文化逍遥。

良質な文化の紹介。

船橋での話芸公演

2016年03月08日 | 落語
 3/5(土)、船橋市民文化ホールでの『ザ・忠臣蔵ナイト』を聴いた。



 江戸城内での刃傷事件があったのが元禄14(1701)年3月14日だったということで、この時期に忠臣蔵に因んだ演目を選び、刃傷―切腹―討ち入りの順になるような演目で口演を開催したようだ。女義太夫は「殿中刃傷の段」、落語は柳亭市馬の「淀五郎」、中入り後は漫才のナイツをはさんで、講談は神田松鯉の「大高源吾」。 落語も講談も、寄席では普段持ち時間が15分程、最後を務める真打ちでも30分ほどで、なかなかこの日のような大ネタを長演で聴けない。しかも、当代の落語界・講談界を代表する二人の大ネタをじっくり聴けたのはファンとしては何よりな夜だった。

 この日の義太夫は人形浄瑠璃ではなく素の語りで、そうなると内容がなかなか理解できない。言葉使いや笑い声・泣き声などオノマトペが不自然で、正直言って、何言ってるのかよくわからない。入場時に配られたプログラムには脚本が入っていたが、会場は暗いし読んでも居られない。現代語に直せ、とは言わないが、もう少し聞く者に理解しやすい工夫をする必要があるのではないだろうか。
 落語の「淀五郎」。この話は数ある人情噺の中でもよほどの力量が無ければ出来ない大ネタだ。この日の市馬師匠は40分程の長演を無理なくこなして良い出来だった。惜しむらくは、中村仲蔵が淀五郎を諭すところが少し軽かった気もする。そこは、厳しい指導の中でも「苦労人のやさしさ」が滲み出るところで、この噺のひとつの山場。ファンとしての期待と共に、これからの楽しみにしておきたい。
 ナイツは二人とも千葉県に縁があるということで、硬い話の合間の息抜き的な役割出演、といったところか。これがけっこう難しい役割で、それを難なくこなして、自然な話しぶりはすでにベテランの域に達しているように感じた。とにかく、間がいい。間合いだけで笑いを取れる話芸は、漫才の本流と言えるだろう。二人とも38歳という若さで、これからも元気に、末長く活躍してもらいたい。
 最後の神田松鯉。この人の聴衆を引きつける力は群を抜いている。ホール後方に座っていたので、客が話に引き込まれ背もたれから身を起こして前傾姿勢になるのが良く見えた。現存する講談師の中では、私の聴いている限り、トップと感じる。

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