文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2018年スペイン・フランス・イタリア映画『誰もがそれを知っている』

2019年06月10日 | 映画
 6/5(水)、千葉劇場にて。監督・脚本はアスガー・ファルハディ。スペイン語。英題は『Everybody Knows』。





 ブドウ畑が広がるスペインのとある農村。ここの出身で今は結婚してアルゼンチンに暮らすラウラは、妹の結婚式に出席するために娘と息子を連れ帰省する。着飾った、親戚・友人・知人が集まり、歓声と祝福につつまれ、抱擁と挨拶代わりのキス、そんな映像が続く。しかし、宴も終わりに近づいた頃、ラウラの娘が突如姿を消し・・・。

 親交が深いように見えた人々は、事態の深刻さが増す中で、心の深いところにある「複雑な利害の対立や憎悪」が徐々に表面化してくる。監督・脚本は、かの『セールスマン』(リビューはこちら)を監督したイランの人。なので、スペインの小さい村社会の構成が、現実的にどの程度この作品に反映されているのかはわからない。しかし、この作品が、建前と本音を使い分ける人間の心理状態をするどく描いている、とは感じた。映像も素晴らしく良い作品。

 さらに余談。この映画で登場するラウラはアルゼンチンから帰郷する設定になっているわけだが、はるかに遠い国でも言葉は基本的にスペイン語だ。スペイン語は南米だけでなく、中米さらに北米でも一部地域で広く話されている。元々その地域にあった言語とは基本構造が異なる言葉が、侵略と共に使われていったわけで、ちょっと想像もつかない広がり方だ。スペインの、あるいはヨーロッパ諸国の植民地支配というのは恐ろしい程の規模だ、と映画を観ながら改めて感じたのだった。

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