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わたしのレコード棚―ブルース66、Floyd Jones

2019年03月02日 | わたしのレコード棚
 音楽とは不思議なものだ。若い頃聴いて「音作りが雑だ、あんまり良くないなあ」と感じたものが、歳を取ってから聴きなおすと「これは良い」と、たまらなく感じるものがある。フロイド・ジョーンズ(Floyd Jones)のLPも、そんな1枚だ。生まれは、1917年アーカンソー州マリアナ(Marianna)、亡くなったのは1989年12月19日シカゴだった。
 音の中に南部の匂いが色濃く、その煩雑さがたまらない魅力を感じさせる。昼間は日銭を稼ぐ仕事をしつつ1930年~40年代には南部のジュークジョイント(ライブハウスの様なもの)やハウスパーティーに呼ばれて演奏し、1940年代中頃になるとシカゴに出てマックスウェル通りなどでチップを稼いでいたらしい。演奏活動は晩年まで続けていたらしいが、主な録音は1950年代になされている。


 P-VINEから出ていた国内盤のLP、PLP-9028。A面がJ.O.Bレーベルに吹き込まれた6曲、B面がチェス・レーベルに吹き込まれた6曲、1951-53年の計12曲を収録。A面のバックは、ピアノにサニーランド・スリム、ベースに従兄弟のムーディ・ジョーンズなど。同じくB面は、ハーモニカにリトル・ウォールター、ギターにジミー・ロジャース、そして2曲でアルバート・キングがドラムスを担当している。アルバート・キングのドラムスとは俄かに信じられないが、ジャケット裏にはそうクレジットされているので本当なんだろう。
 ギターの音はやたらと歪んでいるし、チョーキングを多用したギターは和音から遠く、時に小節数もいいかげん。それでも、自然な詩の朗読に聞こえるから不思議。さらに、バックも何故かしっかりと共に進んでゆく。誤解を恐れずに言えば、「生活世界の混沌と調和」かな。モダンブルースでも、言葉を中心に演奏されるのはこの1950年代頃までのように思われる。この後は、「声」ではなく、エレキギター及びアンプの特性を生かした「音」中心の音楽になってゆく。いずれにしろ、ブルースの歴史上重要な録音と言える。
 余談だが、ロックグループのピンク・フロイドは、このフロイド・ジョーンズとピンク・アンダーソンからグループ名を付けたらしい。


 こちらは、ヤンク・レイチェル(vo.mand.g)のLP。デルマークというレーベルから出ていたDS649。録音データが書かれていないので、いつ頃のものかわからないが、おそらく1950年代の録音ではないだろうか。
 フロイド・ジョーンズは、ギターでバッキングを担当している。我が家にある音源で、ジョーンズがバッキングを務めているのはこれだけだ。なかなか、巧みに音を絡ませている。他のメンバーは、ベースにピート・クロフォード、ドラムスにオディー・ペイン。オディー・ペイン(1926~1989)は、若い頃エルモア・ジェームスのバンドに加わっていたドラマーだ。1985年にロックウッドと共に来日した時にわたしもその演奏に接したことがある。今回、このLPを聴きなおして、ペインの生演奏を聴く機会があったことを感謝したくなった。シカゴブルースのドラミングを堪能させてくれた。

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