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わたしのレコード棚ーブルース84 J.B.Lenoir

2020年03月03日 | わたしのレコード棚
 最近、友人から『The Soul Of Man』というDVDを借りてみる機会があった。この映画は、2003年にマーティン・スコセッシが製作総指揮した『The Blues』という7連作からなるシリーズの内の1枚で、監督はヴィム・ヴェンダース。わたしは、2004年頃に、六本木当たりの映画館で上映された時に観たが、今回久々に観直す機会を得た。

 内容は、主に3人のブルースマンの生涯と軌跡をたどることで、ブルースマンの置かれてきた困難を伴う環境と、その中でも優れた音楽活動を続けてきたそれぞれの人生を描いている。その3人とは、テキサスのブラインド・ウィリー・ジョンソン、ミシシッピー(ベントニア)のスキップ・ジェイムス、そしてシカゴで活躍したJ.B.ルノアーである。ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムスについては、すでにこのブログの「わたしのレコード棚」で書いた。J.B.ルノアーについては、それほど重要なミュージシャンの一人とは思っていなかったので、今まではあまり気にかけていなかったのが、正直なところ。しかし、今回『The Soul Of Man』を観て、ルノアーの詩人としての重要さを感じ、改めて聞き直してみたくなりCDを入手した。今までは、オムニバス盤でしか聴いていなかったのだった。


 Jasmineというチェコのレーベルから出ている2枚組CD。1950-1960年までのチェスやその他ヨーロッパのレーベルの録音された58曲を収録。J.B.ルノアーがギターとヴォーカルで中心になったバンドでの演奏だが、その中で、ジョニー・シャインズがヴォーカルを取っているのが2曲、ピアノのサニーランド・スリムがヴォーカルを取っているものが3曲含まれている。演奏パターンは、ブルースの定型に沿ったものがほとんどで、それにルノアーがオリジナルな詩を付けている。ヴォーカルは、すこしファルセットがかかった高い声で、後のソウル歌手のようにも聞こえる。シカゴのクラブなどでの仕事が多かったのだろう、聴いていても場末の酒場での演奏を彷彿とさせる。が、その中にも、「Korea Blues」のように朝鮮戦争から題材をとった重いブルースや、「Eisenhower Blues」のような時事問題を扱っているブルース、アメリカの飢餓を歌った「Everybody Wants To Know」、貧困を歌った「Deep In Debt Blues」なども含まれている。基礎のしっかりとしたギターテクニックで自らの置かれた状況を歌える優れた詩人だったのだ。
 そのルノアーは、1929年3月5日にミシシッピー州のモンティセロ(Monticello)の生まれ。両親は共にギターを弾く人で、若い頃から地元のパーティーなどで演奏し、後に一時ニューオーリンズで演奏活動をした後、1949年にシカゴに移り住んだらしい。シカゴでは、ビッグ・ビル・ブルーンジーなどとも交流を持っていたというが、1967年4月にイリノイ州のUrbanaというところで交通事故にあい、医者に掛かったもののまともな治療を受けられず家に帰され、その後心臓麻痺を起して亡くなってという。38歳の若さだった。


 以下、参考資料。2005年に日活から発売された連作『The Blues』DVDのパンフレットより。私が持っているのは、[Ⅱ]の「フィール・ライク・ゴーイング・ホーム」、[Ⅴ]の「デビルス・ファイイヤー」、[Ⅶ]の「ピアノ・ブルース」、の3枚。

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