues』。 ワシントン・フィリップスは、1927/12の録音で[Denomination Blues - Part1,2]、1929/12の録音で[You Can't Stop A Tattler - Part1,2]を収録。Denominationとはキリスト教の宗派を意味しており、宗派間の対立を嘆いたブルース、ということになるらしい。ここで聞けるのは、ドルセオーラの美しい音色とは対照的にクリスチャンの情熱と嘆きを歌にしている、ということになる。
手元にある音源の資料をまとめると、ワシントン・フィリップスは1927年から'29年までの3年間毎年12月にダラスで録音していたらしい。全部でどのくらいの録音をしたのか未詳だ。が、わたしの手元にあるのはあと2曲だけで、それはP-VINEの『The Story Of Pre-War Blues』に入っている1928年の[What Are They Doing In Heaven Today]と、オーストリアのRSTから出たオムニバスLP『The Great In Country Blues』に入っている1929年の[I Had A Good Father And Mother]。音楽的にも、使用した楽器の歴史の上でも、重要なミュージシャンであるワシントン・フィリップス。現在は単独のCDがYAZOOから出ているので、興味のある方にはそちらをお勧めしたい。
これは下のLP内の解説にあるドルセオーラの写真。見てわかるように、ハンマー・ダルシマーの上に鍵盤を載せたようなもので、とても柔らかいきれいな音が出る。ギターのボトルネック奏法のように西洋音階の中間音を出すようなことは出来ないが、ワシントン・フィリップスのように整った音作りをする人には必要な楽器だったのかもしれない。この楽器は1890年代にオハイオ州のピアノ調律師デヴィッド・P・ボイドという人の発明といわれており、100台弱が作られたが、現在は数台が楽器コレクターの所有するだけになっているという。音域は4オクターブだったらしい。なお、つづりがDulceolaとなっている資料もあるが、この写真で見る限りDolceolaが正しいと言える。辞書で調べると、dolce(ドルチェ)はイタリア語起源の音楽用語で「柔らかく滑らかに」ということで、Dolceolaという名前もそこから来ていると思われる。
ヨーロッパのレーベルAGRAMのAB2011『Trouble Done Bore Me Down』。珍しいブルース、ゴスペルの1927-1933年頃の録音を編集したオムニバス盤。ジャケットの写真はワシントン・フィリップスで、ドルセオーラの鍵盤部分を載せない状態で持っているものと思われる。フィリップスの録音は1927年12月ダラスでの2曲、[Mother's Last Word To Her Son]と[Paul And Silas In Jail]を収録。
ソニーからでたオムニバスCD『Preachin' The Gospel:Holly Blues』。 ワシントン・フィリップスは、1927/12の録音で[Denomination Blues - Part1,2]、1929/12の録音で[You Can't Stop A Tattler - Part1,2]を収録。Denominationとはキリスト教の宗派を意味しており、宗派間の対立を嘆いたブルース、ということになるらしい。ここで聞けるのは、ドルセオーラの美しい音色とは対照的にクリスチャンの情熱と嘆きを歌にしている、ということになる。
手元にある音源の資料をまとめると、ワシントン・フィリップスは1927年から'29年までの3年間毎年12月にダラスで録音していたらしい。全部でどのくらいの録音をしたのか未詳だ。が、わたしの手元にあるのはあと2曲だけで、それはP-VINEの『The Story Of Pre-War Blues』に入っている1928年の[What Are They Doing In Heaven Today]と、オーストリアのRSTから出たオムニバスLP『The Great In Country Blues』に入っている1929年の[I Had A Good Father And Mother]。音楽的にも、使用した楽器の歴史の上でも、重要なミュージシャンであるワシントン・フィリップス。現在は単独のCDがYAZOOから出ているので、興味のある方にはそちらをお勧めしたい。